エース(妻夫木聡)が初めて患者の前で仮面を外し、孤高の天才外科医から初めて弱音がこぼれた日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 最終話。
因縁の相手・千代田医大の院長兼理事長の剣持理三(鹿賀丈史)を過去の罪の自白に至らしめることはできたが、同時にエースはその不正の裏で犠牲にされてしまった自身の患者・坂本青葉(志水心音)を救えなかった自身の傷をさらに鋭くえぐることになる。そんな中、"仮面ドクターズ"にオペの依頼を持ち込んだのは、重度の左心低形成症候群を患っており余命3ヶ月と宣告されている寺内結衣(小田愛結)の母親・香苗(徳永えり)だった。
警察の捜査が本格化している最中、クイーン(松下奈緒)とスペード(日向亘)は今は下手に動かない方がいいとオペ辞退を提案するが、エースは自身のトラウマを振り切るようにオペ決行を申し出る。一人で結衣の元を訪れたエースは仮面を外し、死の瀬戸際に立たされている彼女と向き合った。「このままでは君はもうすぐ死んでしまう。でも手術をすれば結衣ちゃんは助かるんだ。嘘はつかない」―目の前の結衣を通して13年前の青葉とあの時果たせなかった約束を今もう一度交わしているかのようなエース。
「本当に私死なないの?」この確信めいた結衣からの問いかけにエースは咄嗟に首を縦には振れなかった。
「もういいよ。私、もうすぐ死ぬんでしょ?どうして助かるなんて言ったの?」
いつになく怯えた様子で手の震えが止まらないエースの背中を押したのは、諦めず命を繋ごうとした人たちの存在だった。そもそも、仮面ドクターズに見つけてもらえるようにと結衣のことを1泊10万円もする特別室に入院させたのは千代田医大の医師・染谷(一ノ瀬颯)だった。シングルマザーで生活に余裕がない香苗だけでは到底できないことだ。
なかなか結衣のオペに踏み切れないエースの前に偶然現れた青葉の母・広江(菊池亜希子)は、改めて医師・天野真一に自身の、そして青葉からの想いと期待を託した。臓器移植を希望する子どもたちを支援するNPO法人の口座に毎年青葉の命日に匿名で振り込まれるようになった多額の寄附金はエースからだろうとし、お礼を伝え、続ける。
「そのおかげでたくさんの子どもたちが救われました(中略)命って繋がっていくものなのかもしれないなって思えたんです。誰かの命が繋がって人生を歩んでいく」
「青葉は正しかった。天野先生を信じてましたから。これからもたくさんの命を救って下さい。先生のこと待ってると思いますよ」
あの時青葉が曇りなき眼で信じてくれた医師に戻るために。そんな青葉に恥じぬように、エースは"目の前の人を救いたい"という医師としての性に従い結衣のオペを執刀できた。
さらに、エースと決別したかに見えたジョーカー(藤原竜也)は警視庁副総監の高城(沢村一樹)にある取引を持ちかけ、"大役"を務め上げた。高城という話がわかり、かつ結衣と同じ症状で亡くなってしまった妹を持つ人物を交渉相手に選んだところも含め、最後までジョーカーは優秀な交渉人で国際弁護士だった。
「君たちは今法を破って命を救おうとしている。が、我々は法に従って命を奪うことになるかもしれない。正義とは悩ましいものです」という高城の言葉こそ、"仮面ドクターズ"のバックボーンや存在意義に通じている。
米国の高官から仮面ドクターズにオペの依頼が入ったが、ジョーカーは「日本政府の決定に従う」と答え、米国政府に日本政府が恩を売る絶好のチャンスを作り出し、その裁量権を手に入れた。エースに手術をさせるべく自分以外の仲間の罪を免責するという約束まで取り付け、最後にして最強の切り札を切ったのだ。 "仮面ドクターズ"は構成する彼らそれぞれにとっても生きる上で必要不可欠な仲間であり居場所であり役割であり、そして希望となっていた。
出所したジョーカーを待って再結成された仮面ドクターズ。生きようとする命を前に誰もそれを遮るような口出しも手出しもできないのはもちろん、ましてや見殺しになどできるはずがない。エースにとっての医師としての性は、我々一人ひとりにも本能的に組み込まれているのだと信じさせてくれるような心強いラストだ。そして仮面ドクターズによって生かされた命がまた次の命を繋いでいく連鎖が鮮やかに描かれ、晴れやかな気持ちと同時になんだか救われた気がした。
(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)
◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。
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