「スポーツマネジメント」とは何なのか、いかにあるべきなのかが問われた日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)第5話。
登場したのは、城(中川大志)がそのスター性を見出し初めてスカウトしたまだ無名のフェンシング選手・三咲麻有(當真あみ)だ。マイナー競技であるフェンシングをもっと世に広めたい、そして活動費を得たいという三咲だが、選手としての自分以外の要素にフォーカスされることはどうやら避けたいようだ。人見知りの三咲は、スポーツバラエティー番組への出演もグラビア撮影にも難色を示す。せっかく舞い込んだ化粧品会社のCM起用の話も競技姿以外のカットには応えられないと言う。
「私はアスリートでタレントじゃないし・・・」と言う三咲の言い分もわからなくはないが、マネジメント契約をするからにはビクトリーにもメリットがなければならない。元プロサッカー選手・新町(綾野剛)も「アスリートは競技が本業」で「性格変える必要あるとは僕は思わないですけどね」と話していたが、それではビジネスとして成り立たず、ビクトリーでの彼女のマネジメント契約の話も立ち消えてしまう。
社長の高柳(反町隆史)が語った「スポーツマネジメント」のあるべき姿に唸らされる。「アスリートにベストな環境を整える」ことと、スポンサー側に「そのアスリートと関われて良かったと」思ってもらうことを両立しなければならない。確かに「アスリートの持っているエネルギーが企業の中で伝わっていくことで社員のモチベーションが上がり、お客さんにその熱が伝わり、企業自身のエネルギーになっていく」というwin-win-winの関係性、ブラスの循環は非常に理想的だ。そしてこれはもちろん誰しもに出来ることではなく、やはり厳しい競技世界の第一線で闘い続けているアスリートにしかそもそもそのエネルギーの発光源にはなれないのだ。
そしてまたここでも新町は、第2話に登場したスケートボード選手・牧村ひかり(佐竹晃)の時のように"アスリートファースト"を徹底したマネジメントで、繊細に、だけれども大胆に話をまとめ上げる。マネジメント契約を取りやめた三咲の希望を聞き、再度CM起用オファーがあった化粧品会社に掛け合って、彼女の希望を極力取り入れた企画内容の変更に漕ぎ着ける。
自分たちの話に耳を傾けて欲しいとフェンシングの試合にまで臨んでくる新町と城の姿に、相手のフィールドに自分を寄せ、その人が大切にしているものをしっかりと汲み取ろうとする姿勢に、これまでは頑なだった三咲も、互いに歩み寄る大切さ、その過程で時に自分も譲歩することの必要性を実感したようだ。
"アスリートファースト"の姿勢を貫き、会社の枠組みをも超えた動きをしてしまうところが新町の向こう見ずな危うさでもあり、何よりの強みだろう。今回もこの規格外の動きで、遂に「ビクトリー」の正社員の座を掴んだ新町。妻・果奈子(榮倉奈々)は、元・人気女子アナという肩書きだけでなく、地道なSNS投稿が功を奏し、レシピ本出版の話が舞い込む。いよいよ本格的なセカンドキャリアが開けた新町夫婦だが、彼らに次なる試練は待ち受けているのだろうか。
(文:佳香(かこ)/イラスト・まつもとりえこ)
【第6話(8月7日[日]放送)あらすじ】
正社員になった新町(綾野剛)が初めて担当するのは、バスケットボール選手の新垣和人(浅利陽介)。ベテランの新垣は、家族のために、所属するBリーグの千葉ジェッツから琉球ゴールデンキングスへの移籍を希望。新垣の実力から移籍はほぼ確実だったはずが、新垣が練習中にまさかの大ケガ。キングスとの交渉は暗礁に乗り上げ、契約切れとなるジェッツに戻ることもできなくなった。
一転して、引退の危機に追い込まれた新垣。社長の高柳(反町隆史)もマネージメント解消を考え始める。
しかし、新町だけは、どうしても諦められない。かつて自身も現役時代に大ケガを経験していたからだ。新町は高柳に「自分が新垣の戻る場所をみつける」と言い切る。
そんな矢先、新町は新垣から衝撃的な報告を受ける・・・。
◆放送情報
日曜劇場『オールドルーキー』
毎週日曜21:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信。
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