何がいいとか、悪いとかじゃない。でも、何だかモヤっとする・・・。人生は、そんな葛藤の連続なのかもしれない。そして、多くの人はその"モヤモヤ"を、見ないふりをして忘れ去ろうとしてしまう。解決しなければ、ずっと胸のなかのしこりとなって残ってしまうかもしれないのに。

9月6日スタートのモキュメンタリーSFドラマ『超特急、地球を救え。』は、丁寧な物語だ。結成10周年を迎えたメインダンサー&バックボーカルグループ・超特急のメンバーのなかに生まれた少しの歪みをすくい取り、仲間たちが解決策を提示していく。全力で悩みと向き合う彼らの姿を見ていると、何だかスカッとする気持ちになってくるから不思議だ。

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モキュメンタリーでありながら、超特急の"これまで"を感じられる作品に

第1話は、新メンバーが加わったことで起きた歪みに、スポットが当たった。

8月8日に新たに加入した4人は、10年間やってきている5人とはテンション感がちがう。明るくフレッシュで、どんなことにも全力で取り組んでいる。5人も真摯に仕事に向き合っているのは分かるが、力の抜き方を知らない新メンバーと歪みが生まれてしまうのも無理はないだろう。

同じような場面にぶち当たった時、筆者なら見て見ぬふりをしてしまうだろうな・・・と思った。新メンバーが悪いわけではない。自分だって、必死で頑張っている。それに、メンバー募集はみんなで決めたことだし。言ったって"仕方がない"と。

しかし、超特急のメンバーたちは、その悩みを"仕方がない"では片付けなかった。

「やっていけんのかな、これから。なんか、ちゃんとひとつになる自信がないんだよね」

ユーキが切り出すと、そのほかのメンバーたちも歪みと向き合い始める。このままじゃ、やばい。4人の眩しさが、羨ましくて焦っている。9人がひとつになるためには、どうすればいいのだろう。

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本作は、モキュメンタリードラマのため、脚本が存在する。もちろん、アドリブもあるだろうが、大枠は決められているものだ。しかし、彼らが織りなす空気感は、たしかにリアルであることが伝わってくる。

何か問題が起きた時、決してスルーをせずに、みんなで一緒に悩んできたこと。気負わずに言い出せる雰囲気を、それぞれが10年かけて作りあげてきたこと。このドラマを通して、彼らの絆を再確認した。

『超特急、地球を救え。』は、彼らの名刺がわりのドラマに?

そして、後半は一気にSFへと舵を切る。オリジナルメンバー5人が2088年の世界に呼び出され、そこにいた少女から今日抱いた心の動きを解決するように言い渡されるのだ。

非現実感のある設定と、超特急が抱える悩みのリアルさが重なり合い、なんだか不思議な作風になっている。2088年の世界線では、メンバーが過去に悩みを乗り越えてきた"先輩ゲスト"と本音で語り合う場面が描かれていくようだ。

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第1話に登場したのは、私立恵比寿中学の真山りか & 安本彩花。彼女たちは、超特急と同じく、デビュー10周年を迎え、グループの変化も経験してきた。新メンバーが加入した時の心のざわつきや、その感情の対処法。年表を書いてグループの"これまで"を知ってもらう機会をとった方がいい、など具体的なアドバイスも飛び出した。

そして、第2話には、TEAM NACSの森崎博之が登場。リーダーとしての立ち振る舞いに悩みを抱いているリョウガに、アドバイスを贈った。

リーダーというと、周囲より秀でているものがあったり、引っ張る力がある人がなるイメージがある。しかし、エースで4番の人がリーダーのグループって、果たして居心地がいいものなのか。

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筆者は、リョウガがリーダーだったからこそ、超特急はこんなにも自由で優しいグループになれたのだと思う。新メンバーが意見を言いやすかったり、それぞれが気楽にいることができたり。話がまとめられなくても、力強く引っ張ることができなくても、ただそこにいてくれたらいい。それってすごい才能であり、リョウガにしかない力なのではないだろうか。

本作は、"8号車"の方々はもちろん、まだ超特急の沼に落ちていない人にも観てもらいたい作品だ。モキュメンタリーではあるが、彼らの心地いい雰囲気が存分に活かされており、それぞれの個性も全面に押し出されている。新体制を迎えた9人の、名刺がわりの作品になっていくのではないだろうか。

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(文:菜本かな)

【第3話(9月20日[火]放送)あらすじ】

超特急、新体制3日目。9人でのバラエティ番組の収録の合間、学生時代の思い出話で盛り上がる新メンバーを見て、現メンバーは超特急に加わることで青春の機会を失うのではないかと感じてしまう。
そんな中、タクヤ(草川拓弥)は今夜も謎の家に呼ばれることを恐れ、カイ(小笠原海)をファミレスに誘う。ゲームをしながら懐かしい気持ちになる中、結局謎の家に呼ばれてしまう。そして、現メンバーが家に訪れると、子役時代から表舞台に立ち続ける女優がいて・・・

◆番組概要
『超特急、地球を救え。』(全4話)
毎週火曜深夜0:30~1:00(テレビ東京ほか)
動画配信サービス「Paravi」にて放送直後より独占配信スタート

(C)『超特急、地球を救え。』製作委員会