いよいよキリコ(柴咲コウ)の目的が見えはじめた『インビジブル』第4話。キーワードは"探しもの"。彼女はいったい何を探しているのかを考えてみたい。

キリコが追いかけている相手こそが"インビジブル"なのか

今回登場した"クリミナルズ"は、窃盗団のモンキーズ。闇市場に流出したいわくつきの絵画を狙い、モンキーズは次々と盗難を繰り返していた。キリコは、捜査三課の課長・大貫(松下由樹)に"インビジブル"の情報を流すことで、志村(高橋一生)を捜査に巻き込ませる。

「あなたの後輩が殺された事件と私の探しもの、そして今回のモンキーズ。この3つはつながっている」

そうキリコは言った。彼女の言う"探しもの"とは何のことだろうか。ヒントになるのは、キリコが入手した絵画「ナンバーX」から抜き取ったチップ。そこにはアメリカの"クリミナルズ"のリストが入っていたらしい。オークションで「ナンバーX」を落札した男に向けて、キリコは言う。

「あんたにとってはいくら積んでも手に入れたいものだもんね」

だが、男は偽者で、すでに殺されていた。キリコの言う"あんた"とは誰なのか。その"あんた"はなぜ"クリミナルズ"のリストをほしがったのか。真相はわからないが、この"あんた"こそがキリコの"探しもの"。キリコは"あんた"を炙り出すために、志村を使ってモンキーズに近づいたようだ。

また、安野(平埜生成)殺害を自供した武入(鈴之助)の存在も謎だ。武入は猿渡(桐谷健太)に"インビジブル"に殺害を依頼されたと供述した。だが、おそらくこの"インビジブル"とはキリコのことではないだろう。むしろキリコの「この3つはつながっている」という言葉から考えると、この"インビジブル"こそがキリコの追っている人間だと考えた方が納得感がある。

つまりキリコは"インビジブル"に近づくために"インビジブル"を騙っているだけで、"クリミナルズ"を指揮する本物の"インビジブル"は別にいるというのが現状の推理だ。キリコも"クリミナルズ"によって大切な人を奪われ、その復讐のために元締めである"インビジブル"を探していると考えたら、同じように"クリミナルズ"によって後輩を殺された志村にシンパシーを覚え、共闘を組んだのもの理解できる。

ただ、それはそれで、じゃあキリコは何者なんだという謎は残る。多国語を自在に操り、裏社会の人脈も豊富で、闇市場に流れた絵画をあっさり手に入れるだけの資金力とネットワークを持っている。はっきり言ってチートすぎるキャラクターだけに、彼女の正体が何であるにせよ、それに値する説得力ある背景が描かれるかどうかで、視聴者の納得度も変わりそう。あまりここを引っ張りすぎても停滞感があるので、次回あたりでキリコの正体が明らかとなり、志村と共同戦線を張って黒幕を追う展開を期待したい。

また、気になるところで言うと、猿渡の動きも怪しい。今回も監察官という立場でありながら、捜査の前線に立って武入を追いつめていた。「捜査員は一人でも多い方がいいでしょう」とはもっともらしい言い分だけど、なんとなく裏があるような気がしてならない。

武入の取り調べでも「あなたに殺害を依頼した人物というのは誰なんです?」と尋ねていた。これは、武入のバックに誰かがいることを前提にした質問だ。なぜ猿渡はそのような聞き方をしたのか。3年間も沈黙を続けていた通り魔事件の犯人が急浮上したことも含め、何者かの掌の上で踊らされている感覚が否めない。裏で糸を引いているのは猿渡の可能性もあるだろう。

高橋一生と柴咲コウの演技が作品に厚みをもたらす

演技の面では、やはり高橋一生と柴咲コウの2人がこの作品に厚みをもたらしている。今回ハッとさせられたのは、安野殺しの犯人が所持していたナイフと同一のものが発見されたときの志村の目だ。

光のない目が「どこですか、このナイフ使ったやつ」と犬飼(原田泰造)を見た瞬間、白目まで光沢を帯びている。八方塞がりの暗がりに、光が射し込んだ目だ。さらにそこから廊下へと突き進み、「何の尻尾も掴めなかった犯人が今そのへんをうろついているかもしれないんです。俺が行かないと」と犬飼に訴えるまで、ほぼまばたきをしない。その全身に力が入った状態に、志村が怒りで沸騰しそうになっているのが伝わってくる。

だが、真骨頂はさらにそのあと。猿渡に襟首を掴まれ、「あなたのせいで、また身内から犠牲者を出してもいいんですか」と言われたときの、虚を衝かれたような顔。眉間に力が入りそうで入らない。先ほどまで血が沸き立ちそうになっていたのが、すーっと冷えていくように息を吐き、唇を引き結ぶ。短い中で見せるこの感情の流れ、そしてそれをリアルに表現する技術の高さは高橋一生が高橋一生たる所以。高橋一生が演じることで、台詞とト書きによって組み立てられた台本上のキャラクターに奥行きが生まれるのだ。

もちろん柴咲コウも負けていない。基本的にキリコは終始フワフワとしたところのあるキャラクターだが、今回のラストで志村が「あのオークション会場に依頼人としてくるはずだった人間が、お前の目的だ」と言い当てられたときの鋭い目は、いつもの悠然としたキリコとは別人。そこからもう一度繕うにして笑みを浮かべるが、「お前の目的を俺が一緒に探してやる。必ず捕まえる」と言われた瞬間、その大きな目には、正体不明の犯罪コーディネーターではない、ひとりの人間としての感情が乗っていた。

誰かにそう言ってほしかった。あとほんの一瞬、電話が鳴るのが遅かったら、きっとキリコは何かを伝えようとしていたんじゃないか。そうじれったくなるような心の揺れに、観ているこちらの胸まで引き絞られた。この2人のシーンは、やっぱりほんの少し何かを見落としてしまうのさえもったいないような贅沢な緊張感がある。

キリコにとって、これから志村はどんな存在になっていくのか。2人が真のバディとなるのは、きっとここからだ。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第5話(5月13日[金]放送)あらすじ】

3年前の事件にキリコ(柴咲コウ)は本当に関与しているのか・・・。

腑に落ちない志村(高橋一生)は、「インビジブルに頼まれた」と証言した武入(鈴之助)に再び会い、ある確信を得る。

しかし、その武入が検察への護送中に何者かに連れ去られてしまう。

一方、犬飼(原田泰造)は上層部からインビジブルを切るよう指示されていた。ところが、当のキリコは民宿から行方をくらましていた。
やはりキリコと武入はつながっているのか。二人の緊急配備が敷かれる。

志村は、鑑識の近松(谷恭輔)の協力で、ハッカーのラビアンローズ(DAIGO)から、重罪犯を逃がして多額の報酬を得る「逃がし屋」の存在を聞き、武入を連れ去った「逃がし屋」に接近。

そして、また新たに闇に隠れたインビジブルの影がみえてきて・・・。

◆放送情報
『インビジブル』
毎週金曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。