うわぁ、なんだか扱いづらいキャラが登場したぞ・・・。都(SUMIRE)と仕事で関わることになる新人気鋭の若手カメラマン・夏目(田辺桃子)を見た時、多くの人がそう感じたのではないだろうか。何か意見を言おうとしても、「長い、くどい、伝わらない」と突っぱねてくるし。実力はあるのかもしれないが、また一緒に仕事がしたいとは思えないタイプである。

だが、そんな夏目にも才能があるがゆえの葛藤があり、"好き"を貫くための努力をしてきたことが分かった『階段下のゴッホ』(TBS系)第2話。人の本質って、そう簡単には見抜けない。というか、見抜けたつもりになったらいけないんだろうな、と思った回だった。

"仕方ない"と諦められるようになってしまった大人たち

「お利口さんしてない? そんなんじゃ、新しいものは生まれない。すぐ潰される」

正解を当てにいこうとする都に、厳しい言葉をかける夏目。たしかに、夏目の発想は面白い。スマホで育った若者たちは、本物に敏感で目が肥えている。だからこそ、新しいことをどかーんとやるべきだ。

しかし、会社員の都は、予算や時間や取引先との兼ね合いなどいろいろなことを加味しなければならない。"好き"だけでは突き進めないのが、大人の世界のむずかしいところだ。それでも一歩も引かない夏目は、新しいブランドモデルを自分の手で探すと言いだす。

筆者は、"好き"に生きていける人って、彼女のような存在を指すのだろうな、と思った。周りにどう思われるかに気を取られない。ちゃんと自分を持っていて、意見をハッキリと伝えることができる。

大人になると、納得いかないことがあっても、"仕方ない"と諦める癖がついていく。そのたびに、「諦められる=大人」だと自分に言い聞かせて。意志を貫こうとしている人を、「子どもだなぁ」と心のなかで揶揄してみたりする。

でも、納得いかないもので成功が掴めたとして、果たしてそれってうれしいのだろうか。"自分"を貫いている夏目や真太郎(神尾楓珠)のように、心からの笑顔を浮かべる資格はあるのだろうか。

夏目の奇抜なファッションが、優しい鎧に見えてきた

ただ、"自分"を貫くのには勇気がいる。強い女に見えていた夏目も、脆いがゆえに何重もの鎧を纏っていた。

「若いから」という偏見に負けないように、目に見えて結果を出さなければならない。カメラマンが悩むと、みんなを悩ませてしまうから、自分の"好き"を絶対的に信じるしかない。

彼女の話を聞いていると、ちょっと怖そう・・・と思っていた奇抜なファッションも、身を守るための優しい鎧に見えてくる。

そんな夏目に見出され、ブランドモデルをすることになった真太郎。普段は無口でミステリアスな彼だが、頑張ってもがいている人にはなんだか優しい。

"きいろ"という夏目の名前を、「あんたの両親、センスあるよ」とさらっと褒めた時は、不覚ながらときめいてしまった。「なんで私の親、赤とか青とか、もっとパキッとした色にしてくれなかったんだろう」という夏目の葛藤を、ちゃんと聞いていたんだ・・・。

話を聞いていないように見えて、大事なところは押さえてくる。これって、典型的なモテ男のやつじゃないですか? 白黒ハッキリしなきゃ...と自分を追い詰めてしまう夏目への、遠回しのアドバイスのようにも思えてくる。

真太郎、ちょっと待ってくれよ・・・!

「ダビデ(=真太郎)って、やっぱり絵を描くのが好きなんだね」
「嫌いだよ。好きだなんて、一度も思ったことない」

都と真太郎の衝撃の会話で、幕を閉じた第2話。ちょっと待ってくれ! 都も私たち視聴者も、"好き"に生きている君の姿に、勇気をもらっていたのに!?

人の本質なんて、簡単に分かるものじゃない。夏目と真太郎を通して、そう再確認させられた。本当に、人の気持ちや心の色が、分かるようになったらいいのにな・・・。分からないからこそ、面白いのかもしれないけれど。

(文・菜本かな/イラスト・まつもとりえこ)

【第3 話(10月4日[火]放送)あらすじ】

都(SUMIRE)の通う美術予備校で、課外授業が行われることになった。
場所は西東京の科学館というなんとも微妙な選択ではあったが、予備校メンバーのハナ(石川瑠華)、クリント(高橋侃)、草介(秋谷郁甫)に比べ、いつにも増して前のめりな真太郎 (神尾楓珠) に驚く都。なぜか真太郎は普段のマイペースさとはかけ離れ、機敏に動く珍しい姿を見せる。
科学館内で油画の主題になるものを探すうち、都はプラネタリウムの前に一人立つ真太郎を見つける。「子供のころに家族でよく来た」と言う真太郎に誘われるまま中に入ると、都はそこで彼の見たこともない一面を見ることになる。

◆放送情報
『階段下のゴッホ』
毎週火曜深夜24:58よりTBSほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」では、毎週1週間先行配信中。