「生きるか死ぬか」ではなく「命か才能か」の究極の二者択一が問われた日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 第4話。
今回、"仮面ドクターズ"がオペの話を持ちかけたのは天才彫刻家・古賀洋子(美村里江)。小脳に摘出できない腫瘍を抱えており、このまま放っておけば命を失うが、一方でこの脳腫瘍を取り除いてしまえば彫刻の才能を失ってしまう。何と彼女の才能はこの脳腫瘍の影響によって開花されたもので後天的サヴァン症候群によるものだったのだ。
突然この事実を突きつけられ「ようやく努力が報われた、神様がくれたご褒美だと思ってたのに病気だったなんて」と現実の残酷さに打ちひしがれる洋子。さらに気がかりなのは、自身の彫刻家としての才能を最初に見出してくれた恋人でキュレーターの倉木恵一郎(青柳翔)の存在だ。彼女は彼のことを何もない自分に縛りつけ一緒に居させてしまうことに自分自身が耐えられないのだとこぼす。
「命の方が大事に決まってるだろ」「才能は生きるために利用するものだ。そのために命を失くしてはいけません」と迷わず言い放つジョーカー(藤原竜也)に対して懐疑的なのはクイーン(松下奈緒)だ。
実はクイーンは"仮面ドクターズ"のオペナースになる前は、大手ジュエリーメーカーのデザイナーとして活躍しており、人工ダイヤの研究に励んでいた。そこで天然ダイヤに何ら遜色ないほど精巧な人工ダイヤの開発に成功した彼女は、その既得権益が脅かされることを危惧する人間に命を狙われてしまう。そんな時に出会った天才外科医・エース(妻夫木聡)に顔も変えてもらい、名前も過去も全てを捨てて新たな自分を生き直しているという壮絶な過去が明かされた。
何を持って"生きている"とするかは人それぞれで、自身の人生の意義や生きがいを何に見出すかも様々だ。自分を"自分たらしめている"要素が"才能"だという場合、それを失った人生はまるで他人の人生のように感じてしまう人もいるだろう。洋子にとっては自身の存在意義であり、自分が自分であることの唯一の証明ともいえる彫刻家としての才能を失うことこそが"死"を意味すると考えたのだろう。
生きるために才能を利用するのではなく、才能を存分に発揮しそれを表現するために生きたい人だっているのだ。たとえ、愛する人に「生きてくれ! 才能なんてなくたっていいんだ。何もなくたって一緒に生きて欲しいんだよ」と懇願されても、それでも捨てられない守りたい大切なものだって存在するのだ。
「これが自分の全てだと思えるもの」を手放し、命を最優先し一度は全てを失ってでも生き永らえることを選んだクイーンの選択も、今のまま天才彫刻家として、たとえ期限付きの人生であっても全うすることを望んだ洋子の希望も、どちらも同じように尊重されるべきだろう。エースが言う通り、もうすぐそこに終わりが見えている人生だって、命だって最期のその時まで情熱を燃やし続ける洋子は紛れもなく「生きている」のだから。
そして、最終的にその選択が正解かどうかを決めるのは本人でしかない。一度選んだその選択肢を正解にするために、自身で納得できるものにするために残りの命の限り精一杯生きることは変わらないのだから。ただ残りの時間の長さに違いがあるだけで。
そして今話、"仮面ドクターズ"と彼らを毛嫌いする千代田医科大学附属病院・院長兼理事長の剣持理三(鹿賀丈史)の関わりもうっすら見えてきた。剣持の回想シーンに登場する千代田医科大学附属病院の手術着を着用しオペ室に向かうあの後ろ姿はエースではないだろうか。外科医の橋元芙美(橋本マナミ)が言っていた「院長に追い出された中にいた優秀な医師」の1人がエースだったということなのだろうか。
(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)
【第5話(2月5日[日]放送)あらすじ】
町工場「石川精機工業」の職人・石川智明は、通称クローバー(小林勝也)。
エース(妻夫木聡)との付き合いも長い、闇医者チームの特殊機械担当だ。
仮面のメンテナンスを頼みに行ったスペード(日向亘)は、クローバーからエースとの出会いや、エースとジョーカー(藤原竜也)の関係を聞く。
そんな折、若年性アルツハイマーを患う渚(小島藤子)とその夫・健二(高橋光臣)と出会ったエースは、手術の交渉をジョーカーに依頼する。
夫婦は資産家ではないためジョーカーは乗り気ではなかったが、2人に会い、思ってもいなかった事実を知ることに・・・。
◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。
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