このルーザーズだらけの"いわくつき"シェアハウス誕生の経緯が明かされた『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京ほか)最終話。

池上さん(國村隼)がこのシェアハウスのオーナー"万平一平"であることが明かされた前話に続き、この物件の持ち主は池上さんの1人目の妻との間にできた娘であることがわかった。1人ではその家賃15万円を捻出するのは厳しいことから、またバツ6で娘にも愛想を尽かされ連絡を絶たれている"ダメな人間"である自分を許すために、より悲惨な境遇にいる人たちをシェアハウスの住人として選んだのだと言う。これを聞いた他のルーザーズは「私たちを思いっきり下に見てんじゃん!」「利用されたんだよ」「池上さんが私たちのこと騙していただなんて、信じたくない」とショックを隠せない。

さらに怒涛の展開は続き、ルーザーズ解散の時は突然にやってくる。娘夫婦が急遽この家に戻ってくることになったのだ。全ての種明かしがなされた後でも"娘夫婦と人生をやり直したい"と言って頭を下げる池上さんの願いを最終的には聞き入れるルーザーズ5人はやはり優しい。

引越しまでの間に、それぞれ自分にとって足枷になっていたものと向き合うルーザーズ。聡(増田貴久)は元・教え子の間宮(岩本蓮加)に、桜(田中みな実)は離婚調停中の夫・町田(坂本昌行)に離婚届を渡しに会いに行き、ようやく面と向かって対話でき、互いに和解し合った。

桜からの"ちゃんと自分を許せたのかしら?"という問いかけへの池上さんの回答に、このシェアハウスでの歪でちぐはぐ、だけれどもとても人間臭いルーザーズの奮闘ぶりと互いへの思いやりが全て詰まっていた。

「皆さんと一緒にいれば自分が上がって見える、自信が持てるって・・・確かに最初はそんな最低なこと考えてたかもしれません」とした上で、「でも一緒に暮らすうちにわかったんです。ダメな人って人のダメなところも許せる、そんな優しい人だって。こんなにも助け合う仲間を私は他に知りません」「皆さんが負け続けてきたルーザーだから、人間は強くないって知ってるから、だから助けられるんです」と伝えた。「ルーザーの仲間になれて初めて自分を許せたんです」という池上さんの言葉通り、誰かの弱さを許しそっと居場所を与えることは自分自身の弱みを認め癒すことに繋がるのかもしれない。反対に、誰かの揚げ足をとったり激しく追求することは巡り巡って自分を"生きづらく"し、自身の首を絞めることに繋がるだけだ。

池上さんの極々個人的な事情から始まったこの共同生活だが、それぞれに痛手や傷を負いながら集まったルーザーズが互いを尊重し合い、誰かの痛みを通して自分のトラウマやコンプレックスにも向き合い、またそこから立ち直り変わろうとする誰かの姿に自身も励まされ鼓舞され一歩踏み出せる、そんな支え合いの好循環がいつの間にか生まれていた。そんな"奇跡"を共有し合えたのは、他でもない皆が皆、脛に疵を持つ者だったからだろう。人はいつからだってやり直せるし、傷を抱えたままでも笑い合って生きていける。

自分をそのまま受け入れてくれ"帰れる場所"だったシェアハウスでの共同生活自体は終わりを迎えるが、ここで出会えた仲間もそこで紡いだ関係性も一生モノで、誰にも奪えない彼らだけのものだ。"人生捨てたもんじゃない"と身をもって教えてくれたルーザーズに心からの感謝の意を表し、彼らそれぞれの新たな門出に乾杯したい。

(文:佳香(かこ)/イラスト・月野くみ)

◆放送情報
ドラマプレミア23『吉祥寺ルーザーズ』
毎週月曜23:06~23:55放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて全話配信