エース(妻夫木聡)が本名の"天野真一"として外科医をしていた頃の優しい笑顔や人目も憚らず泣きじゃくる喜怒哀楽が観られた日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 第8話。そもそもなぜエースは表舞台から姿を消し闇医者になったのか、そして"仮面ドクターズ"がオペを持ちかける相手がどうして千代田医大の患者に集中しているのかが明かされる。

「この世でたった一人俺が尊敬する医者」と13年経った今でもエースが敬意を表する大和医大の恩師・真田博(榎木孝明)のスタンスは「オペは完治の入り口でしかない」、「医師の仕事は生きようとする患者に寄り添い支え続けることで、オペを行うかどうかは患者が決めること」というもの。

当時自身のオペの技術に自信がありそれをもっと磨いて生かしたいと考えていた天野にとっては、真田の言葉は綺麗事や医師として"逃げ"のように聞こえてしまう。「医師の存在意義は命を救うこと。最も必要とされるのはオペの秘術」だと信じて疑わない天野は反発し、剣持理三(鹿賀丈史)率いる千代田医大へ移籍することを決めたのだった。

そしてそんな天野に待ち受ける未来を予見するかのように真田が言った「君の正義が命の重さに勝ってはいけない。その驕りがいつか取り返しのつかない事態を招くことになる」が皮肉にも現実のものとなってしまうのだ。

想像以上の腕を持ち自身のポジションを揺るがす脅威になりかねない天野。学会の次期理事長の有力候補だと目されていたライバル・真田。そして元々真田の患者だったがなかなか臓器移植手術の番が自分に回ってこないことに痺れを切らして千代田医大に転院してきた不動産会社の代表・堂前(松澤一之)の存在、そして彼がオペの執刀医に天野を指名したこと。これらの要素が重なり嫉妬に狂った剣持は、天野と真田を貶める。本来天野のもう1人の患者だった坂本青葉(志水心音)に移植される予定だった臓器を、天野が真田と結託し堂前に横流ししたという状況証拠を捏造し、2人を医療界から追放しようとしたのだ。

「価値ある命を救えばお金も生まれる」と言って憚らない拝金主義に塗れた剣持に、ある意味天野の向上心とも紙一重の"自分のオペで1人でも多くの命が救えるはずだ"という自信が絡め取られ、純粋に患者を救いたいと願う想いや正義まで利用されてしまった。何よりの被害者は、退院できる日を夢見て入院生活や辛い治療にも耐え続けてきた青葉の前向きな小さな命だ。

「あなたがもし命に優先順位をつけたのであれば、青葉に、娘に生きる価値はなかったんでしょうか?」

青葉を優しそうに眼差す天野の優しく柔らかな笑顔も、青葉が亡くなる前に書いた天野宛の手紙を読んで人目も憚らず泣き叫ぶ姿も、今のエースからはすっかり封印されたものだ。

「お前に生きる価値はあるのか」と問いながら、エースは救えなかった青葉の罪なき無垢な命を想い、そしてそっくりそのまま真田によって生かされた自分自身の命にも"生きる価値"を問い続けていたのではないだろうか。闇医者としてしか生きられない自分が、この対峙する目の前の命を救っても自身に幻滅せずにいられるか。これ以上罪を重ねなくて済むのか。

闇医者になってまでも"救えて良かった"と心から思える命なのかどうか。あるいは、全く自分が感知しないところで剣持の思惑によって一度"命を天秤にかける"行為に加担してしまった天野が、せめても剣持と同類になってしまわないためには、彼とは全く異なる価値基準でジャッジを下し続けることしか道はなかったのかもしれない。金にモノ言わせる権力者を優遇する剣持に対して、天野は"エース"になってからというもの、ますますその命の価値を財力や社会的ステータスに置くことは一度たりとなかった。

エースが闇医者になった経緯を知ると「俺は闇医者だから患者を選ぶんだ」という彼の言葉がまた幾重にも重くのしかかってくる。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第9話(3月5日[日]放送)あらすじ】

剣持(鹿賀丈史)の娘・玲於奈(結城モエ)が、もはや手の施しようのない病状であることが判明した。
玲於奈を救うべきか・・・
正体が暴かれるリスクを恐れ反対するジョーカー(藤原竜也)と、因縁の相手との直接対決に燃えるエース(妻夫木聡)の意見は、真っ向から対立する。
そんなチーム解散の気配が漂う中、警視副総監・高城(沢村一樹)の指揮の下、警察の捜査が闇医者チームに迫り始めていた・・・

◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。