誰? 功(杉野遥亮)のことを当て馬だと言ったのは...? 佐奈(永野芽郁)と功の出会いからドリームポニー設立までがこまやかに描かれた『ユニコーンに乗って』(TBS)第3話。これを見たら、むしろ功は大本命なんじゃないかっていう気がしてきた!

功が本命じゃなかったら、神様はドSでしかない

新しいサービスの立ち上げに向かって走り出したドリームポニー。しかし、そんな中、佐奈を悩ませる新たな頭痛のタネが。ビルのオーナーが変わったことによって、オフィスの賃料が値上がりになるという。しかも、新オーナーは、功の実家である須崎不動産グループ。家を飛び出し起業の道を選んだ功をよく思わない父(利重剛)の差し金だ。

「須崎さんはどうしてドリームポニーに?」

そんな小鳥(西島秀俊)の質問から始まった、ドリームポニー誕生秘話。そこにいたのは、ある女性との出会いによって人生に光を見つけた青年の姿だった。

2017年。名門・慶成大学に通う功は、すべてを持っていた。家柄、ルックス、学歴、スキル、そして前途洋々たる未来。けれど、唯一ないものが夢だった。自分はいずれ親の会社を継ぐ。未来を選ぶ権利なんてない。そして、敷かれたレールを踏み外すだけの情熱も勇気も功にはなかった。

そんな中、功は佐奈に出会う。佐奈は何も持っていなかった。家柄も、学歴も、プログラミング技術も。でも唯一、功が持っていないものを持っていた。それが、夢だ。誰もが平等に学べる世界をつくる。そのために無料の学習アプリをつくりたい。きっと功は今まで出会ったことがなかった、そんなふうにはっきりと夢を口にできる人を。

「須崎さんは何のために勉強しているんですか」

そう尋ねられた功は、思わず答えに窮する。生まれながらエリートコースを約束された功にとって、学ぶことは義務でしかなかった。だから、目的なんて考えたこともなかった。咄嗟に出てきた言葉は「保険」。きっとあのとき、功はどうしようもなく自分を恥ずかしく思ったはずだ。佐奈はお金がないから大学に通えず、功はお金があるから学ぶ理由なんてなくても大学に行ける。でも、本来この最高学府という場にふさわしいのは、自分ではなくて、佐奈の方だと。

そんな佐奈が眩しくて、だからせめて力になりたかった。佐奈を通して、自分も夢を見られるんじゃないかと思いたかった。佐奈は文字通り自分の人生を変えてくれた人だったのだ。

え? こんなん王道のラブストーリー設定じゃない?? 御曹司とパンピーの恋とか『花より男子』だし、この芽生えはじめた恋心、back numberあたりが100億回歌ってそう。

「もし優勝したら、一緒に起業しよう」

それは、もうほとんどプロポーズだ。照れくさそうにはにかむその顔は、つまらなそうに講義を受けていたときよりずっと楽しそうで。大学の友人たちに囲まれておしゃれなダーツバーで退屈をまぎわらせていたときより、ずっとイキイキしていた。

これがもし本命じゃなくて当て馬だとしたら、神様はドSでしかないと思う。

このドラマ、あくまで佐奈×功が正規のカップリングなんじゃないの?

しかも、てっきり佐奈は功のことを男性として意識していないのかと思っていたら、思った以上に2人の仲はいい感じだったよう。ビジコン前夜、2人は同じ毛布にくるまって肩を寄せ合う。なんだこの尾崎豊みたいなシチュエーション。

見つめ合う2人はそのまま自然と唇を近づける。残念ながら次郎(前原滉)の邪魔が入ったことで未遂に終わったけど、完全に矢印はお互いに向き合ってる。これが『あいのり』なら、あとはラブワゴンの運転手にチケットをもらうだけ!

だったはずが、ビジコンで見事優勝を果たした直後、佐奈は功が家から追い出されていることを知る。

「あんたなんか人の恋愛感情につけ込んでるだけじゃん」

凛花(石川恋)はそう言い放つ。確かにそれはその通りなのかもしれない。佐奈だから、功は力を貸した。佐奈だから、功は保証された未来を投げ打ってでも、冒険に出ようとした。それは、そんなに悪いことではない。でも、一時的かもしれない感情で功の人生を狂わせることを佐奈はしたくなかった。だから、佐奈は功に確認する。

「それは、恋愛感情なしでもだよね?」

なんて残酷な、でもなんて誠実な質問だろう。相手の人生を大切に思うからこそ、佐奈は恋心を封印した。そして何より佐奈にとって人生の優先順位は少なくともこの時点で恋より夢だったんだと思う。だから、恋愛禁止を決めた。時代に合わない恋愛禁止ルールの裏側に、こんなせつない想いが隠されていたなんて。これで功が本命ルートじゃなかったら、もう勝手にpixivで二次創作とかしてしまいそう!!

でも、よくよく考えてください。小鳥さんという大変チャーミングなキャラクターのおかげですっかり恋愛フラグが立っていると思い込んでいましたが、今のところ佐奈が小鳥に向けている感情は共感だったり親しみだったり、恋愛的なそれではないんですよね。あれ? このドラマ、あくまで佐奈×功が正規のカップリングなんじゃないの? 実際、小鳥さんには美智(広末涼子)という相手も浮上していますし。ドリームポニーがユニコーン企業になって、あの未遂に終わったキスの続きを果たして終わりっていうのがいちばんしっくり来るラストじゃない??

小鳥さん自身、あんまり恋愛っ気がなさそうなキャラクターなので、ここからどう出てくるのか予想もつきませんが、もう杉野遥亮を当て馬とは呼ばせない委員会をここに結成したいと思います!

杉野遥亮は恋する役柄がとっても似合う

それにしても杉野遥亮は恋する役がとっても似合う。眼球の動きがこまやかなのがいいんですよね。瞳が細かく揺れるから恋のドギマギが伝わってくる。思わず肩がこわばったり、「もし優勝したら」と言う前に、手持ち無沙汰に弄んでいた手をぎゅっと握りしめたり、好きな人の前で喉が渇いている感じだったり、台詞以外のところでしっかりと心の揺れ動きを表現している。

だからと言ってそこに作為めいたものはまるでなく、むしろどこまでも瑞々しい。高鳴る鼓動を抑えるような表情もいいけど、たまらないのはやっぱり思わずうれしさがこぼれた瞬間の初々しい表情。佐奈とキスしたのかもしれないと思って唇をモゾモゾさせるところも、ハイタッチをしたあと思わず口元が綻ぶところも、成人男性とは思えない愛らしさ。この根っこにあるピュアさが、杉野遥亮の芝居の魅力なんだと思う。

もちろん永野芽郁のフレッシュな演技も、この2人のカップリングをますます応援したくなるポイント。特に今回は「私たち、最高のビジネスパートナーになろう」と言ったあと、気持ちに蓋をするように笑ったところも良かったけど、それ以上にそのあと、缶ビールで本音を流し込み、これで良かったんだと自分を納得させるように顔を上げたあと、また俯く横顔がすごくリアルで良かった。清潔感があって爽やかなすごくいいカップルだと思う。

あれから時が流れ、功は今も変わらず佐奈を想い続けているのは明らかだけど、佐奈はどうなんだろう。功の気持ちは間違いなくわかっているのに、ニコニコとマッチングアプリの話をするあたりは残酷な気もするけど、あれは佐奈なりの牽制なのか。

佐奈が酔っ払って眠りこけたあと、功は肩を抱き寄せようとしてやめてしまった。いつかもう一度同じことが起きたとき、今度は遠慮もためらいもなく、功が肩を貸してあげられる。そんな2人の未来を、ドリームポニーの成功と同じくらい祈っております!

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第4話(7月26日[火]放送)あらすじ】

起業家と投資家をつなぐマッチングサイトで、投資家の高山と出会った佐奈(永野芽郁)。「ドリームポニー」の理念に共感し、1億円の投資を前向きに検討したいという高山に、佐奈と須崎(杉野遥亮)は大喜び! 小鳥(西島秀俊)のアシストもあり、とんとん拍子で話は進んでいく。そして、そんな追い風を受けた須崎は、ある出来事を機に絶縁状態にある父親と向き合うことを決める。

一方小鳥は、趣味のバードウォッチングをきっかけに知り合った早智(広末涼子)の家に招かれていた。しかし小鳥は、あろうことか早智とのメッセージのやり取りを社内のチャットに誤送信! 栗木(前原滉)達ドリームポニーの面々は、「小鳥さんがデート!?」と大盛り上がり!

そんな矢先、順調だったはずの投資話に思わぬ落とし穴が!?
新たな壁を乗り越えようともがくうちに、佐奈と小鳥の間には信頼関係が芽生え始めて──

◆放送情報
『ユニコーンに乗って』
毎週火曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。