それは、お互いを想っての決断だった。犬飼(原田泰造)の死の悲しみが癒えない『インビジブル』第8話。志村(高橋一生)とキリコ(柴咲コウ)のもとに届いたのは、キリヒト(永山絢斗)からの血塗られたショーへの招待状だった。

"リーパー"=死神? それとも刈り取り機?

キリヒトからのメールに記載された配信ライブのURL。映し出されたのは、スイッチひとつで首に大型の刃物が食い込む処刑装置を嵌められた東子(大野いと)たちの姿だった。壇上の3人には、それぞれ依頼人から殺害依頼が来ていると言う。この公開処刑を阻止するには、キリヒトの提示する条件を飲むか。あるいはショーの会場を突き止め、囚われの東子たちを自力で救い出すか。捜査一課と"インビジブル"の戦いが始まった――。

今回は全編を通してキリヒトとの対決がメイン。犬飼が死の直前に発見したものは何だったのか。内通者の正体は誰なのか。という謎は、ほとんど進展が見られなかった。

ただ、犬飼を襲ったのは"リーパー"という"クリミナルズ"だと言う。"リーパー"は直訳すると"刈り取り機"。また、英語で死神のことをthe Grim Reaperと呼ぶことから、"死神"という意味もあるそうだ。おそらく今回は後者の意味で用いられていると見ていいだろう。この"リーパー"は警察内部にいると言う。そして、"リーパー"こそが内通者だとも。正義の仮面の下で、死神の鎌を振るっているのは誰か。いよいよその正体が明かされようとしている。

おそらくヒントとなるのは今回のキリヒトの言葉。

「この世には法律じゃ裁けない問題が腐るほどある」
「警察は法律やら建前やらにがんじがらめだ」

"リーパー"は、このキリヒトの信念に共鳴している人間だ。法を前に無力さに打ちひしがれ、裁くべき悪がのさばっている現状に不満と苛立ちを抱いている者。そんな強い動機を持っている者がいただろうか。

難しいのが、前回書いた通り、捜査一課の面々のバックボーンがこれまでほとんど明かされていないのだ。唯一、スポットライトが当たったのは磯ヶ谷(有岡大貴)くらいだが、かと言って彼の生い立ちや家庭環境などがそこまで詳しく描かれたわけではない。現状はほとんどノーヒントの推理ゲームになっている。

そうなってくると、やはり猿渡(桐谷健太)説しかない。監察官である猿渡は、規律の下、捜査員たちを監視する立場。最も「法律やら建前やらにがんじがらめ」になっている人間だ。その現状に忿懣やるかたない想いを抱えていても不思議ではない。

第1話で、行き過ぎた捜査方法を諌める猿渡に、志村は言った。

「お前が言ってるルールは通用しない。今回のことに限らず、俺はそういうやつらを捕まえるためだったら手段を選ばないってだけだ」

今聞くと、この言葉は限りなくキリヒトの思想に近い。ずっと志村も同じようなジレンマに苦しんでいたのだ。では、そんな志村と対立し続けていた猿渡は・・・? 

また、今回、"興行師"のショーによって、牧野副総監(羽場裕一)の隠蔽が明るみに出た。いわば法で裁けなかった悪が粛清された恰好となる。牧野の隠蔽を知っていた猿渡からすれば、むしろ願ってもいない展開だ。この悪趣味な"興行師"のショーの目的は、キリヒトにとっては志村を囮にしてキリコを奪還することだったが、"リーパー"にとっては権力で歪んだ警察組織を浄化させることだったとしたら...。そう考えると、"死神"ではなく、悪の芽を摘む"刈り取り機"という意味でも成立はしそうだ。

ちょうど志村と共闘関係が結ばれつつある今だからこそ、猿渡="リーパー"だとショックも大きい。正体は誰であるにせよ、高橋一生との全面対決に負けない俳優が"リーパー"であることを期待したい。

志村は、キリコのいちばんの理解者になっていた

また、志村と東子の命を救うため、キリコはキリヒトのもとへと帰った。キリコに託された命の選択。志村はキリコの負担を軽くするために「俺を殺せと言え」と言い、キリコは大切な人を守るためにキリヒトの思惑に従った。どちらも相手を想い、我が身を犠牲にした。いつの間にか深い信頼で2人がつながれていることに尊い気持ちになった。

でも、もっといいなと思ったのは、そのあと。キリコがいなくなり、がらんどうの"民宿"で志村は来ることのない待人を待つように、ただじっとしていた。その姿を見て僕は、志村は傷ついているのだと思った。キリコを守れなかったことを、自分の無力さを、悔やんでいるのだと思った。

でもそうじゃなかった。キリコを止められなかったことを詫びる猿渡に、志村は言った。

「キリコはただあきらめて戻ったわけじゃない。あいつは、弟を止めることをあきらめない」

そう。決してこれは敗北でもゲームオーバーでもないことを志村はわかっていたのだ。キリコはそんな簡単に悪に屈する人間ではないことを志村はちゃんと見抜いていたのだ。だから自分もあきらめない。誰もいない"民宿"で志村は呆然としていたわけじゃない。考えていたのだ、次の一手を。狡猾なキリヒトを出し抜き、どうすればキリコを取り戻せるか。戦いは、まだ終わっていなかった。

そんなふうに志村とキリコが想いを同じくしていたことがうれしかった。それが、2人の過ごしてきた時間の証明だから。志村は、あんなに何を考えているのかわからなかったキリコのいちばんの理解者になっていた。そう感じさせてくれるラストだったことに胸が熱くなった。

このしぶとさこそが、志村とキリコをつなぐ正義の心。さあ、反撃はここからだ。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第9話(6月10日[金]放送)あらすじ】

キリヒト(永山絢斗)から捜査一課に、2日後にブラックフライデーを行うと連絡が入る。ブラックフライデーは、海外のクリミナルズたちが次々に凶悪犯罪を巻き起こすというもので、中止してほしければ、現在収監中のクリミナルズ全員の免責と釈放が条件という。

阻止するにはキリヒトを見つけ出す以外ない。志村(高橋一生)は猿渡(桐谷健太)とともに彼の行方を追う。

そんな中、キリヒトはキリコ(柴咲コウ)を連れ、二人が昔暮らしていた家に向かっていた。初代インビジブルが遺した、あるモノを手に入れるためだ。

一方、キリコは初代インビジブルが残した資料から犬飼(原田泰造)の命を奪ったクリミナルズ「リーパー」の正体に気付き、志村に注意を促す。

◆放送情報
『インビジブル』
毎週金曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。