髙橋ひかるが主演するTBSドラマストリーム『村井の恋』の第8話・最終回が放送された。
「すべての責任は私にあります」
そういって頭を下げる田中(髙橋)。彼女の前には、キャンプで村井 (宮世琉弥)が田中の頬に突然キスしてきた時の写真があった。キャンプを訪れた教頭 (小松利昌)が偶然取ったキス写真をめぐり、田中は教頭に呼び出されていたのだ。
そこに「不可抗力です」と言って村井がやってくるも、「あなたは黙っていて!」と田中が強い言葉で制す。田中の教師生命を守ろうとする村井、村井に責任を被らせまいとする田中。互いを気遣う優しさを感じずにはいられない。そこへ、山門 (浅香航大) と桐山 (伊藤あさひ) もやってきて2人をフォロー。キスは罰ゲームだった、山門と田中は交際していると教頭に伝え、教頭の誤解を解く。山門が田中にはめる指輪を用意していた用意周到さが謎だが(笑)、思わぬカオスな展開に「え~!!!」と心の声で叫ぶ田中がかわいらしく思えた。しかし、その様子を見ていた村井はショックからか以来、2週間も学校に来なかった。
しばらく休むと友人たちに告げ、田中の前から姿を消した村井。田中はそれを気にしていて・・・。すると、なぜか弥生 (原菜乃華)が田中の元にやってくる。自分に村井への恋心がないこと、すでにほかの人と付き合っていることを明かすと、「・・・それが若さか」と田中は仰天!
「一瞬を逃せば二度と交わらない、それが恋でしょ」とドヤる(笑)弥生。「でも、諦めない人もいる。あなたが思うほど弱い人じゃないわ、彼(村井)は」と続ける弥生に「知ってるよ」と言う田中。あれほど村井と距離を置こうとしてきたこれまでの物語を考えると、驚くような言葉だ。だが、一人になった田中はやはり自分が村井のことを知らないことを思い知る。そして、やはり正直に教頭に謝罪することを決意するのだった。
田中に指輪を返された山門は、「好きだよ。お前のそういうところが」とドキッとする言葉を。そして「お前の思うようにやれ」と田中の背中を押す。"冥王ハーデース"と生徒や田中から恐れられていた山門の仏心に、キュンとせずにはいられない。
そして、教頭に辞表を出し、ずっと一人だったのだから、これからも大丈夫と自分を鼓舞する田中。すると「本当に一人だった?」と春夏秋冬の声が・・・。田中は村井の友人たちに呼び出され、自身も学生の頃に所属していた軽音部を訪れることに。
軽音部OGの田中を迎えたのは、村井や平井(曽田陵介)、桐山らのバンド。ベースボーカルの村井が歌い出したのは、かつて田中が作った曲で・・・田中の過去がフラッシュバックする。母親に放っておかれた幼少期、いじめられていた学生時代・・・家にも学校にも居場所がなかった田中を救ったのは、大好きなベーシスト・TenTenの存在とベース。そのTenTenも結婚し、自分の居場所を見失う田中は...本当にこれまで"一人"だったのか?
夏祭りで村井が被っていた「サスケ2号」のお面。その「サスケ2号」は田中と村井に所縁のある漫画だった。田中は学生の頃、小学生の村井と出会っていたのだ。お互いに"ぼっち"だった2人。田中と親しくなった村井は、建部学園の学園祭で軽音部の田中が歌う姿を見て感激し・・・。
「覚えていますか? このベースを受け取った日に交わした約束を」
演奏を終えた村井が田中に聞く。村井のことを思い出した田中は、村井から告白&プロポーズされていたことも覚えていたが、それは2人の別れの日でもあった。小学生の村井はもし再会した時にお互いに覚えていたら、結婚してくれますか?と田中に伝えていたのだ。お互いに覚えていたら、それは運命であり、真実の愛なのだと言う小学生の村井に、もし忘れていたとしても無理やり思い出させるのはズルだと言った高校生の田中。だからこそ、村井は田中が自分を忘れてしまっていた時には「一から運命を切り開きます」と宣言したのだ。田中も、春夏秋冬の目が気になり好きになったのは、小学生の村井の目を思い出すからだったことを自覚する。
彩乃さんと呼ぶ村井、その頭を「元気だったか?」とワシワシなでる田中。思わずほっとして涙ぐむ村井の表情が、長い間、田中を思い続けてきた村井の思いを物語っていて、もらい泣きせずにはいられない。そして、温かな笑顔を浮かべる田中も感慨深げでホッコリ。こっそり様子をうかがっていた山門が思わず微笑んでしまう姿も印象的だ。田中と村井の恋を見届け、妄想の中の春夏秋冬も役目は終わったと去っていく。物悲しくも、颯爽と消えていった春夏秋冬がカッコよかった。
晴れて田中と村井は・・・と言いたいところだが、やはり2人は教師と生徒。村井たちの元から駆け出した田中は、これまで本当は一人じゃなかったと、自分を支えてくれた人たちの顔を思い出しながら「そばにいたい」と、この場所で教師を続けることを選んだのだった。
自分を守ってくれた温かい周囲の人たちの存在に気付き、「本当は一人じゃなかった」と田中が前を向くことができた最終回。これまでの伏線も一気に回収されて、後味スッキリ&見ごたえバッチリのラストだった。一度去ってしまった春夏秋冬が、結局、引き続き田中の心の拠り所になっていたのにもほっこり(笑)。
教師と生徒の恋という物語が、2次元感やユーモアたっぷりに描かれた、不器用な2人だからこそのポップな純愛ストーリー。こんなにクセの強い(笑)田中と村井のその後も、やっぱり見たい!と思ってしまった。
(文:小松加奈/イラスト・月野くみ)
◆放送情報
『村井の恋』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。
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