「俺は闇医者だから患者を選ぶんだ」

日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 第7話では、天才外科医・エース(妻夫木聡)率いる"仮面ドクターズ"が患者を選ぶ理由が、いや選ばねばならない理由が最悪な形ではあるがまざまざと明かされた。

今回の患者はスペードこと白瀬剛人(日向亘)の初恋の人・望月遙(畑芽育)。いじめを苦に自殺を図った遙のオペを「自分で死を選んだんだろ」と断るエースに対して、「好きで自殺する人なんかいるかよ!」と食ってかかるスペードは珍しく熱を帯びている。

同級生で学園の理事長の娘・西島里佳(竹内カンナ)がいじめの首謀者とされ、このいじめの事実が公になることを恐れた理事長が遙のオペ代を支払うことになる。しかし、実際に彼女をいじめていたのはなんと担任の林真利奈(前田亜季)だった。

元々林の標的だった遙の友人・岡田夏美(池間夏海)が学校に来られなくなったのを機に、林からの陰湿ないじめのターゲットは遙に移ることに。日誌当番を任せ、ちょっとした言葉尻を捉えて赤字で添削という名の嫌がらせを続ける林は、少しでも相手が歯向かうと今度はカンニング疑惑まででっち上げる。生徒指導室に呼び出し教師と生徒という力関係を利用して行われる日常的ないじめには絶句してしまう。

そんな林が好き勝手できているのは理事長・岳雄(井上肇)の愛人だからだという。責任を感じた夏美と里佳は、里佳がいじめをしたことにし、父親である岳雄にオペ代を負担させることを思いついたのだった。

ジョーカー(藤原竜也)によると「真っ当じゃない闇医者だからこそ理由が欲しいんだよ」というエースは遙について「救ったとして生きられるのか?」とスペードに最終確認をする。エースのオペの技術と最新の術式や海外の薬剤や機材を用いればほぼ治せない症状はない。ただ一時的に命を救えたとしても、その後生き続けられるかどうかは本人の"意志"の力にかかっている。九死に一生を得たその奇跡的な命を、その後どう生かして、何に用いるのかも当人次第だ。だからこそ、エースは患者を選別するのだろう。闇医者として自身も命懸けの違法行為の上で救った命を持ってして、それが消耗されたり、悪事に利用されては"仮面ドクターズ"の存在意義自体が揺らいでしまう。

スペードの「遙はちゃんと生きられるから。俺が守るから」という言葉も虚しく、退院し学校に復帰したその足で、遥は林をカッターで刺した。遙のあまりの迷いのなさに衝撃のラストとなったが、自らの命を持ってして訴え反省させようとした林が、何ら変わりなくお咎めなしに学校にいる姿を見てしまえば何もかもがバカバカしくなってしまったのかもしれない。

今回初めて本人の"生きたい"という意志を確認することなくオペが実施されたケースが描かれた。患者本人が、あるいは第6話のようにその家族が「生きる価値があるのか」とエースに問われることは、助かった後の生き方を問われ直す必要な儀式であり機会だったのだと今話がはっきりと明示してくれたように思える。

エースは過去良かれと思って助けた命を無下にされたことでもあったのだろうか。次週、ついに彼が医師を辞めた理由が明かされそうだ。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第8話(2月26日[日]放送)あらすじ】

エース(妻夫木聡)はジョーカー(藤原竜也)に促され、自分が過去に救えなかった命について語り始める。
外科医として自信に満ちていた若かりし頃、天野(妻夫木聡)は「オペは完治の入り口でしかない」と語る恩師・真田(榎木孝明)に反発し、剣持(鹿賀丈史)のいる千代田医大へ籍を移す。
そこで天野は、ドナーを待つ少女の患者と出会い・・・
若き天才外科医を待っていたのは、あまりにも過酷な運命だった。

◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。