藤原季節主演『ギルガメッシュFIGHT』の最終(第5)話が配信された。テレビ東洋のディレクター・加藤竜也(藤原)が『ギルガメッシュFIGHT』を去り1年――『ギルガメ』は高視聴率をキープしていたが、案件や流行りに乗った企画が増え、愛を失い"エロ"だけが残った番組となっていた。

そんななかでも、現・演出/ディレクターの名高圭介(堀井新太)が、「加藤さんならどうするか?」と企画ノートに書き込んでいたのが胸アツ。加藤が演出していた『ギルガメッシュFIGHT』の"志"を貫こうと1人奮闘していた。

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演出にもこだわりを欠いた横やりが入り、出演者のモチベーションも下がり気味に。そんな折、出演者の西岡亜紀(真島なおみ)と司会の大沢ゆりえ(出口亜梨沙)が、プロデューサー・栗田淳一(大東駿介)を呼び止める。普段はどちらかと言えば控えめな印象の大沢が西岡をさえぎり、番組卒業を申し出ると空気が一変。周囲が驚く中、西岡も険しい表情に。

その後、大沢の卒業が決定したことを栗田から聞いた西岡は、「私も辞めたいなぁ。いや、辞める」と宣言。慌てた栗田は「亜紀とゆりえは『ギルガメ』の象徴だ。一気に欠けたら番組がもたない」「『ギルガメ』はもう俺たちだけのものじゃないんだよ」と説得するが・・・。西岡は、加藤が去った後の番組に「愛がなくなった」と言い、"エロ"だけの番組になってしまったことを指摘して、「もう続けたくない」と吐露。

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どうしても引き留めたい栗田に、西岡は加藤を演出に戻すこと、大沢の卒業回の演出も彼が担当するようお願い。だが、自分で加藤をクビにした栗田は簡単には聞き入れることができず・・・。

すると、その話を聞いていた名高が、自分が加藤を説得すると申し出る。加藤が戻るということは自分の立場を追われることでもあるが、「それで構いません」「俺は、加藤さんを超えられない」と言う名高。自分の弱さを受け止め、勇気ある決断をした名高がカッコよかった。加藤の行方を捜し、番組に連れ戻そうとする名高を出演者たちが応援する姿にも、"愛"を感じずにはいられなかった。

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名高が見つけ出せずにいた加藤の姿は、編集室・・・ではなく屋上にあった。そんな加藤を栗田が見つけ、何と「『ギルガメ』に戻る気はないか?」と打診。すると加藤は、「よくそんなことが言えますね。あんたが俺を切ったんでしょう。俺が『ギルガメ』の数字も認知度も上げたのに。それをあんな番組にしやがって」と、トレンドやタイアップによる企画内容の酷さを痛烈批判。

「そこに"志"はありますか? あんたが言ってたんでしょ。"カメラは低く、志は高く"って。今の『ギルガメ』に志なんかないでしょ」

そう言い切る加藤の目が潤んでいて、真剣さが伝わってくる。

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すると栗田は、全てを理解した上で自分たちは"番組を続けるため"にやってきたと声を荒げる。「番組っていうのは長く続けられて初めて評価されるんだ。お前にとっては惨めなことなのかもしれない。でも、評価されるまで這いつくばって番組を守ってきたのは俺たちだ。お前の番組じゃない!」と言う栗田。その圧倒的な熱量が画面からも伝わってくる。

「俺、番組が続くためなら何だってやるよ」

それこそが、どんなに悪者になっても突き進む栗田の信念なのだ。そして、加藤に番組に戻るよう再度説得するも、やはりきっぱりと断られてしまう。栗田は「一生、番外地でくすぶってろ」と捨てゼリフを吐きながら立ち去るが、その後の行動に、誰よりも番組存続のことを考えているからこその栗田の悔しさやにじみ出ていた。

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そんな栗田は、芸能事務所会長の二階堂(羽場裕一)から大沢ゆりえの後任を推されるも、それを拒否。「俺は『ギルガメ』のプロデューサーです。番組を守らないといけない」と言い切る栗田の潔い立ち振る舞いにブレない強さがあった。

大沢の卒業回では、それまでは却下されがちだった名高の企画を、栗田が採用。内容は、番組を支えてきた大沢の本音に迫る、西岡との赤裸々トーク。その飾り気のない笑顔がこぼれる戦友同士のトークには、"愛"があふれていた。

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最後に「『ギルガメッシュFIGHT』に、スタッフに、共演者に、そしてファンの皆様に、精一杯の愛をこめて、ギルガメッシュ!」とステキな笑顔を見せた大沢。カットがかかると、その目からは大粒の涙が。「今、泣くの?」と西岡に聞かれた大沢は、「『ギルガメ』に涙は似合わないから」と最後までプロフェッショナルを貫いたのだ。

そんな大沢を抱きしめた西岡をはじめ、大沢を見守るスタッフ、共演者が皆、温かい。名高は、栗田から今後の演出を完全に任されたことを西岡に報告。「俺、死ぬ気でやるからさ」と言う名高に、「つまんなくなったら、すぐ辞めるからね」と笑顔を見せる西岡。その笑顔からは信頼感が伝わってくる。

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その様子を、現『ギルガメ』を酷評していた加藤も見ていて・・・! 西岡が後を追いかけて呼び止めると、加藤はゴーサインのようなジェスチャーで応え、去って行く。その印象的な姿は『ギルガメ』の志が戻ってきたことを意味しているように思えた。

『ギルガメ』はその後、バッシングも多く浴び、1998年1月に打ち切りが決まったが、最終回翌日にスポーツ紙全紙が番組終了を取り上げるほどの伝説となっていた。これほどまで鮮烈に番組の記憶を残したのは、前代未聞の"エロをテーマにしたバラエティ"で戦い抜いた出演者、そしてスタッフたちが"志"を貫いたからに他ならない。

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『ギルガメ』の存在感は大きく、放送が終わったあとも"『ギルガメ』みたいな番組を作りたい""栗田さんのような天才にしかできない"と若手社員たちが口にするほど。しかし、その言葉に栗田が「天才は俺じゃない」と言い切り、加藤を讃えていたのが印象的だった。実質、加藤が『ギルガメ』を演出していた期間は短かったが、彼が多大な影響を与えていたことを改めて感じさせられる。

『ギルガメ』を上昇気流に乗せて、去ることになった加藤は、その後も若手社員の多い夕方の情報番組の会議中に、周囲も驚くような企画を出す。そのギラギラとした目は熱を帯びていて・・・そんなラストに前向きな気持ちにさせられた。

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番組は誰のものでもない。だが、関わるすべての人の熱量がなければ生み出せないものがあるということを感じさせてくれた『ギルガメッシュFIGHT』。観た人がそれぞれの仕事観について考えさせられる、刺激的で熱い"仕事人"の物語だった。

文:小松加奈

◆放送情報
Paraviオリジナルドラマ『ギルガメッシュFIGHT』
動画配信サービス「Paravi」にて全話配信中。第1話は無料。