北川悦吏子のオリジナル脚本×広瀬すず・永瀬廉出演のドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)の第3話が1月31日に放送された。
九州の片田舎で育った"野生児"のような女の子・浅葱空豆(広瀬)が音楽家を目指す青年・海野音(永瀬)と運命的で衝撃的な出会いをすることから始まる青春ラブストーリーが描かれる本作。
翔太(櫻井海音)に一方的に婚約破棄された空豆は、婚活に励むことを決意。雪平響子(夏木マリ)の息子・爽介(川上洋平)に誘われ、共に婚活パーティに参加するが、うまくいかず、2人でドライブへ行くことになった第3話。そんな中、祖母・たまえ(茅島成美)からの電話が鳴りまくり、空豆が出ると、翔太との結婚が破談になったにも関わらず帰ってこない空豆を叱り飛ばし、九州に帰って来いと言う。空豆はとっさに、翔太より良い男を見つけたから東京で結婚すると嘘をつくが、たまえは信じない。そこで、目の前にいる爽介に「私と結婚しませんか」と言うと、なんと爽介は承諾したのだった。
その展開も驚きだが、そもそもの驚きは「おばあちゃん=優しい」像ではないこと。孫を頭ごなしに叱りとばすのも珍しいが、空豆が帰れないのも、足の悪い祖母のために翔太が家の中にエレベーターを作ってくれると約束した費用300万円をなんとか得るため。足は悪いが、口はもっと悪い祖母のために自分の人生を犠牲にしようとしているヒロインは、全然「野生児」なんかじゃない。
一方、爽介を操ろうとし、ボーッとしている息子には「イノシシくらいがちょうど良い」として空豆にロックオンしているのも、高齢者である母・響子。二人をくっつけようとする響子は商店街の福引であてた水族館のチケット2枚を空豆に渡し、まんまと爽介を誘った。空豆は水族館でクラゲに感激したり、店のショーウインドウに飾られた120万円のウェディングドレスに見惚れたりするが、飾らない言動はおよそデートをしているようには見えない。しかし、爽介が水族館で買ったクラゲの指輪をプレゼントすると、「うれしか~!」「きれいか~」と嬉しそうに笑う。広瀬すずがキラキラしているとう理由だけでなく、だんだん空豆がピュアで可愛い女性に見えてくる。
一方、音は、バイト先で自分に一目惚れしたと言って連絡先を渡してきた女性(田辺桃子)と一緒に水族館に行く。そんな中、「ユニバースレコード」の磯部(松本若菜)から、音の作った曲がコンペで決まったという連絡が。しかし、電話を切ると、女性は意を決したように金を貸して欲しいと言い出し、母がガンで、この後ホテルへ・・・と付け加える。
一目惚れで連絡先を渡す女性があまりに胡散臭いと思ったら、実は詐欺師だったのだ。浪費家の妹の借金を返すためと言うが、「初めての詐欺」ターゲットに「優しそうだから」と選ばれる音。「淡々としていて、感情をあまり表に出さない音=優しそう」はあまりピンとこないと思ったら、女性は「また電話していいかな」という厚かましい質問をぶつけ、呆れる音に「どうしても人の声が聞きたいときがあって・・・死にたくなるときとかない?」と問いかける。
そこで何故か音は「いいよ、電話して」と言ってしまう。女性はセイラと名乗った。実は音には何でも受け入れてくれそうな「優しいオーラ」ではなく、共鳴し合える「ネガティブオーラ」があるのではないだろうか。
音が下宿に戻ると、空豆はプロポーズされたと嬉しそうに語る。空豆は自分が捨てられた人間だから、拾ってくれる人がいるだけで嬉しいと言う。しかし、爽介に何度も電話が来ており、英語で話している様子を見た響子は、ニューヨークに女がいて、別れ話がこじれているのではないかと疑い問い詰める。
その直感は的中していた。爽介は日本から嫁を連れて行くことでメアリーに別れ話を納得させるため、空豆を利用しようとしていたのだ。その事実を知った響子は、結婚する気満々の空豆をなんとかやめさせたいと音に訴える。事実確認を怠って、独りよがりでけしかけたくせに、それをやめさせるには他者を頼る響子。夏木マリはドラマで若者たちのメンター的存在を演じることが多いだけに、このお騒がせ高齢者ぶりも斬新だ。
かくして、祖母の300万円のエレベーターのために結婚相手を見つけようとしていた空豆と、元カノと別れる口実のために空豆を利用しようとした二人の結婚は白紙に。しかも、祖母・たまえには、相手の金をあてにしようとしたことを「さもしい」「見苦しい」と怒鳴りつけられる始末。
音が作った曲に感動し、自分は幸せにしてもらうことしか考えていなかったと恥じる空豆だが、心沸き立つものはないのかと聞かれ、ウェディングドレスのもとへ。帰る前にもう一度見たかったと空豆が言うと、音は「帰るなよ、いろよ」と引き留めるのだった。
"野生児"に見えて自己肯定感が低く、自分の夢が持てない空豆と、感情を表に出せない音と、優柔不断な爽介たちに対し、たまえ・響子と、気ままで豪快で自分本位な高齢者たちの対比がなかなか斬新な第3話だった。
(文:田幸和歌子/イラスト:まつもとりえこ)
【第4話(2月7日[火]放送)あらすじ】
浅葱空豆(広瀬すず)は、東京で心が沸き立つ「夢」と出会い、ファッションに興味を持つ。一方、海野 音(永瀬廉)は、空豆と暮らしてから新たに作曲した曲で、ついにメジャーデビューが決まる。 運命の出会いをきっかけに、動き出す空豆と音の人生。心がホッと落ち着く関係だった2人の距離がついに近づき!? 愛おしい日々の秘密のキス!
◆放送情報
『夕暮れに、手をつなぐ』
毎週火曜22:00よりTBS系で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
- 1