詐欺師専門の弁護を務める悪徳弁護士・小田切渉(福士蒼汰)と詐欺被害者の救済を願う人権派の弁護士・若松まどか(玄理)という正反対なバディが誕生した『弁護士ソドム』(テレビ東京系)第2話。

今回そんな2人が弁護を担当することになったのは、今巷でも話題の"闇バイト"に手を染めてしまった大学生・久保寺治(佐藤龍我/美 少年/ジャニーズJr.)だ。小田切に彼の弁護を頼んだのは闇バイト組織の首謀者の一人・梶原雄二(大高洋夫)で、久保寺が余計なことを証言しないよう見張っておいて欲しいということだった。

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父親が病に倒れ仕送りが途絶え、さらにはバイト先も閉店してしまい、新しいバイト先を急いで探す必要のあった久保寺のSNSに届いた高時給バイトの誘い。仕事の詳しい内容を知らされぬまま、言葉巧みに免許証のデータと家族の情報を渡してしまう。これは実際の"闇バイト"の現場でも常套手段で、仕事を断れないよう、引き返せないように心理的に追い込んでいく。

組織の上層部と久保寺のような実行犯が顔を合わせることはなく、やりとりは全てデータが残らぬようにSNSで。そして捕まる時は末端の駒のみ。今回の久保寺のように全責任をなすりつけ使い捨てることが前提だ。

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妹の亜美(岬あかり)に危害が加えられないように、犯行は自分1人で行い、奪ったお金は全てオンラインカジノで使い果たしたと嘘の証言をするしかない久保寺はある意味被害者でもあるわけで、彼の妹の身の安全を保証した上で、法廷で真実を明らかにしていく小田切の姿は被害者を守るヒーローそのものだ。

第1話から三木天音(山下美月)と競い合うように小田切の気を引こうと必死で、彼に対して憧憬の眼差しを向けていた天才ハッカーの八雲カイ(加藤清史郎)も、自分にとって彼は「ヒーロー」だとまどかに伝えていた。

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何より辛いのはここで描かれた"闇バイト"という名の"特殊詐欺"が現実社会で本当に横行していることだ。軽い気持ちで応募した若者に有無を言わさず引き込み、あるいは止むに止まれずどうしてもお金が必要になり焦っている若者の足元を見て、最初から使い捨て前提でにじり寄ってくる卑怯な大人たち。犯罪組織にこそ搾取構造が根深く存在し、一度足を踏み入れてしまえば簡単には抜け出せない。

小田切は"闇バイト"のアジトの様子と首謀者の個人情報をネットに流出させたが、その際に闇バイトに"加担させられた"側の情報は消去した。ここに小田切が単なる"ソドム"ではない由縁が滲む。

とは言え、手段を選ばない小田切のやり方にまどかは「違法な手段ですよね?」と詰め寄るも、敵は渉の母親・翔子(高岡早紀)のように正々堂々と臨めばこちらが先に抹消されてしまう相手だ。

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さて、「ここを出られたら小田切弁護士に会いに行く。あの人に言いたいことがあるんだ」とは第2話ラストで久保寺が妹に打ち明けた言葉だが、彼は一体何を知っているのだろうか。

妹を守るために嘘の証言を貫こうとする強がる兄の顔から、小田切が本当は自分が言いたかった真実をどんどん暴いてくれるのを戸惑いながらも安堵感と後悔が入り混ざった表情で見つめるその顔の変化が見事で、改めて久保寺がごくごく一般的などこにでもいる青年ながら、本来であれば無関係だったはずの場所に巻き込まれてしまった悲劇を物語っていた。

今話からレギュラー出演となる佐藤演じる久保寺は、小田切の一味となり一緒に"牧師"の正体に迫るのだろうか。まだ第2話にして、相当な振れ幅の変幻自在ぶりを見せてくれる山下扮する天音の変装同様に楽しみだ。

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文:佳香(かこ)

【第3話(5月12日[金]放送)あらすじ】

小田切渉(福士蒼汰)に、ガン治療専門の医師・栗原浩二(片桐仁)から弁護依頼が。患者の娘・江梨花(内藤理沙)に訴えられたのだ。栗原のクリニックは、認可前の怪しげな治療を行い費用も超高額、という明らかな詐欺クリニックだった。穏便に済ませたい栗原は和解を望むが、社会的制裁を望む江梨花に拒否され、交渉は決裂。渉は次の手を考えるが、この依頼には渉の失踪した父(勝村政信)に繋がる大きな手掛かりが潜んでいた。

◆番組情報
ドラマ8『弁護士ソドム』
毎週金曜20:00~20:54放送(テレビ東京系)
放送終了後、動画配信サービス「Paravi」でも配信

(C)テレビ東京