これまで志村(高橋一生)とキリコ(柴咲コウ)に焦点を絞って展開してきた『インビジブル』(TBS系)。第3話にして、サイドのキャラクターたちにも光が当たりはじめ、より物語が立体的になってきた。

磯ヶ谷や猿渡の存在が、ドラマにうねりを生み出す

今回スポットライトを浴びたのは、志村の後輩刑事・磯ヶ谷(有岡大貴)だ。これまで志村の手柄をちゃっかり自分のものにしようとしたり、迂闊な発言で志村に叱責されたり、態度は一人前だが、人間的には未熟な面が目立つ人物造形となっていた。そんな中、この第3話で磯ヶ谷は重大なミスを犯す。捜査中に無線を外したために犬飼(原田泰造)からの指示を聞き漏らし、その結果、犯人である"演出家"を取り逃がしてしまったのだ。

この失態の原因は、磯ヶ谷自身の油断と慢心。"インビジブル"を信用していない磯ヶ谷は、 "インビジブル"にいいように使われている現状を面白くないと思っていた。刑事である自分がなぜ犯罪者の言うことを聞かなければいけないのか。その驕りが、一瞬の隙を生んだ。守れたかもしれない命が奪われ、自らはもちろん志村や犬飼の責任も問われることに。自己評価の高そうな磯ヶ谷にとっては、鼻を折られる思いだっただろう。

だが、そうやって失敗することで人は成長する。現場に残されたかすかな甘い匂いを頼りに、"演出家"が「タンロン」という高級ドラッグを使用していると推理。そこから"演出家"の正体である天野(要潤)の足取りを掴んだ。

前回の磯ヶ谷は、苦手な福留(久本雅美)に聞き込みに行くのにあからさまに嫌そうな顔をしていた。そのくせエリートである猿渡(桐谷健太)には尻尾を振る。上昇志向に実績が伴っていない、サラリーマン刑事という印象だった。それが今回は危険を顧みず自ら現場に出向くことを望んだ。水が合わなかった志村と行動を共にし、犯人相手に大立ち回りを演じてみせた。

志村から見れば、まだまだ甘ったれかもしれない。だけど、刑事としての使命感と根性を少しは覚えた気もする。天野に手錠をかけ、志村に礼を言う姿は、以前のような露骨に志村を疎んじる素振りはもうなかった。

磯ヶ谷を演じるのは、有岡大貴。実は幼少期からドラマ出演経験豊富な若きベテランだが、近年で最も印象的な役どころといえば、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の名取楓馬だろう。この名取は磯ヶ谷に通じるところのあるキャラクターで、序盤は医師としての情熱と責任感に欠けるが、失敗を重ねながら少しずつ成長していった。年齢に対し、あどけなさの残る顔立ちや少し高い声が、そういう役を引き寄せるのかもしれない。ちょっと鼻につく感じや、漏れ出る人間的な甘さや弱さを今回もうまく表現できている。

また、志村に対して敵対的な態度をとっている猿渡が、裏で聞き込み調査をしていたというエピソードも、猿渡のキャラクターに奥行きをもたらした。おそらく猿渡は志村にとって障壁ではなく、頼れる協力者になっていくはず。これまでメイン2人以外は一面的な描き方に終始しているところがあったが、こうやって徐々に脇の登場人物たちの描き込みが増えると、物語の背景が豊かになる。今後は五十嵐(堀田茜)や安野の妹・東子(大野いと)も掘り下げ、よりドラマとして大きなうねりが出てくることを期待したい。

このドラマが謳う「本当の正義」とは何か

前回は粉塵爆発という方法で犯人グループを一網打尽にした志村だが、今回は水中感電という殺人スレスレのやり方で"演出家"を撃破した。単に殴る蹴るのアクションだけでなく、こうした趣向を凝らしたアイデアもすっかり『インビジブル』の名物となっている。特に今回は、プールに引き摺り落とされた志村が天野を倒し、水中から這い出ることができるか、一秒を争う攻防にハラハラさせられた。

また、今回の演出家もいわゆる快楽殺人犯で、そこに同情の余地はなく、犯人側の内面描写はなかった。これは1話から続く傾向で、このドラマは犯人側のストーリーを重視していないことがわかる。あるいは、やはりキリコが標的にしているのは、そうした大義なき殺人者たちなのかもしれない。「正義」と「悪」のタッグが『インビジブル』の見どころだが、今のところ描かれている犯罪はわかりやすい勧善懲悪であり、"クリミナルズ"は倒すべき悪として明確に存在している。では、このドラマが謳っている「本当の正義」とは何なのか。

「やっぱりあなたを犯人にして正解だった」

そうキリコは志村に言った。キリコが志村にこだわるのは、志村の犯人逮捕に向けた尋常ならざる執念にあるようだ。ではなぜキリコがそうした人間を求めるのか。それはやはりキリコ自身に解決しなければいけない事件があるからと考えるのが自然だろう。

3年前の通り魔殺人事件の犯人が所持していたものと同じデザインのナイフが天野邸にあるとキリコは睨んでいた。しかし、実際には犯人のナイフはなかった。初めてキリコの読みが外れた瞬間だった。これは、どういうことをさすのか。キリコさえも把握していない何者かの暗躍がそこにあるのか。答えは、また来週の放送を待つしかない。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第4話(5月6日[金]放送)あらすじ】

捜査三課長の大貫(松下由樹)から捜査一課に捜査協力を求める連絡が入る。

話を聞くと、同一犯と見られる絵画盗難事件が相次ぎ、真相を探るため志村(高橋一生)を通じて、インビジブルのキリコ(柴咲コウ)の力を借りたいという。

志村から事件の概要を聞いたキリコは、窃盗団モンキーズが関与していると告げ、彼らが次のターゲットに50億円の高額絵画「ナンバーX」を狙っていると予告。キリコは志村に彼らが盗品を出品している闇オークションへの潜入捜査を持ち掛ける。

そんな折、若い女性が被害者となった通り魔事件で使われた凶器のナイフが発見される。捜査一課長の犬飼(原田泰造)に呼び出されてナイフを見た志村は、3年前に同僚・安野(平埜生成)の命を奪ったものと同じだと確信する。そんな志村にキリコは、絵画盗難事件と3年前の事件には繋がりがあると告げる。

◆放送情報
『インビジブル』
毎週金曜22:00からTBSで放送中。
地上波放送後には、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。