山﨑賢人主演の日曜劇場『アトムの童(こ)』(TBS系)の第3話が10月30日に放送された。本作は、業界を舞台に、若き天才ゲーム開発者・安積那由他(山﨑)が大資本の企業に立ち向かい、周囲の人たちと関わりつつも成長していくストーリー。

老舗玩具メーカー「アトム玩具」の再建を目指す社長の富永海(岸井ゆきの)は、"ゲーム業界のバンクシー"と呼ばれる「ジョン・ドゥ」那由他に続き、もう一人の「ジョン・ドゥ」菅生隼人(松下洸平)の協力も得て、本格始動。そこから1年後。新ゲームリリースを3か月後に控える中、アトム玩具に新たな災難が襲い掛かる。

火災に遭った際、1億5000万円を融資してくれたのは、海が「やよい銀行」に勤務していたときの上司で支店長の小山田(皆川猿時)だったが、5000万円の約束手形を今すぐ返済しろと言う。1年以内に一括返済する短期貸付「手形貸付」は、通常は企業と金融機関の付き合いにより、便宜的書き換えを行うことで"ジャンプ"するのが慣例となっているが、今回はジャンプできないと言うのだ。

猶予は1カ月。そこで不渡りを出すと、担保としてアトム玩具の土地・建物・技術を全て奪われ、潰れてしまう。

陰で糸を引いているのは、案の定、アトム玩具の特許を狙うインターネット検索サービス「SAGAS」の社長・興津晃彦(オダギリジョー)だ。小山田は定年後にSAGASで役員になるという餌につられ、情報を流していたのだ。となると、小山田の部下でアトム玩具に財務担当として入り込んでいる鵜飼(林泰文)がますます怪しい。

一方、苦楽を共にすることで、仲間の結束力は高まっていく。海と那由他、隼人は夜食をとりつつ、ゲームについて語り合う。そんな中、那由他は今だけでなく、大人になって振り返ったときに、ああ楽しかったなって思ってもらえるゲームを作ろうと決意する。

だが、翌日、会社を休み、何やら思いつめた様子の那由他は隼人に、隼人は那由他に「話がある」と言う。実は資金繰りに奔走する海の笑顔が、二人の中でジョン・ドゥの資金繰りに走り、興津に騙され、自殺した公哉(栁俊太郎)と重なったのだ。しかし、2人の心は今は一つ。公哉の死と向き合い、アトムの仲間を得た2人は、「チーム」として戦うことを学び、みんなで苦難を乗り越えること、そしてみんなで最高のゲームを作ることを改めて誓うのだ。

そこで隼人はパブリッシャー・相良(玄理)に助言を求め、「エレベーターピッチ」(実績のない人が話を聞いてもらうため、投資家がエレベーターに乗り込んだときに突撃する営業方法)を伝授される。

時間をはかり、素人にわかる言葉で伝えるプレゼンを訓練し、プレゼンを実践するが、結果は全滅。那由他らは営業の大変さを知るとともに、公哉がいかに大変なことをしていたかを痛感する。

そこで相良は、アジア中の投資家とゲーム開発者をマッチングさせる配信イベント「ゲームトゥマッチ」への参加を提案。3日後のイベントに向け、準備することに。

そんな中、不審な様子の鵜飼に那由他は声をかける。しかし、那由他が鵜飼に尋ねたのは、かつて本店営業部にいた鵜飼の経歴を見込んでの「営業の極意」だった。実際、成績を残せなかったから今ここにいると苦笑しながら、鵜飼は呟く。

「社員が一番のアトムのファンなんですね」

いよいよ「ゲームトゥマッチ」当日。那由他が質疑応答に当たる中、手をあげたのは、興津だった。興津は小山田から吸い上げた情報をもとに、5000万円の予算がゲーム開発のためではなく、アトム玩具を建て直す資金なのではないかと指摘。なぜアトムにこだわるのかと尋ねる。

しかし、そこで那由他が語り始めたのは、かなり私的な話だった。

ジョン・ドゥには彼らの作ったゲームを楽しいと褒めてくれる親友がいたこと、彼が資金集めをしてくれていたこと、彼は亡くなったこと。そして、ゲームの作り手でない、特別な交渉術を持つわけでもない彼がかつて興津に何を喋ったのか、なぜ人の心を動かすことができたのかという疑問だ。そして、「やっとわかった」と言い、こう続ける。

「彼は俺たちジョン・ドゥの一番のファンでした」

ファンは、作り手以上に良いところも悪いところも理解している最強の存在だということ。それが、ジョン・ドゥが大好きなアトムという場所でゲームを作る理由なのだと告げる。那由他の子どもの頃からの思いや、海とのやりとりや、公哉の思い、鵜飼の言葉もヒントとなった、まさに「総力戦」の名スピーチは、激アツだった。

しかし、残念ながら収穫はゼロ。アトム一同は落ち込むばかりだが、そこにネカフェの店長・森田(岡部大)が朗報を持ってくる。インドの社長である常連客が配信を見て、興味を持ち、詳しく話を聞きたいと言うのだ。しかし、その打ち合わせ日時は、返済期限の前日。一か八かの綱渡りである。

そんな折、ゲームのデータが消滅! 怪しく見えるのは、鵜飼だが、はたして? 融資の話やビジネスの話、総力戦など、「日曜劇場」の強みをフルに生かした第3話。次々に困難が待ち受けているものの、いよいよ物語が面白くなってきた。

(文:田幸和歌子/イラスト:まつもとりえこ)

【第4話(11月6日[日]放送)あらすじ】

完成を目前にしていたアトム玩具のゲームだったが、データが消える事件が発生する。

10日後までにゲームを復元できなければ、インド人投資家へのプレゼンに間に合わず、融資は到底受けられない。時間が迫る中、那由他(山﨑賢人)らは急ピッチで復元を試みるが、作業の進め方をめぐって隼人(松下洸平)と意見が割れ口論になってしまう。空気の悪い社内を社長としてまとめきれず、海(岸井ゆきの)は焦燥にかられていた。

そんな中、興津(オダギリジョー)は次なる一手を進めており・・・。

◆放送情報
日曜劇場『アトムの童(こ)』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。