桜(田中みな実)が呪いから解放された『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京ほか)第6話。

パチンコ大好き・ギャンブル依存症の翠(濱田マリ)に何か新しい趣味を始めるように勧めるルーザーズの中、"恋愛"のために"マッチングアプリ"を提案するのが何とも桜らしい。思いの外、アプリにハマった翠が、マッチングした相手の取引先の雑誌編集者・町田(坂本昌行)をシェアハウスに連れてくるのだが、その先に待ち受けていたのはなんと離婚調停中の夫婦の再会だった。そう、この町田が桜の離婚調停中の夫だとは、何とも世間は狭い。

"離婚したくても旦那が合意してくれないから"とは桜側の言い分だが、これもどうやら事実ではないようだ。「モテないよ!」が口癖の桜は第2話で自分のこれまでの血の滲むような努力について口にし、不満を露わにしながら沸騰寸前のケトル状態だった。その際にも「こうまでして頑張ってたんだよ、私」と訴える彼女の姿はどこか悲痛で、頑張っても頑張っても満たされない、努力ではどうにもならないその不足の正体が今回明かされた。

地味な専業主婦の母親に育てられた桜は、おしゃれに気を遣ってもらえず、ずっと地味グループに所属していたと振り返る。自身のことを"水面に浮かぶ汚れた桜"だったと言い、大学入学を機に"上に咲いている綺麗な桜"になることを心に誓ったようだ。それが彼女の場合には「お洒落で完璧な女になること」だった訳だ。

しかし、それではいつまで経っても彼女の"幸せ"の基準は相対評価でしかなく、他人からの評価軸に頼ることになってしまう。さらには"完璧な女"などどこにも存在しない訳だから、空想の産物を追い求める桜の追求に終わりは来ない。"もっともっと努力しなければ・・・"と、時に自分の本音に嘘までついて自身を塗り固め、がんじがらめにしてしまっている。

そもそも"常に全力で頑張らねば保てない自分"を基準値に置くなんて、あまりに無理ゲーすぎる。"頑張らないと愛されない、評価されない"場所や人間関係しか持っていないと、無理をしてしまうのも当然のことだろう。さらに恐ろしいのは、自分自身が努力を重ねているからこそ、相手にも同じことを知らず知らずのうちに求めてしまうことだ。そして努力もしていない(ように見える)人のことが許せなくなってしまう悪循環に陥りかねない。そんな今にも溺れてしまいそうな桜に手を差し伸べたのは、もちろんルーザーズだった。

「下見ればいいじゃん」と翠が言えば、続けてあれだけ"負け組"認定を避けていた舞 (田島芽瑠)が「それで良いじゃん、良くない?それで楽になれるんだったら。私はここに来て、そういうのもありだな~って確信した」とどこか晴れやかな顔を見せる。そして池上(國村隼)は「自分より大切な人間なんていません。自分が幸せで笑ってれば、近くの人も笑うんです」とここでも"笑顔のバトン"のライフハックを披露した。

さらに聡(増田貴久)は「水面に浮かぶ桜も綺麗です。散った桜も、風に舞う桜も、桜は全部綺麗です」と伝える。人は弱さと向き合い、受け入れて初めて本当の意味で強くしなやかに、そして優しく、何より"自分らしく"なれるのだと改めて思い知らされた。

自身の弱点も周囲の弱さもどんどん受け入れ昇華させていくルーザーズの表情がどんどん柔らかに、軽やかになっていく。彼らが互いに影響を及ぼし合いながら居場所を獲得し、その生きづらさを手放していく姿に何だか毎話勇気をもらっている気がする。

(文:佳香(かこ)/イラスト・月野くみ)

【第7話(5月23日[月]放送)あらすじ】

望月舞(田島芽瑠)が彼氏と泥酔状態で帰宅する。自称博多の売れっ子ホスト海斗こと伊東正(岡宏明)と名乗り、舞に会うために上京したというが・・・。そこへ舞が働くコンカフェ店員のトーコ(喜多乃愛)から、舞を訪ねて怪しい男が来店していると安彦聡(増田貴久)に連絡が。その男が言うには、舞は彼氏に騙されて詐欺の片棒を担がされているとのこと・・・。突如現れた舞の秘密を握る男2人。果たして住人たちは無事、舞を救えるのか?

◆放送情報
ドラマプレミア23『吉祥寺ルーザーズ』
毎週月曜23:06~23:55放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信