「だから桜さんは少なくとも僕たちにとっては本物なんです」

自身のことを"水面に浮かぶ汚れた桜"だったと言い、大学入学を機に"上に咲いている綺麗な桜"になることを心に誓ったと話していた桜(田中みな実)の小学校時代を知る人物が現れた『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京ほか)第9話。

シェアハウス住民への取材ということでドキュメンタリー番組への出演が決まったルーザーズ。もちろん桜が"ルーザー"として今の自分のありのままの姿を曝け出すはずなどなく、あくまで人生の"ウィナー"としてあえてシェアハウスに住んでいるクールで最先端な人間だと印象付けるのだと言う。名付けて「オペレーション・ウィナーズ」作戦が始動した。

聡(増田貴久)には"家賃を節約するため"を"自分への投資額を増やすため"に、翠(濱田マリ)には"競馬場"を"動物園"へと言い換えさせ、取材の想定問答を繰り返す。さながら部活動か何かの合宿のようだ。

そんないかにもメッキが剥がれそうな危なっかしいルーザーズの元へ取材にやってきたディレクターの山田(小久保寿人)こそが、彼女の過去を知る者だったのだ。自身のことを"腐っても元ファッション誌の編集長""ウィナーオブウィナー""生まれながらのウィナー""ナチュラルボーンウィナー"と息巻いていた桜の姿はどこへやら、山田の「ひょっとして"ニセモノ"?」と言う一言を聞くなり血相を変え自分の部屋に閉じこもってしまう。この「ニセモノ」という4文字こそが桜の小学生の頃のあだ名で、この余りに残酷なあだ名をつけた張本人が他でもない山田だったのだ。

そのあだ名がつくことになったきっかけを話しながら、「どうしても見栄張っちゃうっていうのがニセモノって感じで変わってないんだなと思って」と当時を懐かしむかのように桜のことを揶揄する山田に間髪入れずに舞 (田島芽瑠)が言う。

「違うよ、それ。あんたが知ってる桜さんがどんなのか知らないけどさ、今の桜さんは見栄っ張りなんかじゃないよ(中略)全部本気で心の底からそうした方がいいんだって思ってるんだってことが伝わってくるよ」

それに、他のルーザーズも続く。

幡多(片桐仁)「すぐにモテるとかモテないとか言い出すのは困ってるよ。でもそれだってあいつが勉強して一生懸命考えて、こうあいつの中に芯があるからこそ判断できてると思うんだよね」

翠「多少っていうか結構強引なところあるけど、大体納得できるしね」

そして冒頭の聡の言葉に繋がる。「桜さんはそんな(ルーザーズの一員である)状況を何とか変えようっていつももがいてて、こんなダメダメな僕たちにも少しでも良い方向にいくようにって道を示してくれました」

この愛情と信頼の滲むルーザーズからの心強い援護射撃を受けて、遂に軍曹・桜が山田と対峙する。山田を通して対峙しているのは実は傷ついた幼い頃の桜自身だったのだろう。そのあだ名のおかげで「本物になりたいって思えた」と感謝を口にし、他の誰でもない自分自身のその頑張りや努力を認め慰め、そしてこれまで不用意に抱え込みすぎていた"世間一般でどう評価されているか"の判断軸を手放し、そんな評価軸をそっと下ろせた瞬間だったように思える。"ニセモノ"だと言われまいと常に"本物"を目指して努力する過程で、桜はもうとっくにそんな次元ではなく"たった一人のオリジナルな存在"になっていたのだ。「私は今の自分が嫌いじゃない」ということを思い出せた桜は離婚届を一瞥し心の中で何かを決意したような表情を見せた。

さて聡からの「桜さんは桜さんがしたいこと、思うようにやって下さい。僕たちはもうそれでビックリしたりしないんで」という言葉を受けて何かに思い至った様子の桜。おそらく、聡との間に何らかの因縁がある女子高生・間宮リコ(岩本蓮加)に連絡するのだろう。

第10話ではリコとママの2人が一気に聡の前に姿を現すようだ。聡との対面の時を今か今かと待ちわびていただろうこの2人を前に、彼は卒倒せずにいられるだろうか。聡の運命やいかに?!

(文:佳香(かこ)/イラスト・月野くみ)

【第10話(6月13日[月]放送)あらすじ】

安彦聡(増田貴久)は携帯に届いたメールを見るなり絶句。教師をクビになったことを隠している母・梢(筒井真理子)が、今から家に来るというのだ。落ちこぼれを嫌う梢を"モンスター"と言い切る聡は、嘘をつき通してやり過ごそうと画策。だが時を同じくして、もう一人のモンスター間宮リコ(岩本蓮加)からも「今から行く」との連絡が・・・!猛獣たちが集結する事態に陥ったシェアハウス。聡は危機を乗り超えることができるのか!?

◆放送情報
ドラマプレミア23『吉祥寺ルーザーズ』
毎週月曜23:06~23:55放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信