松田健(小関裕太)が抱える闇が明かされた『来世ではちゃんとします3』(テレビ東京系)第11話。
第1話で松田が大森桃江(内田理央)を見ながら心の中で呟いていた葛藤がずっと気にかかっていたが、その原因がわかった気がした。
「このままでいて欲しいと思うのにドロドロに甘やかして俺で満たしたいという気持ちもある。(中略)どうして女の子は重くなっていくんだって嘆いていたけど、依存させて自分の寂しさを癒していたんだ。俺って最低だな」
松田が抱える"自分の寂しさ"とは家族関係の不和から来ていたのだろう。林勝(後藤剛範)の家に住み着いている松田の姉・黒木百合(長井短)は物心ついた時から母親に溺愛されていた彼のことを敵視していたようだ。母親が見ていない時に暴力を振るわれたり、百合は男友達にも路地裏で松田を痛めつけさせたりしていたのだという。なるほど、執拗に弟を追い回す百合の執着心も、百合の気配を感じるだけで「隠れなきゃ」と生活全てを捨ててでも彼女から逃げようとする松田の異様な怯えぶりにも納得した。
自ら求めた訳でもない、いわば母親の身勝手で独りよがりな愛情の犠牲になったとも言える松田。そして、愛してくれているのに、松田の異変や傷には気がつかない母親というのは、きっと自身の都合がいい部分だけを切り取って息子のことを愛していたのではないだろうか。
一方で、どんなに望んでも自分には関心を寄せてくれない母親への不満や寂しさを自身より弱き者に、しかも隠れてぶつけるしかない百合。皮肉なことに、どちらも結局望んだ愛情は手に入れられていないのが切ない。姉弟だからこそより一層どちらも息苦しかったことだろう。
たまたま再会し、そのまま家に避難させてもらうことになった元セフレの桜木亜子(小島藤子)からは警察に相談に行くよう勧められるが、松田は震え上がるだけで最初は聞く耳を持とうとしない。
「警察?家族のことだしきっと対応してもらえないよ。警察に認めてもらえないよ」
きっと幼き松田は何度か声を上げようとしたのだろう。いや実際に声を上げたのかもしれないが、なかなか理解してもらえなかったのだろう。"家庭"という密室で日常的に行われる終わりなき暴力行為は松田の尊厳を削り、どこか相手と壁を作ってしまう深入りしないスタンスを知らず知らずのうちに形成したのだろう。
そして、それゆえに松田はこのピンチに陥っても真っ先に桃江には頼れず、何の巡り合わせか、今はかつてのセフレ宅をシェルターとしている。大切だからこそ桃江のことを巻き込みたくはない、心配をかけたくない。でもそんな気持ちの一方で、自身の都合の良いように亜子の好意に甘え、ある意味付け込むような形で助けてもらっていることにも、もちろん松田自身は自覚的だ。
「ごめんね、いつも亜子ちゃん困らせて」
「亜子ちゃん、沢山傷つけたのに助けてくれてありがとう」
そんなふうに申し訳なさそうに詫びる松田の姿に、亜子も松田が今ここにいるのは自分と一緒にいたいからではなく逃げる必要がある中たまたま出会ったのが自分だっただけだという、自身の望みとは正反対の事実を思い出し、気持ちにブレーキをかけていた。
それでもやっぱり松田に彼女がいて、しかもそれがかつて自分の前で忘れられないと話していた元カノではなくて、また別の女の子ということにひどく動揺してしまう。自分がそのポジションになれないことを彼の中から消えない元カノの存在があるということで何とか納得させようとしていたのに、自分では超えられなかったその元カノを上回る存在が現れたということにショックを受ける。
偶然ではあれ、久々の再会を喜んだのも束の間、なかなか苦い現実を突きつけられながらも、愛が強すぎて松田を監禁してしまった"あの時の自分"とは決別すべく、勘違いしないよう意識的に線引きをして振る舞おうとする亜子は健気だ。
松田の元に警察から百合のことで電話が入ったが、一体彼女に何があったのだろうか。次週最終回では、松田は自身の葛藤や苦悩を桃江に打ち明けてしまえるのだろうか。そして2人の間にいまだある壁を取っ払ってしまえるのだろうか。
文:佳香(かこ)
最終話(3月22日[水]放送)あらすじ】
姉・百合(長井短)を恐れ亜子(小島藤子)の家に逃げ込んだ松田(小関裕太)のもとに百合のことで警察から連絡がくる。一体、百合は何を犯したのか?そんな中、檜山(飛永翼)がとんでもない仕事を引き受けてしまい、スタジオデルタはパニック状態に。百合のことや次々と舞い込む仕事のせいで、話せていない桃江(内田理央)と松田。似た者同士の職場恋愛の行方は・・・。
そして、3ヶ月健全交際したら一線を越えるという約束は果たせるのか?
◆放送情報
ドラマParavi『来世ではちゃんとします3』
毎週水曜深夜0:30よりテレビ東京系で放送中
動画配信サービス「Paravi」で毎週水曜21:00より毎話独占先行配信中
(C)「来世ではちゃんとします3」製作委員会
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