好きな人と一緒に、勉強合宿(という名のバカンス)に行く。こんなに、胸が躍るイベントはない! 片想い中の小梅(飯沼愛)にとっては、またとないチャンスでもある。それなのに、心の底から喜べないのが苦しい。パパ(眞島秀和)と心が入れ替わっているいま、健太先輩(長尾謙杜)と思い出を作るのは、自分ではないのだから・・・。

これまでの『パパとムスメの7日間』は、入れ替わったことで、なぜかお互いの人生が好転していく様子が描かれた。小梅は、健太先輩と急接近したし、パパも仕事が楽しくなりそう。けれど第5話は、小梅の中身がパパであることが、初めてマイナスに作用してしまった。個人的には、過去最大と言ってもいいほど、切ない回だったように思います。

パパの心を持った小梅が、健太先輩が思う"川原小梅"になっちゃってる・・・

ドラマ公式サイトで、「"パパとムスメとカレ"の奇妙な三角関係ラブコメディ」という紹介文を見た時、なんじゃそれは・・・! と思った。だって、パパはおじさんサラリーマンで、健太先輩は現役高校生。そもそも、2人は話しさえ合わないのではないか? と。

しかし、健太先輩は意外にも古風なものが好き。盆栽デートを提案したり、パパが読むような小説に興味があったり。なるほど、2人は趣味が合うから、心の距離を縮めることができるのか・・・と思った。でも、健太先輩がパパの性格に惹かれているのは、そんな単純なものではありませんでした。

サラリーマンのパパは、どんなに理不尽なことがあっても、グッと堪えて、前を向いて生きている。ある程度の妥協もしながら、家族のためにと日々踏ん張っています。一方の小梅は、まだ自分のことだけを考えて生きられる女子高生。パパと小梅は、人生の経験値が全く違う。サッカー部のキャプテンで、気を張っている健太先輩に、"ほしい言葉"をかけてあげられるのは、パパなのかもしれません。

「小梅さんと話していると、ラクになるんです。僕、サッカー部の部長をしているので、いつもちゃんとしたところを見せないと、と思っているんですけど・・・。小梅さんといると、ありのままでいられて」

健太先輩が、パパの姿になった小梅に想いを伝えたとき、確信してしまった。小梅ではなく、パパの性格を好きになってしまっていることを。小梅が親父のような口調でしゃべっても、健太先輩は「川原らしいよね」と笑う。本当の小梅は、全然違うのに。彼のなかでは、パパの心を持った小梅が、"川原小梅"になってしまっているのだ。

何も知らない人から見たら、小梅ってかなりの小悪魔女子なのでは?

勉強合宿中、健太先輩と2人きりになれても、中身はパパだから困惑するだけ。できるだけ、近づかないように。恋のムードに持っていかないように・・・。健太先輩がキスをしようとしてきても、「やめれ!」と突き飛ばしてしまう。私たち視聴者は、パパとムスメが入れ替わっているのを知っているから、そうなるよなぁ・・・と納得するけれど、何も知らない健太先輩は、小梅に拒否られたと感じてしまう。ああ、健太先輩に教えてあげたい。小梅が、どれだけ君のことが好きなのか!

付き合ってもいないのに、キスするなんてけしからん! と思う人もいるかもしれないが、今の微妙な微妙な関係を、どうにかして進展させたかったのだろう。親友の小関(松本怜生)も、「あいつ女子にモテるくせに、実はすげー奥手で不器用なんだよ」と言っているくらいだし、誰彼構わずするわけではなさそうだ。

それに、「さっきは、ごめん。ちゃんと返事もらってなかったのに、カッコ悪いよな・・・」と謝るあたり、絶対にいい男なんですよ・・・(涙)。拒否した小梅に責任を転嫁するのではなく、自分を責める。

でも、小梅ってさすがに小悪魔女子すぎませんか? メールや電話では優しいのに、実際に会うと冷たい。思わせぶりされてる? と不安になってもいいくらいの変わりようだ(メールや電話は小梅が対応しているから、当然なのだけど)。

さすがにケジメをつけたかったのか、真剣な目で、「川原は、俺のこと好き?」と聞く健太先輩。しかし、小梅(中身はパパ)は答えることができない。もしOKしてしまえば、本当に取り返しがつかなくなってしまうからだ。お互いの葛藤が伝わってくるシリアスなシーン。飯沼愛と長尾謙杜の"瞳"のぶつかり合いに、惹きつけられた。

何やら、不穏な空気が漂う小梅と健太先輩の恋模様。追い討ちをかけるように、第6話からは、恋のライバル・凛花(鈴木ゆうか)が登場する。凛花は、健太先輩の幼なじみで、明るくハキハキとした性格。さらには、スタイルも抜群という全方位完璧女子だ。

ちなみに、現在放送中のドラマ『ユニコーンに乗って』でも、同じ名前の凛花(石川恋)が、登場人物たちの恋をかき乱す役割を担っている。『パパムス』の凛花も、小梅にとってかなり手強い存在になりそうだ。

(文・菜本かな/イラスト・月野くみ)

【第6話(8月31日[火]放送)あらすじ】

無事に課題提出を終えた小梅(飯沼愛)姿の恭一郎(眞島秀和)。すると、学校に付き添ってきた恭一郎<中身は小梅>が、商品開発のために生徒に取材をさせて欲しいと担任の両角(スギちゃん)に相談を持ちかける。

恭一郎<中身は小梅>の突然の提案に小梅<中身は恭一郎>が複雑な心境でいると、そこに健太先輩(長尾謙杜)の姿が。合宿での気まずい出来事を恭一郎<中身は小梅>に伝えられていない小梅<中身は恭一郎>は慌て、さらに健太先輩のいつもと違う態度を見た恭一郎<中身は小梅>は2人の間に何かあったのではと疑いを深めるのだった。

さらにそんな矢先、小梅<中身は恭一郎>は健太先輩と謎の女子高生がカフェで親しげに話している場に遭遇してしまう。そしてその夜、小梅<中身は恭一郎>は恭一郎<中身は小梅>から合宿での出来事を問い詰められ、正直に打ち明けることに・・・。健太先輩との関係を悪化させようものなら「パパと二度と口きかない」と脅された小梅<中身は恭一郎>は、健太先輩に他の女性の影があることを絶対にバレてはいけないと決意する。

開発中の香水・レインボードリームのインタビューを行うため、部下たちと共に再び学校を訪れた恭一郎<中身は小梅>。すると、健太先輩が幼馴染だという藤野凛花(鈴木ゆうか)を連れてくる。それは小梅<中身は恭一郎>が見た、あの謎の女子高生だったのだ。恭一郎<中身は小梅>は突然の出来事に動揺してしまい・・・。

◆放送情報
『パパとムスメの7日間』
毎週火曜深夜24:58よりTBSほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」では、1週間先行配信中。