Gino0808による同名漫画を原作に据え、ジャニーズWEST・重岡大毅が主演を務める『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)の第10話が9月9日に放送された。
死ぬまでに蟹を食べると決め、強盗に押し入ったセレブ妻・彩女(入山法子)と北海道を旅してきた北(重岡)。一度ははぐれたものの再会した2人は、いよいよ「最期の地」、日本最北端の稚内に到着する。
あのとき死んでいれば、こんな虚しさを味わうことはなかっただろう・・・・・・ふと考える北。人生に絶望して死を選んだつもりが、本当の意味で「死」も、そして「生」も理解できていなかったのだろう。しかし、彩女はここまで来られた感謝を述べる。
宿泊するホテルでは、結婚式を前にしたカップルの「前撮り」が行われていた。これから幸せになろうとする者たちと、死のうとする者たちと、なんとも皮肉な対比だ。小道具を拾った北に、ウェディングのスタッフが、2人はお似合いだと声をかけ、今後何かあればと名刺を渡す。北はそういう関係ではないと否定するが、彩女の様子が気になり、死ぬ前にやり残したことはないかと尋ねる。
ないと言いつつも、彩女の視線はウェディングドレスに注がれていた。彩女のウェディングドレス姿は綺麗だったろうと北は言うが、当時はお金がなかったため、実は式を挙げていないのだと彩女は微笑む。そこで第1話からの違和感のあれこれが腑に落ちた。彩女が結婚指輪でなく、高価な婚約指輪をなぜか日常的に身につけていること。指輪だけはあげられないと北に言ったことなど・・・・・。
今は豪邸に住んでいるのに、しかも、女の人にとっては一生に一度の機会じゃないのかとやるせない思いを抱いた北は、先ほど名刺をくれたスタッフのもとに行き、今ウェディングドレスを着させてくれと懇願する。要予約な上、閉館1時間前で、スタイリストもいないと難色を示すスタッフに、北は「もうすぐ死ぬんですよ、彼女!」と言い、最期にドレスだけでも着させてあげたいという思いを伝える。そこに上司らしき女性が登場、試着させてもらえることに。
彩女は、「彼が変な嘘をついて」と詫びるが、スタッフの女性は良いタイミングだったのではないか、「今あるものが未来にも必ずあるなんて保証はどこにもないから」と返してくれる。そして、「普通、なりふり構わずあんなウソつけませんよ、愛されてますね」と言うのだった。
既婚者ながら初めてのウェディングドレス姿に嬉しさと恥ずかしさと緊張の色を浮かべる彩女。そして、その美しさに緊張が隠せない北のやりとりが微笑ましい。幸福な気分に浸る北は、これまでいろいろなものを取りこぼしながら生きてきたことに、ようやく気づく。それは大切な人と過ごす日常など、身近にあったはずのものばかりだ。
空を見上げた彩女は蟹座が見えないと言い、その由来を語り出す。それは、蟹のカルキノスが友達のヒドラを倒しに来たヘラクレスの足に命懸けで食いついて、ペシャンコに踏み潰され、カルキノスを哀れと思った女神・ヘラが星座に変えて空に上げたという話。それを聞いた北は「さるかに合戦」を例に挙げ、蟹は可哀想だと呟き、彩女もそれに同意し、「これから私たちに食べられちゃうんだもの」と言う。もしかして絶望の底にいた2人にとって、蟹を食べることは、無意識にも自殺にも似た行為だったのか。
ホテルに戻った北は、壁に掛けられた詩に視線が吸い寄せられる。そこには「鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ」と書かれていた。それはまるで最果ての地に辿り着いた人々を引き留めるかのような言葉だ。しかし、彩女にはそれも響かないのだろうか。
どこか行きたいところがないかと彩女に尋ねられた北は、どこにも行きたくないと言い、ひたすら彩女を激しく求める。しかし、彩女の目はどこか遠くを見ているようでもある。
そんな彩女に、北は生きていてよかったと思う瞬間はなかったか、生きる意味は見いだせなかったのか、そもそもなぜそんなに死のうとしているのかと、悲しさや虚しさを真っ直ぐぶつける。彩女はそこに意味はないと淡々と答え、北のことは好き、だから明日一緒に蟹を食べて死ぬのだと強く言う。
いよいよ「最期のとき」はすぐそこ。北は死に完全に魅入られた彩女の気持ちを引き止めることができるのだろうか。
(文:田幸和歌子)
【第11話(9月16日[金]放送)あらすじ】
彩女(入山法子)の死への決意を変えることができず葛藤する北(重岡大毅)。「明日、一緒に蟹を食べて、そして一緒に死ぬのよ」と言った彩女を思い出していると、彩女から特選蟹フルコースの予約が取れたと報告される。北は、彩女を救うため、自ら命を絶とうとしていた時のことを思い出すが、その中で彩女によってとっくに救われていたことを実感し・・・。そして2人は、ついに"蟹を食べる日"を迎えてしまう。◆番組情報
ドラマ24『雪女と蟹を食う』
毎週金曜深夜0:12からテレビ東京系で放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信
(C)「雪女と蟹を食う」製作委員会
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