あらまあ。もう告白しちゃったよ!

「高卒でモグリだった私を、功がCEOにしてくれた」
「功とだから、ここまで来られた」

そう佐奈(永野芽郁)から言われた功(杉野遥亮)は溢れる想いを止めきれず、「好きだ」と告白。ついに破られた恋愛禁止のルール。ドリームポニーを舞台とした恋のレース、各馬ゲートインから一斉にスタートです!

お仕事ドラマと恋愛ドラマの絶妙なバランス

この第5話は、お仕事ドラマと恋愛ドラマの比重が絶妙な回だった。まずお仕事ドラマとしては、ビジネスコンテストに向けて主に2つの課題が発生。ひとつはプレゼン当日までにスポンサーを集められるかという営業上の課題。もうひとつは、審査員たちを唸らせるアプリを完成させられるかという技術上の課題だ。

営業上の課題に立ち向かったのは、佐奈と小鳥(西島秀俊)。ドラマで描かれる商談場面は、わりと人情に訴えるようなプレゼンで顧客の信頼を勝ち得ることが多いのだけど、ここではアプリへの出稿で得たデータをマーケティングに活かすという作戦で付加価値を訴求、企業の抱える課題を解決に導くという、実に現実的な内容。もちろん本職の人が見ると甘い面はあるだろうけど、ドラマとしての納得感は十分。しかも佐奈のカウンタートークを小鳥が誘導することで、小鳥の安心感と頼もしさがより強調される場面となった。

一方、技術上の課題には海斗(坂東龍汰)らエンジニアたちが一意専心で取り組んだ。順調に進んでいると思いきや、デモンストレーション前日になって低スペックのスマホでは作動しないというアクシデントが発生。これもおそらく本職のエンジニアが見たら、「動作環境なんて最初に決定しておけ」とツッコミを食らいそうだけど、すべての人に平等に学ぶ機会を提供するというドリームポニーの理念を裏打ちする材料になった意味でも良かったと思う。

リアルとリアリティは別。『ユニコーンに乗って』はドラマ内におけるリアリティラインをしっかり守りながら進んでいくので、大きな破綻がない。

さらにそこに、課金化の際は思想を違えた功が、軽量化のときには佐奈より先に「改良しよう」と声をあげたり。初めて早智(広末涼子)の前で「スタディーポニーキャンパス」の構想を語ったときはマネタイズについて何も策を持っていなかった佐奈が、今度は収益化まで堂々とピッチできたり。これまでの出来事やそれぞれの成長が層のように重なっていくので、感動の厚みが増す。だから、『ユニコーンに乗って』はライトな口当たりでありながら充実感のあるドラマになっていると思う。

ちなみに、今回の件で海斗の技術力に依存しすぎているという弱点があらわになったドリームポニー。ゲームアカデミアの CEO・永瀬(松尾貴史)が海斗の能力に目をつけている場面もあった。もし海斗がいなくなったら、「スタディーポニーキャンパス」は机上の空論になってしまう。企業のいちばんの財産は人材というのは昔からよく言われる話。人材という課題とどう向き合っていくかが次回以降の見どころになりそう。まだ決して佐奈の理念を受け入れたわけではない海斗が真の仲間になるかという点も含めて、次回が楽しみだ。

功のことはもう"チラ見の功"と呼びたい

恋愛ドラマとしては、佐奈の矢印が小鳥に向きはじめたことで、新しい面白さが生まれた。プレゼントした革靴を、小鳥が履いてくれない。しかも、小鳥は早智と親しい間柄だという。胸の中に広がる動揺の正体は、恋なのか、それとも別の何かか。佐奈自身が決して恋愛脳というわけではないので、なんとも読みにくい。

たとえば、ビジコンで優勝したうれしさから、思わず功に抱きついていたけど、佐奈はもう完全に3年前のキス未遂事件を忘れてしまっているのだろうか。あのとき、「ビジネスパートナー」としたのは本心ではなく、凛花(石川恋)の横槍を受けてのことだったように見えたけど、月日の流れと共に完全に気持ちが消滅したのか、功への態度が無自覚すぎるのが気になる。それとも意外と天然で男を振り回すタイプなのか。このあたりの心理が読み取りづらいので、恋愛ドラマとしては佐奈に感情移入するより、功につい肩入れしてしまう。


そんな功はというと、小鳥へのプレゼントを見てしまったところから始まって、佐奈と小鳥の関係が気になって仕方がない模様。佐奈からのプレゼントを受け取っている小鳥をチラ見し、小鳥が早智と個人的な付き合いがあることにショックを受けている佐奈をチラ見し、気持ちを切り替え仕事に打ち込む佐奈をチラ見し、小鳥と早智がただの友人関係であると知り安堵する佐奈をチラ見し、佐奈からもらった革靴を履いている小鳥をチラ見し、最終審査の場でデモンストレーションに臨む佐奈をチラ見し。この回だけで6回もチラ見していた! あまりにもチラ見が多すぎて、完全に"チラ見の功"の二つ名ができてる。功が家政婦だったら、市原悦子よりもいろんなお宅の秘密を覗き見してそう。

だが、それもこれも佐奈への恋心の表れ。

「高卒でモグリだった私を、功がCEOにしてくれた」

そう言われた功の顔つきは、今まで見せたどの表情よりも男っぽくて。迷いのない眼差しに高まる想いと決心が溢れていた。しかし、中間地点での告白はどう考えても自爆フラグだ。

本作のプロデュースを務める松本友香は編成部時代に『私の家政夫ナギサさん』の企画立ち上げに関わっており、同じくプロデュースを担当する岩崎愛奈も『わたナギ』のプロデューサーだった。小鳥さんにある"おじキュン"はこの『わたナギ』が原型と言っていいだろう。

ちなみに『わたナギ』は同世代の田所優太(瀬戸康史)ではなく、年上の鴫野ナギサ(大森南朋)が選ばれた。ということは今回も・・・?

とりあえず今回は佐奈に抱きつこうとする次郎(前原幌)を自らが抱きしめにいくことで制する功のナチュラルガードと、「素晴らしいデモでした」と言って颯爽と去ったあとの小鳥のひとりガッツポーズが可愛かったので、今のところ勝負はまだ五分五分です!

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第6話(8月9日[火]放送)あらすじ】

ビジコンで優勝し、勢い余って佐奈(永野芽郁)に「好きだ」と思いを打ち明けてしまった須崎(杉野遥亮)。早智(広末涼子)からの3億円の融資も決定し、勢いに乗るドリポニと対照的に、佐奈と須崎の間には溝ができてしまう。さらに、須崎は「ゲームアカデミア」の CEO・永瀬(松尾貴史)から引き抜きの話を持ちかけられて・・・!?

そんな中、佐奈に更なるトラブルが! 母・美佳子(奥貫薫)が仕事をクビになってしまったのだ...。女手一つで育ててくれた母をどうにか助けたい佐奈と、母としてのプライドから娘のサポートは受けないと意地になる美佳子。思いがぶつかり合い、佐奈は母との関係までギクシャクしてしまう。そんな佐奈のために、小鳥(西島秀俊)は、ある作戦を決行することに・・・!?

◆放送情報
『ユニコーンに乗って』
毎週火曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。