「自分が大切に思ってるものとか、好きなものをおざなりにしなくて良かったです」

『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)最終話では、他人の悪意やネガティブに触れて闇落ちしそうになった白川さん(井桁弘恵)が、過去に自分が蒔いた"無敵メンタル""ハッピーマインド"に救われ、背中を押される展開が見られた。"白川マインド"を体得したスイーツ男子・倉橋くん(佐藤龍我・美 少年/ジャニーズJr.)が言った冒頭の言葉は、迷いの中にいる白川さんに"自分らしさ"を取り戻させてくれた。

そして、それは白川さんへの羨望や嫉妬から自己嫌悪に陥る負のループから抜け出せない同期の谷口さん(藤野涼子)も同じだ。入社したばかりの頃、怒られてばかりいた白川さんに対して掛けた「真面目にいこう、それは未来の自分のためになる」という自分自身の言葉が胸に突き刺さったようだ。

自身への不甲斐なさや止められない白川さんに対する"ズルい"という思いから重要書類を隠してしまうなんて、"真面目"や"正々堂々"とは対極にあることだろう。メンタル最強美女・羽柴さん(遊井亮子)が鏡に写った自分を通して過去の自分に"あなた、私になるの楽しみだった?あなたの未来は私で良かった?"と問いかけるシーンを何だか思い起こさせた。

「自分が嫌いです」と言う谷口さんに「それは普通のことだよ。大抵の人は100%自分を好きなんてことはないんじゃないかな。でも好きでいようとしてる」と答えた東郷課長(柏原収史)の言葉は素敵だった。ある意味、自分を嫌いになり見放す方が簡単で楽だろう。自分のことは誤魔化せないし、心底嫌気がさし辟易としてしまうこともあるけれど、何とか嫌いになりきらず、見捨てずに最後まで信じてあげて自分だけは自分の味方であり続けるしかないのだ。

「どうして自分で自分をそんなに傷つけるの?谷口さんを嫌いな"みんな"って誰?そんな人、どこにいるの?」

白川さんが谷口さんに問いかけたように、実態のない"みんな"という存在を勝手に作り上げ「みんなから笑われている気がする、バカにされているかも」と勝手に萎縮したり、卑屈になったりしてしまうことは決して珍しいことではないだろう。ただ谷口さんは、自分にばかりベクトルが向いてしまっており、"あれがない、これも足りない"と「ない」ものばかりを指折り数えてしまい、さらにはそれを持てる人に対して攻撃心を向けてしまうようだ。

しかし、そろそろいかに自分が周囲の人に恵まれているかに気がついた方がいいだろう。こんな上司も、こんなことを言ってくれる同期もそうそういない。東郷課長からの指摘にもあった通り、強がったり、がっかりしては勝手に裏切られた気持ちになるのではなく、周りに弱みを打ち明けたりSOSを自分から発することも時に重要だ。

今まで目を逸らし無視し続けてきた白川さんからの挨拶に答えられた谷口さんは、自分の中にある本音や弱さにようやく目を向けられ、認められ始めたのだろう。"どうせ自分なんか・・・"と思いながらも自我も捨て切れないという複雑にねじれてしまった自分自身を騙し続ける日々にやっと終止符を打てた谷口さん、彼女の表情がもっと柔和なものに変わっていくことを願うばかりだ。入社当初に思い描いていたように、また東郷課長も言っていた通り、白川さんと谷口さんの良いコンビが見られる日もそう遠くはなさそうだ。

そして白川さんと梅本さん(秋元才加)や町田さん(野呂佳代)、朝比奈さん(東野絢香)の"チーム桃姫"に谷口さんが加わる日も来そうな気がする。

文:佳香(かこ)

◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中