「どうしよう、私の声誰にも届いてない。え、私いてもいなくても同じ・・・」

存在感が薄く、印象に残りづらく取引先にもなかなか名前を覚えてもらえない。声も小さく自信のなさも相まってどうしたってオドオドしたように見えてしまい、それがさらに先輩社員・梅本さん(秋元才加)や周囲のイライラを買ってしまう。さらに梅本さんからの辛辣な指摘に萎縮してしまうという悪循環に陥る。"自分の一番好きなところ"を聞かれても隠したいところだらけで自分の好きなところなんてないと即答する新入社員・朝比奈林檎(東野絢香)。

「白川さん(井桁弘恵)みたいになりたい」と願い、彼女に強い憧れを持つ朝比奈さんに、自分だけが持つ"ギフト"について気づかせ"自分らしさ"の魅力を何とかして伝えようとする無敵メンタル白川さんの姿が見られた『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)第4話。

白川さんになるために、慣れないヒールを履いてぎこちない足取りで出社し、メイクも全体的に濃いめで似合っているとは言い難い。ちょっとした背伸びの域を超えて明らかに無理をしている朝比奈さんをそっと呼び出し、白川さんは優しく声を掛ける。自分のメイクにまつわる失敗談を話し、「誰だってはじめは初心者なんだもん。仕事も一緒だよ。一歩一歩できることから」と。

そして、彼女がコンプレックスだと明かした名前通り林檎のように真っ赤なほっぺを"天然のチーク"と言い換える。「その名前もほっぺも林檎ちゃんだけがもらったギフトだよ」と言って、メイクのコツとして「無理に隠そうとしないこと」を挙げた。

確かに、"自分らしさ"を大切にするということは、欠点を隠そうとばかりするのではなく、長所も短所も含め元々の自身の素材を生かすことだろう。長所はより伸ばし、短所は何か他の性質との掛け合わせ、組み合わせでフォローしたり、カバーしたり。正にメイクも"足し算"ばかりでは全体的に厚塗りになってしまい、自分の長所、お気に入りのパーツまでも覆い隠してしまうことになりかねない。足したらどこか引いたり調整する、あえて"抜け感"を残すような"引き算"メイクの方が結果自分の自信のないところをチャームポイントや武器に変換できたりするものだ。過剰に自分の足りないところにばかり目を向け補おうとするのではなく、その自信のないポイントも含め全体を見て調整していくことが仕事にもメイクにも必要と言えるかもしれない。

また、本作が優しいのはこうやって朝比奈さん側の成長だけを描くのではなく、後輩同士をどこかで比べてしまい、後輩教育に悩む先輩・梅本さん側の葛藤や鍛錬も見せてくれるところだろう。きつく指摘してしまっては自己嫌悪に陥る梅本さんに「助けたかったんですよね、優しい」と彼女の本心を汲んだ上で、自身が実践している仕事術をサラリと嫌味なく言えてしまう白川さんは本当にお見事としか言いようがない。

後輩力だけでなく先輩力まで高い白川さん、恐るべしである。

文:佳香(かこ)

【第5話(5月4日[水]放送)あらすじ】

白川さん(井桁弘恵)の後輩で新入社員の倉橋和樹(佐藤龍我)は甘いものが大好きなスイーツ男子。ある日、先輩社員から食事会に誘われるが、話題が合わない倉橋君は、自分は空気が読めないのでは・・・と悩んでしまう。大人数でワイワイ話すのが苦手な倉橋君は部署の懇親会への参加を求められるが・・・・・・。
一方、白川さんはセクハラが嫌で会社の集まりには参加しないという。白川さんが大切にしている「自分らしさ」とは何か?倉橋君は一歩踏み出すことができるのか?

◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日21:00より毎話独占先行配信中