前回当て馬疑惑を完全に払拭したかと思いきや、今回、ことごとく当て馬フラグを踏みまくった功(杉野遥亮)。もはや杉野遥亮は当て馬かどうかが争点になりつつある『ユニコーンに乗って』。第4話は小鳥(西島秀俊)の大人の知性と包容力に完敗した回でした。

日本企業に今必要な福利厚生は西島秀俊ハイタッチ会です

マッチングサイトを経由して投資家の高山(飯田基祐)と知り合った佐奈(永野芽郁)。「スタディーポニーU」の構想も評価され、課題だった資金調達にも光が射したかに見えた。が、ドラマ好きならうっすら予感したはずです。飯田基祐がやる以上、ただの善良な投資家であるはずない・・・と。

案の定、高山は投資の見返りに佐奈に関係を求める、投資家ならぬ好色家。佐奈の身に危機が及んでいると察した小鳥は、早智(広末涼子)との約束を途中で切り上げ、佐奈のもとへ駆けつける。

小鳥か、功か。どちらが間に合うのかと視聴者が固唾を飲んで見守った本命争奪レース。勝負の結果、選ばれたのは小鳥でした。

佐奈が高山を殴りつけようするところを、寸前で止めに入った小鳥。功は、それを遠くで見ているだけ。もう完全に当て馬フラグです。オセロなら四隅をとられた感じです。佐奈の拳を手で受け止めた小鳥は、いつもの癒しの愛されおじさんというより、若干、『MOZU』みがある。公安で鍛えられた反射神経の良さを感じる。

ここで大きくリードをとった小鳥は、マネタイズに向けてメンバーが「スタディーポニー」の課金化にシフトする中、ただひとり、佐奈の理念に賛同し、課金化に反対。共に貧しい家庭環境に生まれ育った佐奈と小鳥は、気づけば最も理念を分かち合える存在になりつつあった。

一方、お金がないことで何かをあきらめた経験のない功は、課金制はドリームポニーの理念に反すると唱える小鳥に「そんなことはわかってます」と反論。けれど、自分がいちばん大切にしている想いを「そんなこと」と軽んじられたことに佐奈はショックを受け、2人の間に微妙な隙間風が吹くことに・・・。

しかも小鳥は課金に頼らない新たな収益化のアイデアとして「プロダクトプレイスメント」を取り入れることを提案。それは偶然にも佐奈とまったく同じ発想で、いつの間にかパソコンひとつろくに使えないおじさんは、ビジネスの面でも、精神的な支えとしても、佐奈の貴重なパートナーになっていたのでした。

そんな小鳥を演じる西島秀俊がとにかくキュート! 図書館の中で2人一緒にお腹を鳴らしてしまい笑いが止まらない佐奈に「しーっ!」と人差し指を立てるところなんて「アイドルじゃん!!!」という可愛さだし、人をダメにするクッションに座ってパソコンを打ってる姿とか齢51の大物俳優にこんなことを言うのもなんですが、思わず「なにこの可愛い生き物・・・」と口からこぼれ出たわ。若者の心をつかみたいおじさん世代は『LEON』を読むより、西島秀俊を真似した方がいいと思う。

「グッジョブです」と言われながらもそういう文化にいなかったために、佐奈とハイタッチしそこねた小鳥が、ちゃんとハイタッチをして第4話は終了。ハイタッチって意味か・・・!と気づいて、しまったという顔をする小鳥の可愛さもいいんだけど、ラストでハイタッチしたあとの「頑張りましょう」の頼もしさたるや大人の安心感が全開で、日本企業に今必要な福利厚生は西島秀俊ハイタッチ会だと思いました!

素直になれない父子の愛を、杉野遥亮が表情で見せる

一方、大きく水をあけられた感のある功ですが、功は功で見せ場がいっぱいなのが、このドラマのズルいところ。「スーツを着るということは相手への敬意でもあるんですよ」と教えられた功は、早速、パソコンでスーツをチェック。お店が『SUIT SELECT』なことに中の人感が出まくってるのもいいですが、ピシッとスーツを決めた杉野遥亮はフレッシュさとインテリジェンスがいい具合にミックスしていて、こんな子が面接に来たら一発で採用確定です。

でもそうやってスーツまでおろして会いに行った父親からは門前払い。遠ざかる父の背中を見てため息をつくときの表情には、諦念とはまた違う、父に認められたいけど認められない歯がゆさがあったし、父が毛布をかけてくれたことを知って、うれしそうに緩めた頬には、ちゃんと愛されて育ってきた息子の純粋さがあった。決して憎み合って対立している父子じゃないということを表情で語った杉野遥亮の演技は、そのあとの父の決断に説得力を与えていたと思う。

何より、高山に連れられそうになった恐怖と怒りから震えが止まらない佐奈の手をぎゅっと握りしめるところがいい。そこから「ほら、ストレス発散」と佐奈のパンチに付き合ってあげるところに、功の優しさと、佐奈をいとしく想う気持ちが溢れ出ていて、これで功が当て馬に終わるなら、日本は一妻多夫制を設けてもいいのではないかとスケールのデカい要望をぶち上げてしまいました。

ただ、そんな2人の可愛らしいやりとりを邪魔にしないようにするあたり、やはり小鳥はまだ佐奈に対して特別な気持ちがあるわけではないよう。しかも、水曜は早めに帰るなど、どうやらプライベートでまだ私たちの知らない秘密を抱えている様子。台所の雰囲気を見る限り、ひとり暮らしの部屋という感じでもなく。実家にそのまま住んでいるという線もありますが、バツイチで、水曜は子どもと会う日・・・なんて説もよぎります。いずれにせよまだ見えてこない小鳥の素顔が、佐奈→小鳥が恋愛に発展するかどうかの重要なフックになりそう。

物語全体としても、こうした恋愛要素を押さえつつ、スタートアップ企業のドラマという基盤がブレないところに好感が持てる。「他の社員は何してるの?」「新入社員の小鳥が重要な経営会議に参加しているのはなぜ?」というツッコミポイントはありつつも、今回登場した「プロダクトプレイスメント」などトレンドも散りばめながら展開してくので、ビジネスものとしてのワクワク感も十分。

はたしてドリームポニーはユニコーンになれるのか。そして当て馬っぽい功は白馬の王子になれるのか。まだまだこのレースは第2コーナーを曲がったばかりです。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第5話(8月2日[火]放送)あらすじ】

「スタディーポニーキャンパス」の開発資金を集めるべく、ビジコンに挑戦することを決めた佐奈(永野芽郁)たち。無事書類審査を通過し社内は優勝を目指して活気に満ちていた。

そんな中、佐奈は、靴を壊してしまった小鳥(西島秀俊)のために新しい靴をプレゼントすることに。しかし、なかなかそれを履いてくれない小鳥にもやもや・・・。さらに小鳥の先日のデート相手が早智(広末涼子)だったことが発覚し、思わず動揺してしまう。なぜそんなに小鳥が気になるのか、自分でもよくわからず戸惑う佐奈。一方の須崎(杉野遥亮)も、そんな佐奈の様子を複雑な思いで見つめていた・・・

そんな中、着々と迫るビジコン本番。しかし、ドリポニは本番直前に大きな課題に直面!
強敵も立ちはだかる中、果たして佐奈たちは優勝を勝ち取ることができるのか・・・!?

◆放送情報
『ユニコーンに乗って』
毎週火曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。