山﨑賢人主演の日曜劇場「アトムの童(こ)」(TBS系)の第8話が12月4日に放送された。ゲーム業界を舞台に、若き天才ゲーム開発者・安積那由他(山﨑)が大資本の企業に立ち向かい、周囲の人たちとの交流を経て成長していくストーリー。 

第8話では「宮沢ファミリーオフィス」が「SAGAS」を買収しようとする中、アトムの技術を守るため、隼人(松下洸平)と共にシアトルに旅立つ予定だった那由他はそれを中止し、隼人と決別。宿敵・興津(オダギリジョー)のもとでゲーム開発協力がスタート。興津はかつて那由他&隼人によるユニット「ジョン・ドゥ」からゲームを奪った宿敵だが、アトムの技術「アトムロイド」を市場開放し、世界に流出させようとする宮沢ファミリーオフィスから守るという同じ目的で手を組んだのだった。

そんな中、SAGASの命運を握る人物として登場したのが、SAGASの株を8%保有している大株主・伊原総一郎(山崎努)だ。そんな伊原の委任状をもらうべく、興津は、伊原に接近するも肩透かしを食らう。興津より先に来ていた小山田(皆川猿時)の前で背中をかきながら「あなた、あれ、ガリバー関係の人?」とわけのわからないことを言う伊原の貫禄が凄まじい。

そんな伊原が目をかけているのは、実は隼人だった。宮沢ファミリーオフィスの宮沢沙織(麻生祐未)は、慈善事業に熱心な伊原が隼人の作るシリアスゲームに惚れ込んでいることを知り、交渉の駒として隼人を伊原に差し向けていた。隼人は宿敵・SAGASがある限り、過去に縛られ続けるため、自分と那由他が自由にゲームを作るためにSAGASを終わりにすることを目的とし、シアトル行きを取りやめそれを承諾していたのだ。敵側についた松下洸平は、目つきも佇まいも低温&シャープになり、これはこれで女性視聴者が盛り上がりそうだ。

その一方、怖さと凄みが画面からあふれ出る山崎努と、その痒い背中にニタリニタリと軟膏を塗りながら丸め込もうとする麻生祐未の怪しさ満点の画が今回の見どころの一つだろう。

その頃、隼人と決別した那由他はアイデアに行き詰っており、興津に「朝までに打開策を」「寝ずに考えろ」と尻を叩かれる。さらに、興津と那由他は一緒に「ぷよぷよ」をやり、口ゲンカし、ほぼ友達モード。そして、ジョン・ドゥからゲームを奪ったのも、嫌われ役をやっているのも、日本の中小企業の優れた技術を守るためだと明かす。いきなりの綺麗ごとで、さすがにそれは無理がある気がするが・・・。

ともあれ興津を悪い奴じゃないと判断した那由他は、SAGASのゲーム作りに協力してほしいと繁雄(風間杜夫)らアトムの仲間たちに頼みに行くが、断られてしまう。しかし、娘で現社長の海(岸井ゆきの)にこのままでいいのかと問われた繁雄は、SAGASに乗り込み、「見てられない!」と手を貸し、アトム一同が協力することに。繁雄の語る「キャラクターの動きは、リアルよりデフォルメ」「リアルを追求しすぎてワクワクをなくしている」には説得力があり、その部分に尺をとってもっと掘り下げてほしい気もするが、「ゲーム」の描写に振り切れないのは、日曜劇場という枠の難しさだろうか。

アトムの協力を得てゲームは順調に進んだものの、宮沢ファミリーオフィスは伊原の委任状を得たことで、SAGASはいよいよ背水の陣に。株主総会出席者ほぼ全員の票が得られないと勝ち目がない状況下で、さらに絶体絶命のピンチが訪れる。

なんと株主総会開催直前に興津が顧客データ不正使用の疑いで、警察に任意同行を求められたのだ。議長を務める予定だった興津が欠席となり、株主総会は大荒れ。そこで沙織が興津と現役員全員の解任を提案、すぐに決議をとることを迫る。

そんな中、那由他はマイクを握るが・・・。

SNSでは、山﨑賢人&オダギリジョーの株主総会ルックに盛り上がる女性視聴者たちの声が続出していたが、宮沢沙織が登場してからというもの、急に小物感漂う興津が切ない。対伊原では沙織に遅れをとるし、那由他とぷよぷよで遊んで友達のようになっているし、綺麗ごとを言うし、那由他の尻を叩いたり、丸投げしたりするばかり。興津の冴えた部分もそろそろ見たいところだ。

(文:田幸和歌子/イラスト:まつもとりえこ)

【最終話(12月11日[日]放送)あらすじ】

興津(オダギリジョー)が警察に連行され、株主総会は大混乱に。代表不在で有力な委任状も奪われ、勝つ見込みがない。劣勢を強いられる中、壇上に上がる那由他(山﨑賢人)だが――。

これまでに様々な局面で仲間と共に闘ってきた那由他。ゲーム業界の未来をかけた大勝負はついにラストステージへ。

軍配はどちらに上がるか――

◆放送情報
日曜劇場『アトムの童(こ)』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。