新町(綾野剛)が遂に「ビクトリー」社長の高柳(反町隆史)と決裂し、解雇まで言い渡されてしまう日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)第9話。

新町がマネジメント担当することになった名実ともにトップスイマーである麻生健次郎(渡辺翔太)があろうことかドーピング違反で4年間の資格停止処分を言い渡されてしまう。父親と共に目指してきたオリンピックでの悲願の金メダルに向け猛練習をしてきた彼がそんな薬に頼ってタイムを伸ばそうなんてことを考えるはずもなく、新町は何とかこの結果を覆そうと奮闘する。

犯罪者の烙印を押されてしまった麻生をマネジメントしているということで、さらにはその担当が元日本代表のプロサッカー選手で、さらにその妻が今をときめく果奈子(榮倉奈々)となれば世間が放っておくはずがない。すぐさま野次馬的なコメントやバッシングが新町一家とビクトリーに寄せられる。麻生のドーピングスキャンダルによる「ビクトリー」の信頼失墜、他の所属アスリートにまで不安が伝播してしまったことなどのダメージを鑑み、高柳は麻生とのマネジメント契約解除を言い渡す。

「たった一人のために他のアスリートを潰すつもりか?」「私にはアスリートと社員を守る義務がある」と言う高柳と「たった一人のアスリートも守れないでどうするんですか?」「何とかして彼を助けてあげたいと思うのが何がいけないんですか?」「こんな時こそ僕たちが頑張らなきゃいけないんじゃないですか」と訴える新町。

体内から違法薬物が採取されるという揺るぎない事実を前に新町は最後まで麻生を信じ抜き、伴走し続ける。突然チーム解散を言い渡され、何の心の準備もないままプロ生命を断たれたかつての自分ときっと重なるところがあり、ここでこそ社長命令に背いてでも自身の心に従い"アスリートファースト"を貫かなければ、自分がスポーツマネジメントに携わっている意味や意義はないと新町も腹を括ったのだろう。

どん底にいた当時の自分に最後まで手を差し伸べられるような存在になることこそ、新町がセカンドキャリアでオールドルーキーとして叶えたいことなのだ。そしてそれを応援してくれる環境が今の新町にはある。家族も彼を「信じている」と言い、「ビクトリー」の仲間たちも高柳の目がある中でも彼に協力すると名乗り出る。

自分には何もかもなくなってしまったと思う時に「信じている」と近くで言ってくれる人が一人でもいることが、自分以上に悔しがってくれて「諦めない」と鼓舞してくれる存在がいることがどれだけ心強いことか。社長秘書の真崎(岡崎紗絵)が言う通り、「アスリートがどん底にいる時こそサポートの手を離さない」スポーツマネジメントのあるべき姿をどんなに青臭いと言われようとも体現しているのが新町だ。

20年前には新町とそっくりで同じことを言っていたという高柳。綺麗事にも思えるかもしれない情熱に燃えていた高柳は、創業メンバーに所属アスリートを引き抜かれ独立されたのを機に一気に方針を変えたようだ。高柳もどこかで新町に過去の自分を重ねているところがあるからこそ、歯痒くもあり、危なっかしく心配でついつい衝突してしまうところもあるのだろう。

新町らの献身的なサポートと執念が実り、麻生のドーピングは意図的なものではないことが証明され資格停止処分も4ヶ月間に一気に短縮されることになった。しかし、この結果を「ハッピーエンドじゃないんだよ」と言い切る高柳。麻生の無実を晴らすためにかかった時間、費用、労力、そして被った様々なダメージを思うと全く釣り合わず、麻生をビクトリー所属に戻すことはないと言う。

これは20年間の会社経営で、スポーツマネジメントに"ビジネス"という観点から携わり続ける中で多くの裏切りや手のひら返し、信じられないアンコントローラブルなことに見舞われ続け、自身の信念を削り取られ続けてきた高柳が身につけざるを得なかったフラットでドライな視線なのかもしれない。

ドーピング違反については散々取り上げ騒ぎ立てるも、それが無実だとわかった瞬間に一気に取り扱いを小さくするマスコミに対抗すべく、新町は大きな賭けに出る。高柳の許可もなしに記者会見の場を設け麻生にとってもケジメの機会を作り、イメージ刷新を図る。

危険因子と見なされた新町は高柳から解雇を言い渡されるも、なるほどここできっと新町を"スポーツマネジメント"の世界に繋ぎ止める存在として、かねてより彼に海外チームへの移籍交渉を依頼していたJリーガー・伊垣(神尾楓珠)が出てくるのだろう。次週いよいよ最終話。新町はセカンドキャリアにして見つけた"天職"を本当に手放してしまうのだろうか。"オールドルーキー"の泥臭い足掻きを最後まで見守りたい。

(文:佳香(かこ)/イラスト・まつもとりえこ)

【最終話(9月4日[日]放送)あらすじ】

新町(綾野剛)は解雇され「ビクトリー」を去った。そして、高柳(反町隆史)と今後スポーツマネージメントには関わらないことを約束する。

妻の果奈子(榮倉奈々)や娘たちにも理解してもらい再び新町の仕事探しが始まるが、塔子(芳根京子)たちはやりきれない思いでいた。
そんな中、「ビクトリー」所属のJリーガー・伊垣(神尾楓珠)の海外チームへの移籍交渉が暗礁に乗り上げる。さらに、塔子と城(中川大志)もあることがきっかけでビクトリーを自ら退職。

「ビクトリー」を退職し全く関係ない仕事をしていた新町だったが、伊垣はそんな新町をなお頼ってきた。伊垣の熱意に負け、新町はスポーツマネージメント最後の仕事として、伊垣の代理人をやらせてほしいと高柳に願い出る。
しかし、経験がない新町では前途多難。そんな時に衝撃的な事件が起こる――。

◆放送情報
日曜劇場『オールドルーキー』
毎週日曜21:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信。