"法曹界のソドム"という異名を持つ小田切渉(福士蒼汰)。旧約聖書に登場する退廃と悪徳が蔓延る街の名前を冠された彼は詐欺師専門の弁護を務める悪徳弁護士だ。『弁護士ソドム』(テレビ東京系)第1話では、彼がなぜ詐欺加害者専門弁護士になったのか、その裏に秘められた過去や因縁が描かれた。

渉の母親・翔子(高岡早紀)は詐欺被害者を救済する弁護士だったが、ある真相を追っている中で真実に近づきすぎたのか自殺を装い殺される。高校生だった渉の誕生日に、夫・宏(勝村政信)が会社の金を横領した罪を自分が死を持って償うと書かれた遺書を残して。

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悲しみに暮れる中、翔子の手帳を見つけた渉は、彼女が何者かに脅されていたことを初めて知り、その事件の関係者の名前と「黒幕? 牧師」という走り書きに目にし、自分の身を滅ぼしてでも母親が貫こうとした"正義"を見つけることを誓う。

母親の死の真相に近づくために、彼女の敵を討つために、彼は敢えて詐欺加害者専門の弁護士になった。"敵を欺くにはまず味方から"を地でいく渉は、誰にもその魂胆を明かさず、「騙される方が悪いんです」「だから選んでるんです、私にふさわしい弁護士報酬を払える依頼人を」と心にもないことを口にする。

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その徹底的に敵の色に自らを染め上げようとする策略は自分自身のことをも傷つけてしまいかねない危うさと脆さを持つ自虐行為に他ならないが、そこまでしなければ暴き出せない闇があり、そうしないと尻尾を掴めない敵の恐ろしさを彼自身が身を以て痛感しているのだ。正々堂々と勝負しようとしても、母親のように葬り去られてしまうだけだ。

詐欺師によって家族を奪われた主人公が自らも詐欺師になって、その首謀者に近づき敵討ちしようとする『クロサギ』(TBS系)が思い出される。

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さて、本作で渉と対峙することになるのは詐欺被害者側の弁護士で人権派の若松まどか(玄理)だ。「普通の人の普通の幸せを守るために弁護士をしています」「一緒に頑張りましょう、私がついてますから」と臆することなく真っ直ぐに自身の"正義"を口にする彼女の姿は渉の亡き母・翔子そっくりだ。しかもどうやらまどか自身、かつて翔子から「私はあなたの味方だよ。一緒に頑張ろう」と励まされた過去があるようで、このことが彼女を法曹界に進ませたようだ。

第1話で描かれたマッチングアプリを使った結婚詐欺被害者の家族が、今度はリフォーム詐欺の被害に遭うという展開もなんともリアルだ。結婚詐欺で騙した女性から聞き出した家族の身の上話を利用しその祖父母に狙いを定め、自宅に押しかけリフォーム詐欺を働くという二段構造には現実社会の問題点が凝縮されている。一度カモと見なされれば、あらゆる詐欺師が手を変え品を変え近づいてきて"搾取される側"から抜け出せないという残酷すぎる構造にも本作は突っ込む。

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しかし、渉はこの詐欺師らのスキームを逆手にとって、マッチングアプリで結婚詐欺師の大森琢磨(おばたのお兄さん)をおびき寄せ、彼を通して偽の不動産情報をリフォーム詐欺師・上野原豊(池田成志)に掴ませる。

あとは渉の仲間の天才ハッカー・八雲カイ(加藤清史郎)が段取りをした上で、元結婚詐欺師・三木天音(山下美月)が得意の変装で高齢の住人になりすまして上野原と嘘の不動産売買契約をまとめあげ、1億円をせしめる。この流れが鮮やかで小気味いい。

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また、詐欺師に詐欺を仕掛け報いることに協力をした結婚詐欺被害者の水元沙耶(秋元才加)が"自分の人生を取り戻したかった。後悔していない"と胸の内を語るのを観るにつけ、渉のやっていることを一義的に悪だと断罪してしまえなくなるだろう。

さて、1億円を騙し取られる失態を犯した上野原の元に非通知で電話をかけてきたのが"牧師"なのだろうが、その声は竹中直人のように聞こえたがどうだろうか。

一見したところ志もスタンスも正反対かに思える渉とまどかだが、実際には掲げる信条は近しいところがある2人が出会ってしまった。次話では、そんな彼らがバディを組むことになるようで、どんな影響を及ぼし合うのか目が離せそうにない。

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文:佳香(かこ)

【第2話(5月5日[金]放送)あらすじ】

篠崎誠(でんでん)が事務所を閉じることになり、若松まどか(玄理)は新たな事務所へ。だがそこは詐欺被害者を弁護したいまどかにとって、最も許し難い相手・小田切渉(福士蒼汰)がいる事務所だった。さらに、弁護士を目指すきっかけになった女性が、渉の母・翔子(高岡早紀)だと判明。そんな2人が思いがけずコンビを組むことに――。その矢先、渉のもとに特殊詐欺に関わった大学生・久保寺治(佐藤龍我)の弁護依頼が舞い込む。

◆番組情報
ドラマ8『弁護士ソドム』
毎週金曜20:00~20:54放送(テレビ東京系)
放送終了後、動画配信サービス「Paravi」でも配信

(C)テレビ東京