"クロサギ "こと黒崎(平野紫耀/King & Prince)がひまわり銀行の執行役員・宝条(佐々木蔵之介)を外堀から崩すべく"アカサギ"に扮した『クロサギ 』(TBS系)第8話。今回のターゲットは、宝条の裏金作りのための資金源である"宝条帝国"の一員―かつて彼の部下だった元行員で、今は医療法人の理事長を務める宇佐美(津田健次郎)だ。

宇佐美は赤字だった病院の経営を立て直した救世主として持て囃されていたが、実際には生活困窮者に生活保護を受けさせてありもしない病気をでっち上げ入院させ保険点数を水増しし医療費を騙し取る詐欺を働いていた。まさに助教・鷹宮(時任勇気)が講義の中で扱っていた"貧困ビジネス"そのものだ。この宇佐美も元銀行員で、詐欺を働いている舞台が病院で、患者相手なのだから本当に世も末だ。

宇佐美役を演じる津田と言えば、『最愛』(TBS系)での武骨で人情味溢れる山尾刑事役の印象が強かったが、今作のようにその正反対にいる小賢しく人を欺く側もとても自然でまた新たな一面が見られた。同じく、この宇佐美の妻・怜華(高田里穂)に医療コンサル会社の社長を称し"アカサギ"として接近した黒崎のホスト風のビジュアルや上手い具合に隙を見せながら相手の心を掌握していく様はまた格別で、平野のこれまでにない姿も差し込まれた。

今話で、黒崎は確実に桂木(三浦友和)にも宝条本人にも不審な動きと自身の思惑を察知されてしまう。宝条潰しのための詐欺から一旦離れさせようと敢えて桂木は遠方の北海道のシロサギを紹介するも、警察にシロサギ情報をこっそり渡しこの案件から勝手に手を引く黒崎。桂木には北海道にいる設定にしつつ、そのアリバイ工作はかなり初歩的な小手先のテクニックで黒崎自身もそんなことで桂木を騙し通せるなど思っていないだろう。

そして、恐れていた事態がついに起きる。宝条の甥でもある鷹宮が黒崎の正体に気づき、宝条にその情報を差し出したのだ。宝条が黒崎を消そうとしていることを示唆するとそれに賛成し、黒崎との電話の後にも「めんどくせぇ。そろそろ終わりかな」と漏らしていた桂木の真意は測りかねる。

そんな中、黒崎が脱税をしているとして所得税違反容疑で逮捕される。しかも、初めて自宅に招き入れた氷柱(黒島結菜)の前で。

「別の世界で生きていてもあなたが幸せならそれでいいの。でももしそうじゃないなら、ごめん、やっぱり諦めたくないの。あなたをその違う世界に連れて行ったのは、きっとあなたを救えなかったこっち側の人間だから」と言う氷柱に、「もしお前が本当にそう思ってるなら・・・」と黒崎が何か言いかけたまさにそのタイミングで。この後、黒崎が続けようとしたことは何だったのか。彼は何を氷柱に託そうとしたのだろうか。

この逮捕はきっと宝条の差し金に違いないだろうが、彼が新党立ち上げを目論む政治家・蒲生紗千子(秋山菜津子)に接近しながら企てている銀行統合計画の全貌も気になるところだ。いよいよクライマックスに差し掛かり役者が全て出揃った本作、最終回まで一緒に心揺さぶられ続けたい。

(文:佳香(かこ)/イラスト:月野くみ)

【第9話(12月16「日[金]放送)あらすじ】

警察に逮捕された黒崎(平野紫耀)は、刑事たちからの取り調べで確固たる証拠を突きつけられてしまう。それは、明らかにひまわり銀行内部の者でないと用意できないものだった。

その後、桂木(三浦友和)のところへと向かった黒崎は、今回の一件で桂木の元にいる限り宝条(佐々木蔵之介)を喰うことはできないと身をもって知ることになる。黒崎は、桂木に決別を告げ、それを桂木も受け止める。

「喰い合いだな」

そして黒崎は、氷柱(黒島結菜)に旅立つことを告げ、愛猫のクロを預けて行方をくらましてしまう。

黒崎が行方不明になってから2週間が過ぎ、宝条は民政党議員・蒲生紗千子(秋山菜津子)に会っていた。蒲生は、これが「最後のチャンス」と新党立ち上げを画策。その資金として宝条に100億円を準備するよう命じる。そして、とある野望を抱く宝条にとっても、その資金提供はラストチャンスとなる。だが、それは黒崎にとっても同じことで、すべてを捨てた黒崎は宝条を倒すため奮闘するのだが・・・。

◆放送情報
『クロサギ』
毎週金曜深22:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。