「このドラマはフィクションですが、一部ノンフィクションでもあります」
『超特急、地球を救え。』(テレビ東京ほか)には、毎回このテロップが入っていた。
超特急のメンバーが、感情の機敏を解消しなければ、地球が滅亡してしまう。SF要素がふんだんに盛り込まれたドラマの核となる部分には、彼らの"本音"があったように感じる。
タブーに切り込んだのは、"8号車"に対する"覚悟"があってこそ
全4話を振り返って、いちばんに浮かぶのは、「踏み込んでいる作品だった」ということ。新メンバーが加入して葛藤するメンバーたちの心情をリアルに描いていく。見て見ぬふりをしてもいい問題を、そのままにしない。そんな姿勢が何よりも"8号車"を大事に思う超特急の考えにリンクしているような気がした。
新体制になり、動揺してしまったファンも多いはずだ。新しく入った4人のことが、嫌いなわけじゃない。それでも、すんなりと受け入れられなかった人もいたのではないだろうか。
しかし、アイドルを応援する上で加入や脱退について深く追求するのはタブーになっている節もある。"ついていくと決めたのなら、何があってもついていかなきゃ"という無言の圧力がファンの間には存在するのだ。そのため、気にしない"ふり"をして、新体制に慣れるのを待つしかない。
だが、本作はそんなファンに、"あなただけじゃないんだよ"と優しく伝えてくれる。みんな同じように悩んでいるし、モヤッとしてしまうのは悪いことではない。でも、新メンバーも必死にもがいて、オリジナルメンバーが積み重ねてきた"10年"を埋めるために頑張っているんだよ。
新体制になって間もないいま、このような作品をやるのは彼らにとっても挑戦だったはずだ。しかし、ファンのモヤモヤに逃げずに向き合う。本作は、9人が"8号車"に対しての覚悟を示した作品だった。
謎の部屋で行われる先輩ゲストとのトークも、見どころに
謎の少女がいる不思議な部屋で繰り広げられる"先輩ゲスト"との会話には、ハッとさせられる部分がたくさんあった。
第3話のテーマは、「青春とは」。学生時代から超特急にすべてを捧げてきたオリジナルメンバーは、いわゆる"青春"を味わってきていない。そのため、「(新メンバーは)急にこんな縛りの多い生活になって、超特急になって損したなとか思ってないかな?」と不安になってしまう。
そこでアドバイスを送ったのが、安達祐実だ。子役から表舞台に立ち、さまざまな困難を乗り越えてきたであろう彼女が言う「だってさ、この人生生きられるのは、私しかいないんだよ?」という言葉には、すごく重みがあった。
私たちは、つい"もしも"の世界を想像してしまう。もし、あの時ちがう道を選んでいたら、どうなっていただろう。しかも、選ばなかった方の道の方が、なんだか輝いて見えたりして。でも、物事は捉え方ひとつ。この人生を生きられるのは、私しかいないと思うと、今の自分を愛してみようと思えるのだから、不思議だ。
青春と引き換えに、大きな夢を叶えた超特急のメンバーたち。ふつうの学生のように、ちょっぴりヤンチャをしてみたり、意味のないことをしてみたり。そんな日々は、過ごすことができなかったかもしれない。しかし、メンバー9人で楽しそうに枕投げをしている姿は、紛れもなく青春に見えた。そして、その青春はこれからも続いていくのだろう。メンバー全員が80歳になるまで、ステージで輝く超特急の姿が見られることを願って。
(文:菜本かな)
◆番組概要
『超特急、地球を救え。』(全4話)
動画配信サービス「Paravi」にて全話配信中
(C)『超特急、地球を救え。』製作委員会
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