ただいないことと、そこにいるとわかっているのにいないことでは、どちらがより辛いのだろうか。

『100万回 言えばよかった』第2話は、悠依(井上真央)の喪失の痛みに、観ている方まで心が切り刻まれるような回だった。

いるとわかっているのに見えない寂しさが、悠依を追いつめていく

最初は、見えなくても、そこにいてくれることがうれしかった。キャンドルの火がほんの少し揺れただけで、直木(佐藤健)の存在を感じて喜んでいた悠依。多すぎる独り言も、悠依にとってはその場にいるだろう直木に話しかけているつもりだったのかもしれない。

実際、本当に直木が見えているみたいだった。独り言のはずの会話はなぜか通じているように聞こえるし、ファミレスで直木の分だけスペースを空けて座り直したときは、譲(松山ケンイチ)じゃないけど、悠依には直木が見えていて、人間と幽霊じゃない、ただの普通のカップルみたいだった。

でも、悠依と直木は目が合わない。そこにいるとわかっていても、譲みたいにちゃんと見えるわけじゃないから、直木のいる方向を向いても、視線が微妙に重ならない。会話だって、悠依の声が聞こえる直木からしたら、ちゃんとしたやりとりになっているようでも、直木の声が聞こえない悠依からすれば、やっぱりただの独り言でしかないのだ。

寂しさは少しずつ降り積もっていく。いつまでもキャンドルの火が揺れただけで喜べるほど無邪気ではいられない。譲がいなければ話ができないし、夜道を振り向いても、そこには静寂が広がるだけ。悠依にとっては、直木の不在を確かめ続ける時間でしかなかった。

それが、直木の特徴によく似た遺体が見つかったという警察の報せを受けて爆発した。やっぱり直木は死んでいるのかもしれない。認めたくなくて目を逸らし続けていた事実に直面し、その恐怖に、その不安に、どんどん心が絶望という崖の果てに追いつめられていく。

譲と電話をしているとき、窓の向こうに見えた『100万回生きたねこ』は、まるで今の悠依にとっての直木みたいだった。超えることのできない隔たりに阻まれて、もうふれることさえできない。あの過呼吸になっていく井上真央の演技があまりにもリアルで、こちらまで息が苦しくなる。

井上真央の涙は、こらえきれずにこぼれ落ちたものだから美しい。泣きたくなんかないのに、気持ちが溢れて止まらない。その結果の涙から、胸を掴まれる。初回に続き、井上真央の涙にもらい泣きしてしまいそうな第2話だった。

ゆるかわマスコットみたいな松山ケンイチに癒される

だけど、辛いのは直木も同じだろう。診察を終えた悠依を、譲と迎えにいく。本当ならいちばんに抱きしめてやりたいはずだ。だけど、もう自分の腕は悠依を抱きしめることさえできない。代わりに、譲がいたわるように悠依の背中に手を当てる。ただ後ろをついていくことしかできない直木の無力感を思うとやりきれない。

決定的だったのは、悠依の涙を受け止めることさえできなかった瞬間だ。そっと伸ばした指は悠依の頬を通り過ぎるだけ。愛しい人の涙を拭うことさえできないなんて、どんな気持ちだろうか。ただ空を切る自分の手を見つめる佐藤健の、悲しいでも苦しいでもない、胸が空っぽになったようながらんどうの瞳が、直木の痛みを映し出す。

そして、そんな切ない展開の緩和剤のような譲の存在がすごくいい。本作の松山ケンイチは、なんとも絶妙な味わいだ。悠依に部屋に誘われて「ジャッジできるの、僕だけなんですが」と返すとぼけた感じとか、直木に睨みつけられて「警察官ですから」と口だけニコッと笑うところとか、いい意味で警察官に見えない、ゆるかわマスコットみたいな雰囲気に癒される。

特に泣いている悠依にティッシュを渡したあと、フードをかぶって丸まるところなんて愛らしくてたまらない。まだそんなに深い付き合いではないからこそ、遠慮もあるし配慮もある。ごく私的な感情を見てしまった申し訳なさと、自分のことは気にしなくていいから思い切り泣いたらいいという気遣いが、あのダンゴムシみたいな譲から伝わってきて、譲の好感度が日本の電気代くらい高騰している。

はたしてこの3人はこれからどんな関係になっていくのだろうか。今のところ譲は、悠依と直木の橋渡しみたいな存在だ。譲は悠依に特別な感情を抱いていないし、悠依も直木で頭がいっぱいだ。

だけど、これから直木の身代わり的な役目を果たしていく中で、そこに今とは違う感情が生まれてくることもあるのだろうか。悠依が譲に疑似的な恋愛感情を抱いたり、直木の想いを代弁していく中でその恋心まで譲に乗り移ってしまうこともあるのかもしれない。

譲にはこのままゆるかわマスコットでいてほしい反面、そんな身悶えするような三角関係を見てみたい気持ちもある。悠依、直木、譲の関係性の変化に今後も注目だ。

消えた莉桜は一体何者なのか

注目といえば、直木の死の真相と、西山町女性絞殺事件の関わりも少しずつ見えてきた。殺された涼香(近藤千尋)は、悠依と直木と共に里親の家で暮らしていた莉桜(高校時代:安斉星来)の中学時代の友人で、莉桜の足取りを追って、直木は涼香のマンションを訪ねたらしい。だが、涼香は不在で、直木の推理では自分が訪ねたときにはもう殺されていたのではないかと言う。

しかも、里親の家から突然姿を消し、以来消息を絶っていた莉桜の荷物の中には500万円もの大金があり、一体なぜ10代だった莉桜がそんな大金を持っていたのか謎が深まる。買い物依存症だった涼香が、殺される1ヶ月前に使った300万円の出所も不明だ。今後はこれらのピースを埋めながら、真相というパズルを完成させる展開になるだろう。

また、医師の夏英(シム・ウンギョン)が譲を見て、「嘘でしょ」と動揺していたのも気になる。夏英は譲のことを知っているのだろうか。譲がそこにいることがどうして「嘘でしょ」なのか。もしかしたら譲はただ人のいい刑事というだけではないのかもしれない。

いずれにせよ、ラブストーリーとしてもミステリーとしても見どころ十分。期待をさらに大きく膨らませながら、『100万回 言えばよかった』は第3話へと突入していく。

(文:横川良明/イラスト:月野くみ)

【第3話(1月27日[金]放送)あらすじ】

尾崎莉桜が事件に関わっているかもしれないと考えた直木(佐藤健)と譲(松山ケンイチ)は、莉桜に会おうとする悠依(井上真央)を心配し、急いで悠依のもとに駆けつける。

その後、譲は悠依に直木が殺人事件に関与している可能性があると説明する。しかし悠依は、直木の全てを知ってはいないが決して人を傷つけるような人じゃないと確信しており、真相を突き止めたいと訴える。

事件解決に向けて捜査が進む中、譲は田島(少路勇介)と一緒に直木の父親を訪ねる。そこで直木の過去を聞いた譲は、田島に直木のことを打ち明けようと決意。そんな中、直木の母親が悠依に会いたいと言い出し・・・。

◆放送情報
『100万回 言えばよかった』
毎週金曜深22:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。