連続殺人未遂犯とその被害者を追う闇医者集団"仮面ドクターズ"の姿が描かれた日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 第3話。その理由は中盤にようやく明かされるわけだが、追う者と追われる者、それぞれの気持ちが交錯する展開に終始釘付けになった。

連続殺人未遂犯は安達祐樹(杉本哲太)。原発性脊椎腫瘍を患っている安達は仮面ドクターズのオペを受ける予定だった。しかし、手術を受けず3人の青年を次々に襲う。被害者の青年らこそ、10年前に女子高生を暴行し生き埋めにした残忍な殺人事件の犯人だったのだ。そしてこの理不尽極まりない事件の犠牲者が安達の愛娘・未来(上野鈴華)で、その復讐のために彼らの出所までなんとかして生き延びるべく"仮面ドクターズ"にオペを依頼したのだった。

しかし、首謀者の恩田(西山潤)の出所が予定より早まったことで、オペを待たずして復讐計画に乗り出した安達。安達の行方を追う天才外科医・エース(妻夫木聡)は、その先々で恩田に襲撃された被害者でもあるが殺人犯でもある青年らを救う。

本作では一貫してエースがオペを受けるかどうかの判断軸として"生き延びる価値があるのか"が問われる。事情を知りながら安達を助けようとするエースにジョーカー(藤原竜也)は問いかける。

「人を殺すためにわざわざ命を延ばすなんて間違ってるだろ。それこそお前がいつも言ってる生きる価値はどうなるんだ」

警察からの捜査が及ぶ中、危険を顧みず罪を犯した者も今まさに罪を重ねようとしている者のことも救おうとするエースの姿に周囲は最初は納得できない。

しかし、安達に刺されて瀕死状態の恩田をすぐに処置しながらエースはその真意について明かす。

「復讐があんたの生きる目的だったとしてもそれを否定する気はない。たが、娘さんはあんたを人殺しにするために生まれてきたんじゃないだろう」

エースは安達を"人殺し"にしてしまわぬように、彼に襲撃された後青年らの命を救い、他でもない安達自身に延命だけではなくもっと本来的な"生き直す"機会を与えたのだ。

そして、人の痛みを全く感じることができない青年3人らにも本当の意味での"更生期間"を課したのだろう。無残にも彼らに暴行され生き埋めにされ息絶えるその1分1秒前まで恐怖と痛みと屈辱と絶望に打ちひしがれたであろう未来の気持ちを少しでも追体験させ、自分の罪を悔い改める時間を持たせようとしたのかもしれない。

姿形は人間でありながら、人として最も大切な他人の痛みや命の尊厳に想いを巡らせる想像力がまるで欠如してしまっている彼らに、それがどれくらい有効なのかはわからないが、少なくともあそこで息の根を止められるよりは死ぬまでずっと自身の罪から逃れられず苦しむことになるのは確かだろう。

このエースの采配があまりに鮮やかだった今話。ラストには謎のドライバーとして鈴木亮平が登場するサプライズまで用意されていた。あのたった数分の薄暗がりの中での登場でも、視聴者に強烈なインパクトを残し、ただ者ではないと予感させる鈴木の佇まいと存在感が遺憾なく発揮されていた。今後、どのように彼が"仮面ドクターズ"に関わってくるのか、その正体も非常に気になるところだ。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第4話(1月29日[日]放送)あらすじ】

天才彫刻家の洋子(美村里江)は、脳腫瘍の摘出手術は不可能であると医師から告げられ、残された時間で最期の最高傑作を作ろうと決意する。
そこにジョーカー(藤原竜也)が現れ、6億円で腫瘍の摘出手術をしてもらう契約を結ぶ。
ところが、洋子のMRI画像を確認したエース(妻夫木聡)は、彼女が腫瘍が原因で発症した後天性サヴァン症候群であることを見抜く。
腫瘍を取り除けば命は助かるが、彫刻家としての才能は失われてしまう。
命か、才能か・・・。
唯一無二の才能を持った洋子の迷いを、クイーン(松下奈緒)は自分のことのように受け止めていて・・・。

◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。