「あんたの命を救ったとして、生き延びる価値はあるのか?」

日曜劇場『Get Ready!』(TBS系)に登場する闇医者集団"仮面ドクターズ"を率いる孤高の天才外科医・波佐間永介(通称:エース/妻夫木聡)がオペを執刀するかどうかの判断基準はこの一点に尽きる。

そして第1話早々に、エースは「お前には生き延びる価値がない」と宣告する。相手は彼が"この世で最も醜い欲"だと言い捨てた"権力欲"にすがる副総理の羽場(伊武雅刀)だ。我々は初っ端からエースの中に貫かれるこの独自ルールやポリシーのブレなさ、一切忖度のない徹底ぶりをまざまざと見せつけられることになる。

しかし高度な医療機関さえもお手上げの患者を自分だけが救えてしまうというのも考えてみれば恐ろしいことで、もはや神の領域にも思える。幸か不幸かそんな他人の命の選別ができてしまえる力を授けられてしまったエースには彼なりの揺るがない判断基準が必要だったのだろう。相棒で国際弁護士の資格を持つ交渉人の「ジョーカー」下山田譲(藤原竜也)が何とか高額報酬の依頼を患者との間でまとめ上げても、エースの最終ジャッジで全てが決まり覆る。

残り半年と余命宣告を受けた資産運用会社「渋谷キャピタルパートナーズ」のCEO渋谷隆治(池松壮亮)を前にしても、エースのこの矜持が発揮されていた。渋谷はアジア圏を中心としたビジネスで大成功を収め、若くして巨万の富を築いた成功者。慈善事業家としても名を馳せ、私財1億円を投じて生活困窮者に無償で住まいを提供するNPO法人を立ち上げたりもしている。しかし、裏では技術と実績のある中小企業に強引なM &Aを持ちかけ海外企業への売却を仲介し、貴重な技術力流出を招き、残された従業員を離散に追いやっていた。その結果、彼は54もの事業所を廃業に追いやっていたのだ。そんな彼をエースは「何でも金に換えるハゲタカファンド」と切り捨て、報酬800億円のオペの依頼をあっけなく断る。

他人が築き上げてきたものを一瞬にして奪い去り得たお金も地位も名誉も"死"を前に何の役にも立たないどころか虚しさが募るばかり。「死を突きつけられたら今持ってるもんに何の価値もない」と気づいた渋谷は、自身に残された時間をどう過ごしたらいいのかも皆目見当がつかない。

ただそんな彼を救ったのが、創業時から共に奮闘してきたCOO・才津明(入江甚儀)だった。金融の力で日本の宝である技術力を守りたいという創業当時の渋谷の信念を思い起こさせ、残された時間で渋谷が情熱を注ぐべきことが自ずと定まる。"いろんなものを奪って得た罪深い金"を全てここぞという投資先を見つけて投資し、その技術力を支えたいと、渋谷はまさに命がけの最期のライフワークを得たのだ。

車椅子に乗りながら投資先を見つけるべく奔走する渋谷の"人生の生き直し"をこっそり見守り続けていたエースは倒れてしまった彼の手術を執刀し、その命を救うことを選んだ。

エースが普段パティシエとして働くパティスリー「カーサブランシェ」の地下では、真っ黒な手術着に身を包んだ彼と凄腕オペナース・依田沙姫(通称:クイーン/松下奈緒)がやけにスタイリッシュでやはり真っ黒な手術室で息の合った見事な手捌きでオペを繰り広げる。「余命宣告を受けても変わらない」と切り捨てた副総理の羽場の時とは違って、渋谷の余生の過ごし方や自身の罪の悔い改め方を見て恩情をかけたエース。

ただ、ジョーカーの言う「罪を裁くのは医者じゃない」「患者を見殺しにするお前はどうなんだ」という問いかけについてエースがどう折り合いをつけているのかも気になるところだ。

なぜエースが"仮面ドクターズ"を始めたのか、彼の過去が非常に気になる。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)

【第2話(1月15[日]放送)あらすじ】

ジョーカー(藤原竜也)と深く関わる、千秋(市川由衣)が、一人息子(相澤壮太)を城和大学附属小学校に裏口入学させるため、2億円を用意して欲しいとジョーカーのもとを訪ねて来る。

その城和大学は近年、坊城理事長(柄本明)による裏口寄付金プロジェクトで莫大な金を得ていた。
金の亡者となった坊城理事長は、副理事長で息子の康之(三浦貴大)にその座を降ろされた上、ガンで余命数か月と宣告される。

しかし、交渉のため現れた闇医者チームのジョーカーに、自分が死ぬとしても2億円以上は払えないと断る。

「金のない"理想"は無意味」と語る坊城理事長に隠された秘密とは?そしてその言葉に引っかかったエース(妻夫木聡)は、果たして坊城の命を救うのか!?

◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。