サッカーへの未練と徐々に掴み始めた"スポーツマネジメント"という仕事の醍醐味の狭間で揺れる元プロサッカー選手・新町(綾野剛)の姿が描かれた日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)第2話。
今回の仕事は、9歳のスケートボード選手・牧村ひかり(佐竹晃)のマネジメント契約を取り付けるというもの。3歳から彼女を育ててきた自負のある父親・悠一(桂宮治)がコーチを兼ねており、自分の力で立派なプロスケートボーダーに娘を育て上げたいという気持ちが強いようだ。父親の指導という名の下で行われる押し付けで、練習中のひかりの表情は常に曇っている。
前話でサッカー選手・矢崎(横浜流星)にも「それじゃあサッカー楽しくないじゃん?」と即座に問いかけた新町がこのひかりの様子に気がつかないわけがない。どうやら彼女には他に練習したいトリックがあり、それを父親は知らないようだ。ひかりの本音を探ると「スケボーって出し惜しみしないの、みんなで教え合うから、自分ができたトリックを」「(ライバルじゃなくて)友達だからみんな」とスケボーの魅力を語り出す。彼女は"勝つ"ことよりも「目の前でみんなのすごいトリックを見てみたい、みんなの目の前で自分のトリックを決めてみたい」と目を輝かせて話し「スケボーの楽しさは友達ができることだから、世界中に」と新町に教えてくれた。
子どもに自分ができなかったことや自身の夢を託してしまう親は少なくはないのだろう。そして子ども本人は大人が思っている以上に親の考えや気持ちに敏感で、その期待を裏切りたくはない、どうにか応えたいと考える。本当はサッカーチームに入りたいのにセカンドキャリアに苦戦する父親の姿を前に自身の本音を言い出せない新町の長女・泉実(稲垣来泉)のように。遠慮して誕生日プレゼントに何が欲しいか口にしない次女・明紗(泉谷星奈)のように。
ひかり本人を真っ直ぐに捉え「ひかりちゃんの本当の気持ち聞かせて」と同じ目線に立って言い、契約の場でも改めて彼女の父親に対して「ひかりちゃんの意見は聞かないんですか?契約するのはアスリート自身ですから」と待ったをかけられたのは自身もアスリートだった新町ゆえのことだ。そして、正に今ひかりと歳の近い子を持つ悩める父親であり"子は親の知らないところで成長する"ことを誰より実感している新町だからこそだ。
最初は「余計なことは考えなくて良い。牧村ひかりをビクトリーに所属させる、それだけです」と新町に釘を刺していた塔子(芳根京子)が編み出した折衷案は、世界最大手のスポーツマネージメント会社WPM社との共同マネジメント契約だった。このおかげでひかりのアメリカの学校に通いながらスケボーを極めたいという希望は叶えられ、そしてビクトリーは国内での彼女のマネジメントに徹することになった。
「わかってたんです、ひかりが自分の手から離れていくっていうのは。(中略)楽しかったなぁ。ひかり、ありがとう、ありがとう!」―これまでは練習中に娘に一切の遊びや自発性を許さずガミガミと怒ることしかなかった父・悠一が涙ながらに呼びかけるこの言葉こそが、塔子と新町の会社の枠組みをも超えた今回の提案の是非を雄弁に物語っている。
新町ほどの徹底したアスリートファーストの精神を"スポーツマネジメント"というビジネスの世界に持ち込むことを必ずしも良しとはしていないのだろうビクトリー社長の高柳(反町隆史)は、次に彼にどんな試練を与えるのだろうか。
(文:佳香(かこ)/イラスト・まつもとりえこ)
【第3話(7月17日[日]放送)あらすじ】
塔子(芳根京子)が入社当時からマネージメントを担当している秀島修平(田中樹)は、マラソン界の絶対的エース。
市原国際マラソンでも「日本記録更新での優勝」を宣言するビッグマウスなアスリート。
しかし、満を持して臨んだレースでまさかの惨敗。メディアや世間から袋叩きにあう。
秀島はレースで敗北したのを塔子のせいにして、担当を新町(綾野剛)に変えるように高柳(反町隆史)にオーダーする。
高柳は、新町に無事サポートできたら正社員にすることを約束するが...。
ただ、新町は、娘の明紗(泉谷星奈)から「いつサッカー選手に戻るの」と聞かれて、改めてサッカーへの未練を実感していた。
一方、塔子は担当を変えられたことにショックを受けていた。塔子にとって一番思い入れある選手だったので、なかなか受け入れられない。
そんな中、新体制で始めた練習である事件が起こる。
そして、その日を境に秀島は音信不通に。前途多難な日本のエース復活プロジェクトを新町は成功させることはできるのか...。
◆放送情報
日曜劇場『オールドルーキー』
毎週日曜21:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信。
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