「自己肯定感」が"生きやすさ"や"幸福度"に大きく影響することは明らかだが、その具体的な上げ方や満たし方はなかなか教えてもらえない。

『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京ほか)の主人公・白川桃乃(井桁弘恵)は容姿端麗、いつも笑顔で周囲からもチヤホヤされる一方、要らぬ嫉妬や嫌味の渦も巻き起こしていくが、華麗にかわしスルーしていく。一見したところ、"ゆるふわOL、"ニャンニャンOL"というやつかと思いきや、彼女はそれらとも一線を画す。

「私は私!可愛く強く」がモットーの白川さんにとって、自分の笑顔は異性に媚びへつらうためのものでも、他人から何らかのメリットを享受するための処世術でもなく、ただただ「自分が好きなのは笑顔の自分」だから。白川さんのベクトルは常にいかに"自分が"心地いいか。それは"自分が"好きでいられる自分かどうか。周囲からどう思われようが、受け取る必要のないストレスは受け取らない、その姿勢の一貫ぶりが見事で気持ちいい。

「人生イージーモードで得してる」と言われたり、出張土産のお菓子を1人だけ配られなかったりしても、白川さんはそれに引きずられたりクヨクヨしたりしない。これは元々の彼女の性格なのか、それとも人知れず鍛錬しての結果なのだろうか。その辺りも、今後明かされていくのだろうか、楽しみだ。

『メンタル強め美女白川さん』第1話では、そんな白川さんに感化され変化していく先輩社員・町田杏花(野呂佳代)の様子が描かれた。

白川さんと同じく"いつも笑顔"の町田さんだが、白川さんのそれとは明らかに属性が異なり、笑いたくもないところでもその場の空気やノリを優先して笑ってしまう自分の卑屈さに嫌気が差している。町田さんが笑うとき、彼女の心は泣いている、傷ついている。それを隠すようにさらに笑顔を塗り重ねてしまう。自分がなりたい"自分像"や自分自身がやりたいことよりも、他人が思う"自分像"や周囲から押し付けられた自分の"キャラ"を裏切らないように、それに沿って行動してしまう。まずは「自分のハッピー」を第一優先する白川さんとは正反対だ。

しかし、白川さんの素敵なところは、ただただ強靭でタフなメンタルをかざしてくるのではなく、人の痛みにも敏感なところだろう。白川さんもポジティブ変換するスピードが速いだけで、自宅では熊のぬいぐるみに向かって落ち込む気持ちを吐露したり後悔や反省をしたりしている。そんな姿が見られるとまた彼女に親近感を覚えてしまう。思春期に自分の心の最も柔らかいところをグチャッと握りつぶされた経験のある町田さんの今も消えぬトラウマに寄り添い、「人から向けられた悪意って何年経っても付き纏うんです」と語りかける。白川さんにもそんな経験があったことに驚く町田さんもまた、他の社員同様にどこかで彼女のことを自分が抱える粗末な悩みとは無縁の別世界にいる住民だと決めつけていた節があったのかもしれない。

「そんな失礼な人間の美意識とか信用するに値しなくないですか?」

この白川さんのカウンターパンチにはハッとさせられ、スカッとした視聴者も少なくなかったのではないだろうか。

さらに白川さんは何の他意もなく心の底から言い放つ。「町田さんは誰かのために笑うことができるすごい人です」「町田さんが優しいからみんな甘えちゃうんですよ」と。言いたいことも言えず、ヘラヘラ笑うだけで消耗しているだけだと思っていた自分のことをそんな風に捉えてくれる視線が近くにあると思えるだけで、確かに自分のことを心底嫌いにならずに「ま、こんな自分も悪くはないか」とまた生きていくことができそうだ。

"自己肯定感"を高めるには、自分のことをぞんざいに扱う人とは距離をとり、大切に扱ってくれる人の近くに身を置くことが大切だということの典型を見た気がする。

文:佳香(かこ)

【第2話(4月13日[水]放送)あらすじ】

持ち前の愛嬌と笑顔で男性社員に人気の白川さん(井桁弘恵)は女性社員から「ブリっ子」と妬まれてしまう。先輩社員の梅本カンナ(秋元才加)もチヤホヤされる白川さんが面白くない一人。そんな中、同期の松井友之(庄野崎謙)に白川さんへの恋心を相談された梅本さん。実は、梅本さんは松井が好きで・・・。素直になれない梅本さんは、つい白川さんに八つ当たりで嫌味を言ってしまう。しかし、白川さんの予想外の行動が梅本さんの心を動かしていく―。

◆番組情報
ドラマParavi『メンタル強め美女白川さん』
毎週水曜深夜0:30からテレビ東京ほかで放送。
動画配信サービス「Paravi」で前週水曜日21:00より毎話独占先行配信中