おもてたんとちがああああう!!!!!!
予想外すぎる展開に、深夜23時にもかかわらず叫び声が出た『君の花になる』第9話。弾(高橋文哉)から出た「解散」の言葉。そこに行き着くまでの心の揺れに想いを馳せてみたいと思います。
頑なに謝らない弾が「ごめん」と言うまでのお話だと思っていた・・・
「もし気持ちが揺らぎそうになったら思い出して。この場所を彼らから奪っていいのか」
寮母を辞めることを申し出たあす花(本田翼)に、花巻社長(夏木マリ)はそう伝えた。
難しいところではありますが、アイドルって結局個人の意志だけで成立しているものじゃないんですよね。売り出してくれた事務所の面々、ライブや番組を支えてくれるスタッフ、そして応援してくれるファンの人たち。それらのすべてがひとつの集合体となって、初めてアイドルは完成する。
だから、時に個を犠牲にしなくちゃいけないことがあるのも事実で。ここで自分たちの活動が立ち行かなくなったら、いろんな人の生活に支障が出る。事務所の売上にも関わる。だから、アイドルをやっている人たちは時にいろんなことを我慢したり無理したりしなくちゃいけない。
すごく横暴な言い方になりますが、そうした犠牲もあるからこそ、アイドルは美しく輝くのだと思う。永久ではないその時間に人は尊さを見出すのだと思う。
でも、弾にはそれがわからない。釈明配信を求められた弾は「こんな小さな幸せも許されないのかよ」と謝罪を拒否する。その結果、弾は活動休止に。
翌朝、6人が生番組で頭を下げる。もちろんそれはよろしくお願いしますというお辞儀であって、謝罪ではない。でも、頭を下げる6人のそれはどうしたって謝罪のニュアンスが含まれてしまうわけで。当事者の弾は謝らないのに、なぜ他の6人が謝らなければいけないのか。今回のゴールは、誰にも頭を下げたくない弾が、8LOOM存続のために自分の代わりに味わう必要のない苦渋を舐めたメンバーに頭を下げることなんだ、と思った。
そしてその予想は半分は当たった。
ずぶ濡れになった弾はメンバーの前で「みんな、ごめん」と謝る。エースである自分がしっかりしていなかったせいで、みんな言いたいことが言えなかった。みんながいることを当たり前のように思っていた。そう泣きながら話す弾を見て、やっと弾も少し周りが見られるようになったんだと思った。ここから8LOOMはまたひとつになるんだと思った。
予想外すぎる展開に、素で「待って」って言うてもた
でも、そこから予想と全然違う方向へ。「8LOOMのせいでみんながやりたいことあきらめてほしくない」「俺は8LOOMがみんなを縛るものになってほしくないんだよ」と吐き出すように訴え、弾は「俺たち、解散しよう」と宣言する。
待って。
オタクのキラーワード「待って」ですが、こんなにも心から「待って」と言う日が来るとは夢にも思わなかった。
ちゃうちゃうちゃうちゃう、ちゃいますやん。そりゃ確かに、みんなそれぞれやりたいことはある。なる(宮世琉弥)と栄治(八村倫太郎)は留学や進学の夢が、竜星(森愁斗)と宝(山下幸輝)にはダンスで世界に挑戦する夢が、巧(NOA)にはソロで活躍する夢が、胸の中で疼いている。でもそれは8LOOMという場所があるから生まれるもので、8LOOMを壊してまでやりたいことじゃない。
今さっき言うてたでしょ、「ここ以外に俺らの居場所なんてねえから」って! 「僕は8LOOMがいなきゃこんな自分に胸張ってない。こんな自分を好きになってない」って! 「帰る場所があるから頑張れる」って! 「無茶したり挑戦したりもできるのは、ここがあるからだよ」って! 頼むから話を聞いて!!(号泣)
ここでもう一度犠牲の話になりますが、別にオタクも推しに何かを犠牲にしてまでアイドルを続けろと言っているわけではないのです。いろいろとやりたいことがあるのは、アイドルでも市井の人でもみんな一緒。その中で、人はそれぞれ優先順位をつけて、道を選んでいく。
だからこそ、たくさんの選択肢がある中で、それでもアイドルとしていることを、グループとしての活動を優先順位のいちばん上に持ってきてくれる。その意志に、その愛に打たれるから、こちらも全身全霊を込めて応援するわけで。それは犠牲であって犠牲ではないんですよ。何も、あきらめてなんかいない。
少なくともなるたち6人は、自分なりに整理をつけて、今、いちばん大事にしたいのは8LOOMであるとはっきり答えを出したのに、まさかそれを覆すのが弾だとは思わなかった。そしてその選択に、悲しむファンの存在がほんの一瞬でも浮かんでいないことが、めちゃくちゃ残酷だなと思った。
弾は推しにはしたくないけど、彼氏にするなら100点の男
これはもう身も蓋もない話ですが、弾はね、受けるオーディションを間違えた感がある。ものすごくお顔はアイドル向きだけど、性格が絶望的にアイドルに向いていない。考え方がソロアーティストなのよ。
弾の性格自体を否定する気はない。そういう考え方の人がいてもいい。けれど、アイドルとしてどうあるべきかについては最後の最後まで1ミリも考えが及ばなかったんだな、というのが第9話の結論です。
「8LOOMはどうでもいいの?」となるが問うたときも、「俺は間違ったことしてねえし、間違ったことにはしたくねえんだよ」と自分の考えを曲げなかった。なぜなるがあす花から預かったボイスレコーダーを隠していたのか、その理由を聞いてもなおあす花のもとへ行こうとした。香坂(内田有紀)が弾のことを想ってあす花がいなくなったと伝えても、結局はあす花のもとへ飛び出してしまった。
今、弾がすべきことはメンバーと話し合うことだと思うのですが、弾は頑なにメンバーと向き合わない。そんな弾が最終的にあす花に会わずに引き下がったのは、あす花のメッセージを聞いたからで。一緒にやってきたメンバーの話も、自分をここまで引き上げてくれたマネージャーの話も聞かないけど、好きな人の話は聞く。
弾、さてはめちゃくちゃ恋愛体質だな...。カレピができたらバイトをサボっちゃう地雷系女子と精神構造はほぼ同一。そう考えたら、いろんなことに合点がいきました。むしろここまで来ると、それくらい人を好きになれる弾のことがすごいと思いはじめてきた。
佐神弾、絶対に推しにはしたくないけど、彼氏にするなら100点の男。彼氏だと思えば、配信1位になったら矢も盾もたまらず会いにきてくれたり、ライブ中に自分だけにファンサをくれたり、最高の男じゃねえか。
が、残念ながらアイドルとして出会った以上、推しとして見てしまうのです。佐神弾、できるなら違う世界線で出会いたかった・・・。
正直、ここからの展開が予想がつかない。僕の最初の予想では、一度はあす花との恋をあきらめ、8LOOMとしての活動に専念した弾が、数年後、名実ともにトップアイドルとなり、ファンの祝福を受けた上で堂々とあす花を迎えに行く。そういう結末なのかなと思い描いていました。
でも、解散となると、ますますあす花と弾のハッピーエンドが描きにくくなったのでは・・・? だって、8LOOMが解散したあとに、あす花と弾が結ばれた姿を描かれた日にはオタク発狂では? TBSに四十七士が討ち入りするレベルでは??
あえて茨の道を突き進む『君の花になる』。ここまで予想を覆されたら、最後にこのドラマがどんな決着を示すのか俄然興味が湧いてきました。泣いても笑っても最終回を残すのみ。8LOOMは本当に解散するのか? それとも一発逆転の新しい道があるのか? 心臓が今からすでに痛いけど、みんなの最後の姿を目ん玉全開にして見守ります!
(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)
【最終話(12月20日[火]放送)あらすじ】
フリースクールで寮母兼教師として働き、忙しい毎日を送るあす花(本田翼)。
一方それぞれの新たな挑戦のために解散することを決めた8LOOMは、弾(高橋文哉)も含めた7人全員で、最初で最後のライブツアーを行い、その最終日に解散を発表することを決断する。
そして弾は、8LOOMのラストにふさわしい新曲作りに取り掛かる。
しかしなかなか納得のいく曲ができず、苦悩していた。
そんな中突然、花巻社長(夏木マリ)があす花のもとを訪れる。
8LOOMの解散の事実を聞かされ困惑するあす花を前に花巻社長は、自身が8LOOMと出会った時のことを語り始めて・・・。
それぞれの夢へ向け、バラバラに進むことを決意したあす花と8LOOMのメンバーたち。彼らが最後に咲かせる未来の形とは?
◆放送情報
『君の花になる』
毎週火曜22:00よりTBS系で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」で配信。
『8LOOM ROOM~君花アフターパーティー!』も配信中。
- 1