ヤングマガジン及びwebで連載された気鋭の漫画家・Gino0808による同名漫画を原作に据え、ジャニーズWEST・重岡大毅が主演を務める『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)の第1話が7月8日に放送された。

タイトルから中身がまるで想像できない物語は、真っ青な夏空に浮かぶ入道雲、降り注ぐ蝉の声と対照的に、暗い自室に佇む、人生に絶望した主人公の男(重岡)の姿から始まる。

男は泣きながらロープで首を吊ろうとするが、いったん断念し、カップ麺をすすりながら残金を数える。2万254円。これを使い切って死のうと、この世に未練たっぷりな彼が見入ったのは、テレビで蟹を食べているレポーターだ。

「俺、そういえば蟹、食ったことない・・・」

人生最後の日は北海道で蟹を食うと決めるが、にもかかわらず、今度は図書館で北海道について調べるうち、海鮮丼、ジンギスカン、ススキノ・・・死のうとしているのに、欲求がどんどん増大する矛盾。

そんなとき、左手薬指に大きなダイヤの指輪をした清楚な人妻(入山法子)とぶつかった男は、「いいよな、汗かいて働かなくても何も困らない。人生楽勝だろう」と心中でつぶやき、女を尾行する。この時点では、彼が死を選ぼうとする理由は見えない。借金か貧困か、仕事の失敗、それとも?

しかし、家に押し入った男が指輪を要求すると、女は玄関先で三つ指ついて「この指輪は差し上げられません。ただ、それ以外のことはあなたの指示に従います」と言う。

金庫に500万円、銀行に500万円あると言った女は男を寝室に誘い、服を自ら脱ぎ始める。男の脳裏には自身が巻き込まれた痴漢の冤罪がよぎるが、どうせ死ぬのだからと、女にリードされるままキスし、ベッドを共にする。

しかし、女は「もしかして泥棒さん、見た目よりお若いんですか?」と笑い、こう言った。「ごめんなさい、高校時代のボーイフレンドと反応が同じだったものですから」。この屈辱的な言葉と態度に男は「もし雪女が現実にいたら、こんな顔で笑うんだろう」と感じるが、コーヒーを勧められ、死ぬ前に北海道に蟹を食べに行くと話すうち、罪悪感がこみあげてくる。そして、警察に行く、面倒くさいからやっぱり死ぬと泣き、女に詫びる男に、女は言うのだった。

「私も食べたいです、蟹」――ここから二人の不思議な珍道中が始まる。

お互いの呼び名を決めるため、男は「北海道」から「北」に、女は本名・雪枝彩女から「彩女」と呼ぶことに。二人はラーメンを食べ、ホテルでビールを共に飲み、北が死のうとする理由について会話が及ぶ。実は北は痴漢の冤罪でつかまり、婚約を破棄され、絶望していたのだ。

死のうとしながら残金を気にするのも、生への欲求が生まれるのも、ラーメンを食べて美味いとはしゃぐのも、押し入った女性と関係を持って後悔して死のうとするのも、ビールを飲んだ後に彩女と性行為に及ぶも、できなかったのも、ことごとく「普通」で小市民な北。すぐに泣くし、怖くなるヘタレぶりも、重岡は実に表情豊かに表現している。それに対して、強盗から逃げるどころか、自らリードするセレブ妻・彩女の何を考えているのかわからない浮世離れ感は、入山に実にハマっている。

死に向かう北の思考回路も言動もことごとく「生」に満ちているのに対し、ほとんど体温を感じさせない彩女の「死」に近い香りは、どんな化学変化をもたらすのか。

ロードムービー感たっぷりの映像美は、『ミッドナイトスワン』などの内田英治監督によるもの。「蟹」でつながる二人の不思議なロードムービー&ラブ&サスペンスの行方に注目したい。

(文:田幸和歌子)

【第2話(7月15日[金]放送)あらすじ】

人生に絶望した男・北(重岡大毅)は、死ぬ前に北海道で蟹を食べるため、強盗に入った家の人妻・彩女(入山法子)と車で不思議な旅を始める。日光の街並みを走り抜け、中禅寺湖へ。湖畔のホテルで一泊し、会津若松に辿り着く。この旅を「大人の夏休み」と言い、ご当地グルメや観光地を楽しむ彩女に対し、どこか振り切れない様子の北。そして、二人は次なる目的地に山形の銀山温泉を選ぶのだが・・・。

◆番組情報
ドラマ24『雪女と蟹を食う』
毎週金曜深夜0:12からテレビ東京系で放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信

(C)「雪女と蟹を食う」製作委員会