伝説の深夜番組『ギルガメッシュないと』(1991~98年・テレビ東京)から着想を得たドラマ『ギルガメッシュFIGHT』が、動画配信サービス「Paravi」にて独占配信中。本作は、90年代に「深夜お色気番組」の代名詞ともいえる番組となった『ギルガメッシュないと』のスタッフたちの実話から着想を得た、番組制作陣視点のフィクションドラマ。

そんな本作で、大東駿介は深夜番組『ギルガメッシュFIGHT』の演出を手掛けるディレクター・加藤竜也(藤原季節)を発掘した番組プロデューサー・栗田淳一を演じる。彼こそが、"カメラは低く、志は高く"というスローガンを掲げた張本人でもある。大東は本作の記者会見時に、パンティーをぶちまけるなど、ど派手な演出で登場。話を聞くと、スタッフから"魔王"というあだ名がつくほどの剛腕の反面、面倒見の良さもある栗田そのもののような大東の佇まいが見えてきた。

――90年代が舞台の作品ですが、当時の現場の空気を感じてみていかがでしたか?

もともと80年代後半~90年代に対する憧れみたいなものがあったんです。先輩方にその時のお話を伺うと、本当におとぎ話みたいな熱量で、天井がぶっ壊れてる感覚というか・・・。(『ギルガメッシュないと』出演者の)イジリー岡田さんに当時のお話を伺っていくと、どんどん自分がこの作品に入る熱量が上がっていきました。自分が持っているあの時代に対する憧れと、この役だから生まれる熱量みたいなものを、ぶつけられたかなと思います。楽しかったですね。

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――インパクトの強い役どころであるプロデューサー・栗田を演じる時に意識したことは?

実在の方がモチーフになっているので、当時、その方の周りにいらっしゃった方のお話を伺ったりしました。当時のお話を聞いていると、どんどん熱量を発散してぶつけていくような、ちゃんとアクションして存在証明をしている印象を受けたので、栗田を演じる際は、まさにそれを体現できたらいいなと思って、現場に入る前から自分のエンジンをふかしていきましたね。1回、エンジンが温まりすぎて、ちょっと煙出たぐらいの感じで現場に行くようにしていました(笑)。

――会見では、現場に入る前に、車の中で大声出して声を枯らして行ったというお話もされていましたね。

そうですね。栗田のモチーフになった方は、どこにいても気付くぐらい声が大きかったと伺ったので、僕も声は大きくしていました。きっとエネルギッシュな人だったんだろうなと思って、とにかく、思いのままにエネルギーを発散していこうという気持ちはありましたね。でも、やっぱりプロデューサーという立場もあり、番組のために、スタッフのために、視聴率のために・・・という、そうした包容力も意識しながら演じていました。

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――番組ディレクター・加藤役の藤原季節さんは、大東さんとご一緒するのが楽しみだったとおっしゃっていました。

最初、この作品のお話をいただいた時に「面白そうやな」と思ったのもありますが、出演の一番の決め手は"藤原季節初主演"ということでした。以前、映画で共演した際は(共演の)シーンがなかったのですが、試写を見て「なんや、この子!」って、すごいエネルギーを持った人が出てきたという印象だったんです。いつかご一緒したいなと思っていたら、このお話をいただいて。

――そうなんですね! 藤原さんと共演してみていかがでしたか? 

すごく面白かったですよ。「あ、似たタイプの人間やな」って感じました。

――どんなところがご自身と似ていたんですか?

現場での立ち振る舞いとか、不器用さも含めて、人間味があるところが僕はすごく共感できますね。だから、ドラマの関係性とは違いますけど、季節くんをうまくサポートできたらいいなと思ってやっていましたね。普段はあんまり見えないのですが、彼の中に内に秘めたエネルギーが常にあって、その炎がふとボンって燃え上がる瞬間がある。そういう時に「人が火傷せえへんようにコントロールしなあかんな」みたいな。そういうところも自分を見ているようですごく面白かったですね。

――そんな藤原さん演じるディレクター・加藤とプロデューサー・栗田の関係性も本作の見どころですね。

加藤と栗田は全く混じり合わない傾向の違う人間ですが、一つの目的を持って団結するというのが、男っぽくて面白かったですね。実際、加藤のモチーフになった方は、『ギルガメ』に3ヵ月しかおらず、大きく『ギルガメ』を変えて、そして去っていったと聞きました。ある志を持った男たちが出会って、一瞬だけ混じり合った瞬間・・・というのがこのドラマだと思うんです。それぞれ自分の信念をもって仕事に打ち込んでいたら、どれだけ分かり合えていても、わずかなズレで離れていくのは、仕方ない話だと思うんですよね。僕はそういうところに生きざまを感じるし、魅力的だなと思いました。そんなところにすごくグッときましたし、僕もそういうつもりで演じました。

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――改めてこの作品を通して感じたことは?

「やっぱり、エロってすごく文化を発展させんねんな、エロのエネルギーってすごいな」って感じましたね(笑)。撮影していても、番組のスタジオ収録のシーンよりも会議室でアイデアを出し合っているときの熱量がすごくて。実際の『ギルガメッシュないと』もそうだったと伺いましたが、人って脳の中で浮かんだものをアウトプットすること、何かを外に出すっていうことに興奮するということをすごく感じました。アイデアもしかり、とにかく口に出して表に出す、表に出したものを形にする、それをより良いものにしていくということが、全て快感なんやなって感じました。

それとやっぱり、失敗を恐れず発信することの大切さを感じました。発信することってリスクを伴うものですし、人って失敗するもんだと思いますが、みんながそれに対して怖がりすぎていると感じるんです。それで、結局みんなリスクを選ばなくなってくるし、それはあんまり生産性がないというか・・・。だから、この現場は気持ちよくて、清々しかった。大きく振りかぶって、当たりゃでかいし、外れれば本当に傾くぐらいの失敗もある。でも、自分にそれぐらい思いっきり振ったということに対して、"生きている実感"みたいなものを感じました。そんなふうに、精一杯生きている人物たちが描かれている清々しいドラマです。

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――振り切ったからこそ見えてくるものがありますよね。

そうですね。今の時代、本当にそれができたらいいなって感じるところです。「本当はこうした方がいいんじゃないかな?」「本当はこうしたいのになぁ」とか、きっとそれぞれの事情を気にして、ベストが出ない瞬間があると思います。

でも今回の現場に関しては、そういう空気を察したら僕はもう全部言うようにしていました。とにかく意見を出し合ってセッションして、お互いのやりたいことを話し合ってぶつけ合える環境を作るというのはすごく意識しました。自分も含めて、言いたいことはたくさん言ったし、おかげで結束ができたと思います。

それと、今回はテレビマンをモチーフにした作品で、劇中の人間がものすごいエネルギッシュに作っているのに、同じ映像作品を作る僕らが内向的にやるのは変な話だな、と。本番以外でも劇中の熱量を持って現場にいたいなと、いつも思ってましたね。

――ちなみに、普段はどうやってご自身の熱量の上げているんですか?

僕は割と、自分を思った通りに動かせるんですよね(笑)。自分は「めっちゃ簡単なやつや」と思っているから、自分を盛り上げることも抑えることもできる。例えば、今回は現場で年長者だったので、もうちょっと現場の熱量上げたいなと思ったら、自分が率先してやっていたのですが、それを人に対してできるんだから、自分にもできるだろうと思っています。

あとは、物事を決めつけない、難しく考えすぎないということ。物事をシンプルに捉えようということも、この作品を通じて改めて思いました。「あー、俺は今テンションが下がっていて、どうやっても上げられへん」と決めつけない。すぐに上げられると思うと、本当に何でもコントロールできるなと思います。

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◆放送情報
Paraviオリジナルドラマ『ギルガメッシュFIGHT』(全5話)
動画配信サービス「Paravi」にて毎週土曜深夜1:15から新エピソードを配信中。
第1話は無料配信。