メンタル最強美女・羽柴美雪(遊井亮子)が一人戦い必死で守り抜こうとしたのは、これまでの血の滲むような努力と、その結果得られた自信、そしてそうしなければ保てなかった自身の気高き尊厳だったのだろう。『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)第8話では、そんな彼女の悲しき過去と不器用な一面が描かれた。

理由は違えど、学生時代に周囲からとやかく言われ、いじめられていたところは無敵メンタル・白川さん(井桁弘恵)と共通していた羽柴さん。

羽柴さんがあれこれ周囲に美容や外見について口出ししてきたことは、そっくりそのまま彼女が学生時代に周りから言われてきたことだったのだ。第7話で白川さんは「痩せてなきゃだめ、そばかすは消すもの、癖っ毛は真っ直ぐにするもの・・・それは本人が決めることです。他人がそうなれと言ったらそれは"呪い"です」と言い放ったが、他の誰でもない羽柴さん本人が"呪い"にかけられていたのだった。そしてそのことにもちろん羽柴さん本人も気がついており自覚がある。

だからこそ、白川さんに言われた言葉があまりに図星で身につまされるものだったのだろう。「今の私、あいつらそっくり!負けるわけにはいかないのよ」と、何とか自己嫌悪とそれでも奮起して頑張り通そうとする覚悟の間で揺れ動く彼女の姿が見られた。ある意味、この"呪い"を反動にし、羽柴さんはこれまで地道に努力し続けてこられたとも言える訳で、それが人からはどんなに過剰で痛々しく見えようが、彼女の努力と積み上げてきた実績を周囲が嘲笑うなんてもってのほか、否定することもできない。

「必死に勉強して良い大学入って、大好きだったあんバタも我慢して、仕事もお金も美容も少しずつ手に入れて・・・ちまちまパッチワークみたいに自己肯定感を積み重ねて作った私の美しさを否定するな!」この羽柴さんの悲痛な叫びが胸に迫る。自分に厳しくストイックであり続けるからこそ、どうしたって周囲にも厳しくなってしまう。そして自身を慈しむことよりも先に今よりもっとより良くあろうと"アップデート"しなければ気が済まないし不安なのだろう。

ただそのポリシーを否定されることは、彼女のこれまで全てを、武装しながら臨んできた今までの孤独な戦いの全てを、ひいては生き様を全否定されることになりかねないのだ。だからこそ、彼女は自身の"生きづらさ"についてたいしてよく知りもしない他人からの下手な同情や同調を寄せ付けないのだろう。それゆえ羽柴さんが当時の自分を抱きしめるようにして言った"慈しみ"に説得力が増す。彼女の頑張りを認めてあげられる人はやはり彼女自身以外にいないのだ。

「あなたは一人ぼっちで頑張ってる。それはあなたの命綱。だから食べて良いよ」と、過去の自分にあんバタを差し出してあげられた。「あなたの頑張りをわたしは認め続けるから。だから負ける訳にはいかないのよ」と、白川語録で言うところの"一番の戦友"である"過去の自分"に誓った。それは、当時の自分を塗り替えようとするものでも、あるいは自分を馬鹿にしたクラスメイトを出し抜こうと、見返そうとするものでもなく、ただただ"自分が誇れる自分"であるために。当時の自分が"なりたかった未来の自分"に近づくために。過去に縛られるのではなく、より彼女の中で動機がシャープに削ぎ落とされ、迷いがなくなった瞬間だったように思えた。

"余計なお世話"だと言われても、なんだかんだ可愛げのある羽柴さんが「今のままでも十分素敵」という声にも少しでも耳を傾けられるように、そして自分の努力をより前向きな方向に発揮できるようになることを祈らずにはいられない。

文:佳香(かこ)

【第9話(6月1日[水]放送)あらすじ】

白川さん(井桁弘恵)の先輩町田杏花(野呂佳代)は、最近心の中で小さな白川さんを育てている。そんな町田さんを見習って梅本カンナ(秋元才加)もポジティブマインドになろうと決意。しかしある日、独身の梅本さんは既婚の社員にマウントを取られたと感じ・・・卑屈な心と戦っていた。そんな中、産休に入る女性社員の幸せそうな姿に、またもや僻んでしまい・・・。
一体、梅本さんは白川さんマインドになることができるのか?白川さんが考える「幸せ」とは?

◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日21:00より毎話独占先行配信中