「私たちみんなが一人一人違う理由、それってみんなで力を合わせるためなんですよ!良いところは人それぞれでしょ?だからそれぞれの良いところを大切にして補い合えれば素敵だなぁ〜って」
そんな無敵メンタル・白川さん(井桁弘恵)の心を打ち砕く出来事に見舞われた『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)第11話。白川さんの企画が通り、その資料作成に追われる中、取引先から預かった社外秘の重要書類を紛失してしまう。不幸中の幸いで、取引先が誤って古いデータを送ってしまったもので書類の差し替えが入ったため事なきを得られるのだが・・・。
実際には、新人時代に白川さんに冒頭のことを教えてくれた張本人である同期の谷口さん(藤野涼子)がまたしても書類を故意に紛失させたのだった。白川さんの提案書が採用されたことももちろんだが、それよりも何よりも白川さんの周囲には彼女を応援する味方が沢山いることが何ともやるせないようだ。彼女が盗んだのは重要書類そのものというよりは、その封筒に貼られていた白川さんを思いやる梅本さん(秋元才加)や町田さん(野呂佳代)、朝比奈さん(東野絢香)からのメッセージだったようにも思える。
「どうして一人じゃないの?私たち、同じはずだったのに・・・」とは谷口さんの言葉だが、新入社員の頃から周囲の女子コミュニティを小馬鹿にしながらも、疎外感を味わってきたのだろう。どうしたって嫉妬され、群れる意識もないがためどのコミュニティにも属していない白川さんに対して、そもそも存在感が薄く誰の眼中にも入っていなかった谷口さんは実際には全く"同じ"ではなかった。
このあまりに残酷な事実は"どうせ私は脇役にすらなれない人間"と谷口さんをさらに卑屈にさせてしまう。それはどこか"被害妄想"とも言えるほどに。しかしただでさえ"同期"というのは何かと意識してしまったり比較してしまう存在だったりもする。単に同じ時期に同じ会社に、(多くの場合)同じ年齢で入社したというだけなのに。厄介なものだ。
丁寧な仕事ぶりが光る白川さんと、仕事が早いと評判の谷口さんには実は仕事におけるスタンスにも共通点が見られる。朝比奈さんが損得勘定から要領良く生きることに重きを置く同期に対してモヤモヤを抱えていたところ、白川さんはすぐに「ずるさとかサボりとか美しくない」という持論を展開する。
「ずるして手に入れたものって玉手箱の中身みたいなものだと思うんだよね。お宝を手に入れたと思ってるのは本人だけで、最後にはモクモク消えちゃうの。やっぱり目先の玉手箱より一生の財産が欲しいじゃない?経験とか自分で身につけたものは絶対消えたりしないから。未来の自分を裏切らないために今の自分が頑張るの!」
谷口さんも何も要領が良くて仕事を高速で処理できるタイプではない。誰よりも残業してどんどん先取りで仕事を片付けているだけであって、決して"仕事が早い"タイプではないのだ。この念入りな準備の下で可能になっている"スピード感"は谷口さんが何とか自身の存在意義を発揮しようと、そして白川さんよりも優っている部分を持ち続けようと何とか必死に死守しているプライドでありポリシーなのかもしれない。
そして谷口さんも白川さんと2人でいる時には「私と白川さんのいいところが合体したらすごいものができそうじゃない?」と心穏やかに受け入れられた"違い"も、そこに無責任な第三者の目、勝手なことを言う外野のノイズが入ると一気に見えない距離や優劣が持ち込まれてしまう。そこには"相互補完"や"協働"ではなく、いつの間にやら"比較""競争"が勝手に埋め込まれてしまう。
あれだけ周囲のことを「くだらない」と切り捨てていた谷口さんも、本当は周りから認められたい気持ちが人一倍強かったのかもしれない。谷口さんも周囲の声に惑わされてしまい、自身の本音も大切な友達も見失ってしまったのが悲しい。
さて、次週は最終話。白川さんはこのわだかまりをどう解消し、乗り越えるのか。
文:佳香(かこ)
【最終話(6月22日[水]放送)あらすじ】
「自分がされて嫌なことはしない」白川さん(井桁弘恵)だが・・・、同期の谷口さくら(藤野涼子)に嫌な態度を取ってしまい、うまく笑えなくなっていた。そんな中、自分の知らないところで谷口さんがフォローしてくれていたことを知る。そこで、改めて今まで書き留めていたノートを読み返すと、新人の頃に谷口さんから言われた「未来の自分の為に」の文字が・・・。一体、白川さんと谷口さんの仲はいかに・・・?そして白川さんの笑顔は取り戻せるのか!?ついに最終回!
◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中
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