Gino0808による同名漫画を原作に据え、ジャニーズWEST・重岡大毅が主演を務める『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)の第9話が9月2日に放送された。
死ぬまでに蟹を食べると決め、強盗に押し入った先のセレブ妻・彩女(入山法子)と共に旅していたものの、はぐれてしまった北(重岡)。しかし、マリア(久保田紗友)から彩女の居場所を聞き、教会に急ぐ。
久しぶりの再会で彩女を抱きしめる北に、彩女は「死ぬ覚悟ができたのね?」と確認し、北はそのつもりで来たと伝える。しかし、マリアによって生きがいを思い出すことができた北の本心は、マリアを死から引き離す方におそらく向いていた。
北は、どこで何をしていたのか尋ねない彩女と、彩女の夫・雪枝一騎(勝村政信)の小説『蝉時雨』に登場する、夫の不倫を問いたださない妻が似ていると感じる。しかし、そこで「なんで聞かないの?」と面と向かって尋ねるストレートさが、実に北らしい。彩女は、感情に任せて怒るほうが男性にとっては可愛げがあるのかもと言いつつ、泣きたくても涙がもう出ないと空虚な表情を浮かべてつぶやく。
北の脳裏には彩女との旅の思い出が蘇るが、と同時に彩女に最初に抱いた「雪女」の印象を忘れていたことに気づく。そして、彩女の死への覚悟に、自分は本気で立ち向かう覚悟があるのかと自問自答する。
北が席を外したとき、彩女のもとに電話が。それは、担当編集者・巡(淵上泰史)からの、一騎が稚内に入ったことを告げる連絡だった。しかし、そのとき、巡は一騎の傍らで電話しており、彩女が男と一緒に旅をしていること、自分の物語を終わらせると言ったことを全て伝えていた。一騎を殺すつもりではないかという推論も。
そこで一騎は、自身の最高傑作と言われる『蝉時雨』が生まれた経緯を語る。
高校教師だった一騎は、教え子だった彩女の若く一途な思いに惹かれ、秘密の関係となったが、教師をやめて上京し、小説1本でやっていくと決意した際、連れて行ってくれと懇願する彩女を受け入れた。しかし、籍を入れて一緒に暮らし始めても小説は全然売れず、貯金も底をつきそうになり、他の仕事を探そうとしたところ、彩女が大反対。自分がお金をなんとかするから小説を書いてくれと言い、姿を消したのだった。
1カ月後に現れた彩女はどう捻出したのか、大金を持っていた。彩女は自分が一騎を日本一の作家にしてみせると言い、自分の日記を渡し、それをもとに小説を書いて芥川賞をとれと促す。一騎はそれで『蝉時雨』を書き、ヒットさせるが、「売れる? それに何の価値があるんですか? あなたはもっと高みを目指せる人です」と彩女は冷たい。自己犠牲の末に彩女はすっかり「雪女」と化していたのだ。
ここまで彩女の思いを踏みにじり、若い女と不倫を重ねるクズ男に見えた一騎が、実は今も彩女を愛していること、そして、一騎こそが彩女の文学への夢と執念の犠牲者だったことがわかる。大衆文学に成り下がったと断じた彩女の冷たい表情と、投げやりな言葉の意味がここにきて明らかになる。被害と加害の関係がひっくりかえり、これまで見えていた景色が角度を変え、全く別の景色に映るのが不思議だ。
この旅で満足できる小説が書けなければ断筆することを決めていた一騎。自分の物語を終わらせると言う彩女。そして、彩女の死という結末を変えたい北。三方向の思いが次回、いよいよ衝突するのだろうか。
(文:田幸和歌子)
【第10話(9月9日[金]放送)あらすじ】
北(重岡大毅)と彩女(入山法子)は、ついに"最期の地"と決めた稚内までたどり着く。ホテルのロビーで一編の詩に出会い「生」に想いを巡らせる北。北とは対照的に「死」への強い決意を感じさせる彩女。部屋に向かう途中、ふとブライダルサロンが目に入り、北は彩女が結婚式を挙げていないことを知る。彩女の表情からウエディングドレスへの憧れを感じた北は、なんとかして彩女にドレスを着させようとスタッフに掛け合うが・・・。◆番組情報
ドラマ24『雪女と蟹を食う』
毎週金曜深夜0:12からテレビ東京系で放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信
(C)「雪女と蟹を食う」製作委員会
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