周囲に上手く馴染めないタイプにも2種類いる。本人としては何も意識せず振る舞っているのになぜか良くも悪くも目立ってしまい賛否を巻き起こし「出る杭は打たれる」タイプと、そもそも周囲の目に留まらないタイプ。

『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)第3話でフォーカスされた無敵メンタル白川さん(井桁弘恵)の同期・谷口さくら(藤野涼子)は、後者だ。女同士の陰口やらマウントやら仲間外れやら馴れ合いやらを「ほんとくだらない」と言い捨てながらも、むしろ彼女こそその輪に自身が入ることを心のどこかで切望しているようにも見える。

自分と同じく"くだらない女社会に順応できないししたくもない"タイプだと思っていた白川さんは、もちろん圧倒的前者で、周囲から悪口も受ける一方で嫉妬や羨望、注目をかっさらっていく。そんな白川さんといると、より一層周囲からの自分自身への無関心が突き刺さる。素直に「あなたみたいになりたい、羨ましい」とは言えず、少しでも白川さんの真似をしようものなら「同類って勘違いしてるの?イタい」と周囲からの冷めた視線に晒される。自分にないものばかりをまざまざと突きつけてくるかのような白川さんといると自身の惨めさがより一層浮き彫りになり彼女を避けるようになった谷口さん。

これぞ正しく女同士のくだらなさとも言えるが、彼女は自身の中にある"くだらなさ"は直視できないのだ。とは言っても、"見た目は全然違うけど抱えている孤独は一緒"で最も近くにいると思っていた存在が、実は自分とは程遠いところにいたことを事あるごとに周囲から植え付けられれば、筋違いだとはどこかでわかっていながらも、白川さんのこと自体が憎らしく見えてきてしまうのもわからなくはない。

谷口さん同様に周囲から「イタい」と思われてしまわぬように、そればかりを優先するあまり、自分の本音に頑丈に蓋をしてしまい、拗らせてしまう人も少なくないのではないだろうか。そうやって自分は"弁えています"というテイばかりとり、周りから「イタい」と言われる前に予防線を張ってしまうのだ。

一方、白川さんは周囲の雑音に惑わされず、"自分の心の声"に常に正直に、自分ベクトルで生きているだけだが、それは多くの人にとってかなり高等テクであり理解され難い。だからこそ、彼女と張り合おうとすること自体が無駄で無意味なのだ。

谷口さんからしてみれば、白川さんが自分の悪口を言っている相手に対してまで笑顔を向けるのが理解できない。もちろん挨拶されるのに無視してしまう自分にまで毎回懲りずに挨拶してくれることにも。その度に白川さんとの圧倒的度量の違いを見せつけられ、また自分のことを嫌いになってしまうのに無視を決め込んでしまう自分自身のことも。さらに、そんな自分を信頼してポーチを取ってきて欲しいと託してくれる白川さんのことも。そして何より出来心で白川さんのポーチから香水のアトマイザーを抜き取ってしまった自分のことを疑わずに自然と庇ってくれる白川さんの様子に完全に打ちのめされる。

白川さんは"自分らしさ"を最も大切にするのと同じだけ、"その人らしさ"を大事にしているのに、それもわかっているはずなのに、それでも意地悪に攻撃せずにはいられない谷口さんの心を巣食うドス黒い感情がいつか晴れ、彼女も彼女らしさの中で生きられることを願ってやまない。本人に直接謝り、アトマイザーを手渡しで返すことはできなくとも、こっそりデスクの上に返却はできた谷口さんだから。

さて、第3話ではPMSについても触れられたが、白川さんと先輩社員の梅本さん(秋元才加)、町田さん(野呂佳代)との会話があまりにリアルだった。PMSや月経の症状も様々な女性同士は、なかなか完全にはそれぞれの痛みや辛さをわかり合えない部分もあるかもしれない。だけれども、互いにその特性を知った上で、互いの心地良さを極力損なうことなくそっと手を貸し合える方法はきっとあるのだと思わせてもらえた。

文:佳香(かこ)

【第4話(4月27日[水]放送)あらすじ】

いつも笑顔で輝く白川さん(井桁弘恵)に後輩の朝比奈林檎(東野絢香)は密かに憧れを抱いていた。気弱な性格で印象の薄い自分とは正反対の白川さんになろうと慣れないファッションやメイクに挑戦してみるが上手くいかず・・・。コンプレックスだらけの自分を「頑張り屋さんのステキな子」と褒めてくれた白川さんに背中を押された朝比奈さん。少しずつ前向きになった朝比奈さんは白川さんのようなポジティブマインドになれるのか・・・?

◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日21:00より毎話独占先行配信中