世代が違えば文化も異なる。その差異は、時に相互理解を阻む壁になる。でもその壁を一緒によじのぼれば、きっと今まで以上に綺麗な景色が見える。『ユニコーンに乗って』第2話は、そんなことを感じさせてくれる回だった。
佐奈たちと小鳥は"相互フォロー"の関係だと思う
ドリームポニーに入社した小鳥智志(西島秀俊)。しかし、アナログな地銀の世界で生きてきた小鳥にとって、ITベンチャーはまさに別世界。飛び交う横文字。使い慣れないチャットツール。今いち馴染めないペーパーレス文化。まさにITあるあるの連発だ。ちなみに僕もフリック入力ができないので、ドリームポニーに入社したら栗木次郎(前原滉)に白い目で見られると思う。
このあたりのドリームポニーのメンバーの描写はバランスが難しいところ。後半のことを考えると、アナログな小鳥をやや小馬鹿にしたり仕事ができない扱いをするのも必要な工程。ただ、見る人によっては年長者が軽んじられている光景にストレスを感じるかもしれない。
でも、そこを夏井恵実(青山テルマ)という底抜けに明るいキャラクターを投入することで、うまく中和していたと思う。アメリカ人の父を持つ帰国子女・夏井は誰に対してもオープン。だから、入社したばかりの小鳥のこともすでに「ことりん」呼ばわり。でも、これは決して小鳥を軽視しているのではなく、彼女のスタンダードなんだということが、青山テルマを起用していることで語らずとも伝わってくる。そして、年長者を敬う儒教的な文化もまた必ずしもどの世界でもスタンダードではないのだということも、夏井の存在によって示している。これはうまいキャスティングだと思うし、キャラクター配置だと思う。
それはそれとして、入社早々、蹴つまずくことの多かった小鳥だが、自身が企画したスタディーポニーUの体験会を、成川佐奈(永野芽郁)が見たことで風向きが変わる。
ユーザーの顔が直接見たい。それは、アナログの世界で生きてきた小鳥ならではの発想。そして、その視点こそがドリームポニーには欠けていた。レビューだけでは拾えないユーザーニーズを探るべく、佐奈は人気のカフェで体験会を企画。効率重視ではわからなかったユーザーたちの声を須崎功(杉野遥亮)や森本海斗(坂東龍汰)たちも知ることができたのだった。
時に小鳥を軽視するような態度をとることも多い功や海斗だけど、根は全員素直でいいヤツなところがストレスレスでいい。IT用語や社内ルールを小鳥に教えていた佐奈たちが、今度は体験会のノウハウを小鳥から教わる。相互フォローと言ったらもはやSNS用語だけど、この光景こそが本来の意味での相互フォローだ。できないこと、知らないこと、苦手なことを人から教わり、できること、知っていること、得意なことを人に教える。そうやってお互いにフォローし合えるから、人と働くのは楽しいし、組織は個人の何倍ものパフォーマンスを出せるのだということを、『ユニコーンに乗って』の第2話は描いていたと思う。
また、一度は自分に縁のないアプリだと思っていたスタディポニーUに対し、人気YouTuberのTAKA(入江甚儀)が興味を持つくだりも、このドラマのメッセージを考えると効果的だった。
・人は世代や環境をこえてわかり合うことができる
・人はいくつになってもいつからでも学べるし成長できる
この2つのコンセプトを柱にエピソードを組んでいるので、とても見やすいドラマになっていると思う。これからの展開がますます気になる第2話だった。
日本に西島秀俊がいて良かった・・・!
そして、この第2話では西島秀俊の可愛さが大爆発していた。プロトタイプの意味を知っていて、「勉強しました」とドヤ顔するや否や、社内のコミュニケーションがチャットと知り、当惑を押し込めて「・・・はい」と返事するところから始まって。階段を急いでジャンプするところも、居酒屋でみんなにからわれながらも目尻に皺をいっぱいつくって笑うところも。「日本に西島秀俊がいて良かった...!」と喝采をあげたくなる愛らしさ。小鳥さんを演じる西島秀俊を見ていると、年長のおじさんに可愛いと言うのは失礼かもしれないという後ろめたさが完全に吹っ飛び、年をとった男の魅力は渋みや枯れ感だけじゃない、可愛さもれっきとした男の魅力なんだと大声でプレゼンしたくなる。
それでいて、佐奈と相合傘したときは、自分の半身がずぶ濡れになっても、佐奈に傘を譲る紳士な面も。そして、それに気づいた佐奈が恐縮するでも甘えるでもなく、あえて傘を飛び出して、一緒にずぶ濡れになって居酒屋まで走っていくところに、佐奈のキャラクターとこの2人の関係性が表れていて良かった。
佐奈を演じる永野芽郁はファッションもメイクもカジュアルなんだけど華やかさがあって、見ているだけで心が浮き立つ。決して頼りになるタイプではないかもしれないけど、ちゃんと芯があるところにヒロインとしての魅力もつまっている。きっと回を重ねるごとに、どんどん魅力が増していくキャラクターなんじゃないかなとワクワクしている。
一方、杉野遥亮演じる功だって負けてはいない。リンクコーデであることをイジられ、表向きは心外そうな態度をとりながら、こそっとうれしそうににやけているところも、倉田凛花(石川恋)と一緒にいるところを佐奈と鉢合わせし、バレないようにタブレッドで顔を隠すところもチャーミング。バランスを崩した佐奈が覆いかぶさるようになるシチュエーションなんて王道中の王道だけど、目を丸くしてドギマギしている姿はやっぱりキュンとさせられてしまう。
何より、佐奈と小鳥の関係にちょっとジェラシーを感じているところがいい。功は「30までは誰とも恋愛はしないって決めてるから」と凛花に宣言していた。内に秘めた恋心が知らぬ間にダダ漏れしている男の顔ほど色っぽいものはない。杉野遥亮には、ぜひもっともっと秘めた恋の切なさを爆発させて、視聴者に夢を見させてほしい。
共に貧しい家庭に生まれ育った佐奈と小鳥とは対照的に、功は大手不動産グループの1人息子。今はジェネレーションギャップばかりが取り沙汰されているけれど、本当の意味で佐奈とシェアできるものが少ないのは功の方かもしれない。でも持たざる者の苦悩があるように、持てる者の苦悩もあるはず。今後そのあたりがより浮き彫りになることで、功のキャラクターが立体的になっていくことを期待したい。
小鳥はみんなで飲むときは「とりあえずビール」世代だけど、佐奈たちは周りに合わせることなく、自分の好きなものを選べる自由と楽しさを持っている。何気ないことだけど、それってすごく素敵な感覚だと思う。それぞれの恋模様の行方にも胸弾ませつつ、お互いがお互いの世代のいいところをシェアし合って、若者もおじさんもハッピーに生きていける世界をぜひ『ユニコーンに乗って』では描いてもらえたら、きっと忘れられないドラマになるはず。
とりあえず目が覚めたら功の家に小鳥が転がり込んでいるラストに、最高にテンションが上がりました。次回予告で西島秀俊と杉野遥亮が並んで歯磨きをしているカットがあったけど、心のスクショを連写する気持ちでそのシーンを拝みたいと思います!
(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)
【第3話(7月19日[火]放送)あらすじ】
小鳥(西島秀俊)の歓迎会で酔いつぶれてしまった須崎(杉野遥亮)は翌朝、おぼろげながらも誰かとキスをした記憶に悶々とする。もしかして相手は佐奈(永野芽郁)だったかも・・・? とあたふたする須崎。しかも佐奈は、どこかよそよそしい態度で、須崎の不安は深まるばかり。
そんな中、ドリポニメンバーは、自社アプリの認知度を上げる施策を考案。小鳥の提案で、テレビ出演もはたすほど人気の慶成大学のクイズ研究会「クイズマップ」とコラボを試みることに!
早速動き出した一同は、須崎と佐奈が出会った場所でもある慶成大学のキャンパスへ。そこで小鳥は、佐奈と須崎、栗木(前原滉)の出会いから起業するまでの話を知ることに。そこには、ドリームポニーが「社内恋愛禁止」になった経緯や、佐奈と須崎の間にあった淡くて切ない恋の思い出、そしてふたりが"一番のビジネスパートナーでいること"を決めた秘密が隠されていて・・・!?
◆放送情報
『ユニコーンに乗って』
毎週火曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
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