上野樹里主演、田中圭、松重豊らが出演する『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS)の第5話が5月17日に放送された。ヨガインストラクターで結婚願望のない主人公・沢田杏花(上野)が、父・林太郎(松重)と共に婚活にチャレンジする姿を通して、現代の様々な結婚観を描くオリジナルラブストーリー。起業セミナー終了日、別れ際に杏花をハグしてしまった晴太(田中)と、それを目撃した颯(磯村勇斗)。一方、一時は独立の夢を捨てかけた杏花だったが、晴太の励ましにより、自身の本心に気づいた杏花は再び独立の決意を固め・・・。

恋模様も仕事も大きく動き出すかに見えた第5話だが、意外にも物語は杏花の母・陽子(八木亜希子)のストール探しが大部分を占めた。しかし、一見の「停滞」は前を向くための大事な一歩だったのだ。

セミナーが終了した杏花と晴太には、もはや会う理由はなくなってしまった。一方、林太郎は整形外科医・明里(井川遥)とのウォーキングで距離を縮めながらも、恋愛の対象外であることをますます自覚させられ、見合いをすすめることを決める。そんな林太郎の婚活が気になった杏花は、林太郎のウォーキング相手が友人の勤めるクリニックの医師・明里だと知り、驚く。共に食事する中で、37歳で開業したという明里に理由を尋ねると、「将来愚痴だらけのおばあちゃんになったら嫌で」「おばあちゃんになって『開業しとけば良かった』じゃなく、『開業したけどダメだった』って愚痴言うほうがマシ」と明里は言う。業種は違うが、明里は杏花にとっての一つのロールモデルになるのだろうか。

そんな中、トラブルが発生する。杏花が仕切りを任されたサステナブルフェスで、陽子の服をバザーで販売することになったが、林太郎が出品する予定のなかった妻のオレンジのストールが手違いで出品され、買われてしまったのだ。そこにやって来た明里が購入者を覚えていたことから、杏花、颯と手分けして探すが、なかなか見つからず、断念した林太郎はストールの思い出を明里に語る。

辞書の編纂者になるのが夢だった林太郎が、編纂者の選に漏れて悔し泣きしたとき、陽子がその頭をストールで覆って隠してくれたのだった。「情けないな、俺」とうなだれる林太郎に、陽子は「そういうとこ見られるのも妻の特権だもんね」と笑った。これは結婚を焦るあまり、家族である猫たちを手放そうとした自分を情けなく思い、涙した明里の頭をストールで覆ってくれた林太郎の姿と重なる。林太郎は妻からもらった優しさを無意識に明里に手渡していたのだ。

無事戻ってきたストールに安堵した林太郎は「そろそろ前を向かないと」と言うが、今度は明里が、杏花がヨガのレッスンで語った言葉を伝える。

「前ばっかり向いてたら疲れちゃいます。つらい気持ちに蓋をせず、感じて吐き出し、消化していきましょう」

そしてこの一件が林太郎と杏花の気持ちに変化を与える。

林太郎は、自分の思いが報われなくとも、会いたいと思える人と会える今を大切にしたいと言い、お見合いをしばらく休止することを決意。一方、杏花はセミナーが終了し、ぽっかり空いてしまった時間に、晴太と共に目的なく乗ったバスの終点に一人で向かった。

そこにいたのは、おそらく同じ思いを抱えた晴太だった。

母が亡くなった後、死んだようになってしまった父を人間に戻すために必死だったと語る杏花に、「そのとき、杏花さんは?」と尋ねる。父のこと、事務処理などに追われて、自分の悲しみと向き合う余裕を持てていなかった杏花が、ここで初めて嗚咽する。

そして「会いたい」「一度でいいから会いたい」「これからも会いたい」と、"会いたい"の対象が亡き母から晴太に移っていくのだ。そんな杏花を自分の方に向かせ、ひどい顔をしているとうつむく杏花に「その顔見る権利、僕にはある気がする」と言った晴太と、林太郎を慰めた陽子の言葉が重なる。

父と娘は共に陽子の喪失感を引きずりながらも、少しずつ忘れ、忘れてしまうことにも抗いつつ、どこか陽子と重なる相手に惹かれている。それを確認させる大事なストールのエピソードだった。

(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)

【第6話(5月24日[火]放送)あらすじ】

引き合うようにキスをした杏花(上野樹里)と晴太(田中圭)だったが、結局何事もなかったかのように別れてしまう。杏花は、「一体アレは何だったのか」とキスのことや晴太の言葉が頭の中を駆け巡り集中できない・・・

そんな中、毎年恒例のウィズキッズ・キャンプイベントが開催されることに。キャンプで好きな子に告白するつもりの虹朗(鈴木楽)は、颯(磯村勇斗)の好きな人が杏花だと知り、「颯先生の恋を応援する!」と意気込む。

一方、杏花は颯の知り合いが店長を務めるインド料理屋で休憩時間にヨガレッスンをさせてもらえることに。レッスンを終えて杏花がお店のカレーを食べていると、偶然晴太と虹朗と出くわし・・・颯の恋を応援したい虹朗は、杏花に「一緒にキャンプに行って欲しい」と提案する。

こうして迎えたキャンプ当日。仕事で来れないはずだった晴太も駆けつけ、三角関係は波乱の模様・・・

そんな中、お見合い相手とタクシーに乗っていた明里(井川遥)は、カーラジオから林太郎(松重豊)の声が聞こえてくることに気づく。日本語学者として語る林太郎の言葉が胸に刺さった明里は・・・

◆放送情報
『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』
毎週火曜22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」で配信中。