毎週金曜22:00からTBS系で山田裕貴主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』が放送中。同じ電車に偶然乗り合わせた見ず知らずの乗客たちが突如、電波が通じないうえに水も食料もない荒廃した世界にタイムワープし、極限のサバイバル生活をしながら懸命に生き、元の世界に戻ろうとする姿を描く、完全オリジナルの予測不能のヒューマンエンターテインメントドラマだ。本作では、荒廃した世界を見事に表現した壮大なセットも話題になっており、主演を務める山田らも会見などでそのセットのすごさを力説してきた。そこで今回、美術プロデューサー・二見真史氏、美術デザイン・野中謙一郎氏にインタビューし、セットがどのように出来上がったのかやこだわりなどを聞いた。
――本作の企画が持ち上がったときにどう思われましたか?
二見:壮大に感じたので普通の連ドラの規模でできるのかなというのは率直に思いました。この物語の肝となる電車は通常制作が用意するものなのですが、そこで生活することになるので美術で作ったほうがいいのか、それともやっぱり制作が用意するのかという話から始まって。
でもやっぱりこの電車の規模感がすごく大事だとプロデューサーが仰ってて。60人ぐらいのコミュニティにしたいという意図がありバスだと小さいからぜひ電車がいいという思いを受け止めて、見積もりを何種類も作ってこの規模感を実現できるように話し合っていきました。
プロデューサーの2人がすごく頑張っていろんな電鉄会社と打ち合わせをして、つくばエクスプレスさんが今回の企画にご協力いただけることになりました。車両をセットとして作ることになったので僕も打ち合わせに参加させていただいて、つくばエクスプレスさんの方から今使ってない電車があると伺ったので、パーツをまるっと外して緑山スタジオに移築するということになりました。
――オープンセットはどれくらいの期間で建てられたのでしょうか?
野中:約1ヶ月ぐらいかけて、オープンセットは作ってます。本当だったらもっと時間かけてやるんですけど1ヶ月でよくできたなと。
コケとか岩であるとか結構こだわって作ってます。それはなぜかというと
SF要素の多い作品なので、周囲にあるものにリアリティがないと視聴者の方が冷めてしまうのではないかと個人的に思ったのでリアリティのあるものをなるべく取り入れてオープンセットを仕上げました。車両はパーツをお借りできたのでリアルなものを使えたので内装は完璧で、外装をとにかくこだわって作っていきました。特に車両の上のパンタグラフの碍子(パンタグラフを支えているもの)などはかなりリアルに再現できていると思うのでぜひ注目していただきたいです。
二見:一番出入りのあるところの車輪も作ってるんですけど、3Dモデルを起こして3Dプリンターで大きいパーツを作り上げました。それで車輪の傷や地面に埋まってる感じなど再現していく作業をしていきました最終的につくばエクスプレスさんにも見ていただいたんですけど「もう本物じゃないですか!」と喜んでいただいて良かったです。
――オープンセットはどれくらいの広さで作られているのでしょうか?
二見:僕らが手を加えたところは200坪くらいなのですが、実はその奥に元々の緑山スタジオの地形も使っていて、撮影の範囲で言うと600〜800坪ほどでしょうか?
――第4話の終盤から6号車も出てきますが、こちらはどのように作っていったのでしょうか?
二見:6号車の乗客たちは村みたいなところで暮らしてるという設定なんですけど、村自体はロケで千葉の山奥に行って撮影をして、車両については、スタジオセットで撮影しています。
野中:車両自体はほぼ5号車と変わらなくて、運転席があるのでそこの部分だけちょっとパネルを追加したり壁を追加して変えています。台本のト書き上、電車内で仕切りができててそこに住んでいると書かれていたので、リアルな自然木で電車の中を区切って5号車とは全く違う印象のある作りになってます。
二見:スタジオセットではLEDを使用してるのですが、5号車では車両の片側を全部LEDにして樹海の風景を表現してるんすけど、その利点を生かして6号車では違う風景を映して全然違う場所にあるように見えるように工夫しています。
二見:横幅が17m、高さが4mなので大体270枚ほどのLEDパネルを合わせて作っていてすごく大きいんですけど、実はすごい巨大な引き枠の上に乗っていて動くんです。1話で主人公が車内で手紙を読んでるシーンも実はそのLEDを車のところに持って行って車窓の風景の映像を流して撮影しています。
――サバイバル生活をしている中にある電車ということでこだわっている部分はあるのでしょうか?
二見:たいまつがよく出てくると思うんですけど、たいまつって木の棒にタオル巻いて火をつけても油が染みてないと燃え尽きちゃう。でもサバイバル生活の中で誰が油を持っているんだという話になるわけですね。それでサバイバル監修の方と話をして、通常車輪のとこに潤滑油としてグリスが塗ってあるので、我々が作った車輪にもグリスを塗って劇中ではそこから拭い取って使っていくということにしました。これがあることによってSFの世界の中に油の染み込んだ松明が出てきたという感じです。
でも、車輪の油もいつまでもあるわけじゃないので、改めてサバイバル監修の先生に意見をいただいて、たいまつって「松」に「明」るいと漢字で書くんすけど、松のファットウッドというのが古来の松明なんですよね。松ヤニがたくさん染み込んでいる木があって、それは燃やすだけでずっと長いこと燃えているんです。その木を見つけたという設定にして、途中から竹筒の上にファットウッドがついてるという形の松明に変わったりしてます。
――今回キャストの皆さんに取材をしていく中でセットがリアルすぎて驚いたというお話も出ているのですが、現場でのキャストの方の反応はいかがでしょうか?
二見:オープンセットの方から撮影は始まったんですけど、入った瞬間に「わー!」と驚いていただけました。オープンセットの他に電車の中のセットはスタジオの中にも作っているんです。そちらは特大のLEDを使って風景などを表現しているのですが、最初はやっぱりオープンセットの方がリアルな木などを使って作っている分役者さんたちもそちらで撮影するほうがリアルに撮れると感じていたようです。
でも実際にスタジオ内のセットに入ったら山田さんが「すごい。テレビドラマのクオリティ超えてる。」と呟いているのが聞こえてきて、それが嬉しかったですね(笑)。中に作ったセットも外と全く変わらない環境に映るように仕上げているのでそう言っていただけて本当に良かったです。
◆放送情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
毎週金曜22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信。
また、Paraviオリジナル「ペンディングトレイン~終電後トーク~」も独占配信中。
(C)TBS
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