成合淳(吉川晃司)よ、あなたはどこへ消えたの・・・?

内通者は誰か。その正体が最大の焦点となった『DCU』最終回。この国を守るため、水を通じて戦い続けた人々のドラマがついに幕を閉じました。

結論:ドジっ子のやることはやっぱり信用なりません

最終回にして突然妙に出番が増えたなと思ったら、コケて鍵を落とすというドジっ子っぷりまで披露した佐久間雄二(佃典彦)。な~んか怪しいなと思っていたら、やっぱりこの人が裏切り者でした。

息子の起こした不祥事をもみ消すのと引き換えに、ブラックバタフライの内通者となった佐久間。その裏切りは、15年前、瀬能陽一(西尾浩行)が亡くなった爆発事故の頃からすでに始まっていた。

まあポジション的に佐久間が裏切り者というのは妥当ではある。ただちょっと残念だったのが、信頼していた人が裏切り者だったという衝撃を与えるには、これまでの佐久間の出番が少なすぎた。「俺たちに海上保安官の誇りを教えてくれたのは、あんただったよな」(1:21:52)と新名正義(阿部寛)が悔しがるほど偉大な上司であり師だったという印象がないので、もう少し新名と佐久間の絆を表すエピソードが序盤からあっても良かったかなという物足りなさはありました。

その一方、成合との過去はじっくり丁寧に描いてきていたので、佐久間との最終対決で新名と成合のバディが復活するくだりは爽快感抜群。阿部寛、吉川晃司の渋さと存在感も相まって、2人が並び立つ姿は迫力すら感じました。

あのプールのシーンも、最初に成合が新名の手を掴んだ瞬間、成合が新名を助けると思いきや手錠をかけるという裏切りの構図で視聴者をハラハラさせ、そこからもう一度、今度は新名が成合を助けるためにその手を掴む画を挟むことで、2人の絆の復活を表した。これは、裏切りと信頼が交差する『DCU』らしい演出だったと思います。

海上保安庁のセキュリティをくぐり抜け、何度も施設内に侵入する成合の神出鬼没っぷりは、もはや愛すべきツッコミポイント。さすがにあのプールに完全装備で現れたときは「どうやって入ってきたん?」と思いました。監視カメラ、もうちょっと仕事して~。これはもう海上保安庁のセキュリティがザルすぎるか、成合はワープを使えるかのどっちかだと思います。あと、めちゃくちゃわかりやすく100kgと書かれた重しにも笑った。漫画やん。

エンタメの裏に秘められた『DCU』のメッセージ

佐久間逮捕のどさくさにまぎれて姿を消した成合。しかも、新名に返されたと思っていた鍵は偽物だった。つまり鍵もフロッピーも成合の手に渡ったということで、この駆け引きは成合の勝ち。あの潜水勝負と同じで、成合は新名の上を行く男なのです。でも、「17勝15敗。俺の方がまだ2勝先行している」と言ったように、新名も成合に負けてはいない。2人はこうやっていつまでも相手の背中を追い続ける運命なのかもしれません。

結局、成合がなぜブラックバタフライに転じたのか。そもそも本当に悪人なのかは最後までわからないまま。これはエピソードが未回収というよりは、残りの謎は観た人それぞれに委ねるということなのでしょう。

なので勝手に推測すると、やっぱり成合は真の悪人ではない気がする。黒江真子(市川実日子)に残した「俺を信じろ。水は嘘をつかない」という言葉は、彼が何らかの意図をもってブラックバタフライとして行動しているメッセージ。成合隆子(中村アン)の死に対して、「俺が殺したんだ」と言ったのも、妹を巻き込んでしまった兄の悔恨の言葉に聞こえました。

でもそれも瀬能陽生(横浜流星)の言う通り嘘かもしれなくて。結局のところ何を信じるかは自分次第というのが、『DCU』最大のメッセージ。現代では、自分の力でいくらでも情報を集めることができる。どの情報にアクセスしたかで、世界に対する視点が変わる。でもここで覚えておかなければいけないことは、人は見たいものしか見ないし、信じたいものしか信じないということ。

どれだけフラットに情報にリーチしているつもりでも、その目は先入観というフィルターで曇り、主観というバイアスがかかる。だからある人は根拠のない陰謀説に踊らされるし、一方でそれを陰謀説とせせら笑う人ももしかしたら別の誰かによって意思をコントロールされているのかもしれない。自由に見える現代には、そうした危うさが常に孕んでいます。

多様な主義と思想がぶつかり合い、海の向こうでは火の手があがる今の世の中で、誰を信じるか、何を信じるかを『DCU』は描いていた。エンタメ性の高い作品ではありましたが、スリリングな展開の中で実に今日的なメッセージを僕は受け取りました。

それを踏まえて改めて問うてみましょう。あなたは、成合を信じますか。その答えに、その人その人の人間に対する姿勢が表れる気がします。

とりあえず言えることは、吉川晃司のウイリーはカッコいい。それだけは信じて良さそうです。

続編があるなら、"#寛と流星"のバディがもっと見たい!

新名と成合による因縁のドラマの陰で、もうひとつ描かれていたのが新名と瀬能のドラマです。成合の罠により、セーフルームに閉じ込められた瀬能。時限爆弾のタイムリミットは15分。鉄壁のセキュリティの前では脱出の術もなく、一時は潰えかけた瀬能の自分を信じる気持ちにもう一度火をつけてくれたのは、新名でした。

何度も疑った。何度も反発した。それでも、いつもどんなときも新名は瀬能を信じていた。あれだけ冷たく突き放せたのも、根底では瀬能を信じているからこそです。そんな新名が投げかけた「生きろ」という熱い叱咤。瀬能は、15年前の爆発事故に続いて、今回もまた新名によって命を救われた。新名にもらった命を熱く使い切ることが、瀬能の運命なのでしょう。あの悟り切った物悲しい笑みから、もう一度奮い立たせるように顔をしかめて立ち上がるまでは、横浜流星の大きな見せ場。

さらに、拳銃を構えた佐久間へのキックはもちろん、今回いちばんキュンとしたのは新名と成合の見えない絆に対する「真のバディってやつですか。なーんか嫉妬するなあ」という台詞。なんだよ、可愛いじゃねえか。独占欲強めのワンコとか、みんな好きなやつ。そのあとの「もちろんです、隊長」の笑顔なんて、後ろで尻尾を振ってるのが見えてきそう。物語の展開上、2人がタッグを組んで行動しているシーンがそれほど多くなかったので、続編があるならもっと新名&瀬能のコンビネーションが見たいです。

事実上のヒロインだった市川実日子も魅力的でした。本人のさっぱりとした雰囲気もあって、2人の男性の間で揺れていても、湿っぽくならないところがよかった。サバサバしているのとはまた違う。無駄に力が入っていないんだけど、ちゃんと自分の足で立っている感じが、市川実日子の個性。それが真子という役に合っていた。どちらかと言うとバイプレイヤー的な印象の強い市川実日子ですが、ヒロインとしてもじゅうぶん輝くところを見せてくれました。

座組みを手堅く引き締めてくれる高橋光臣、どんな役でも印象を残す趣里も、それぞれ好演。何より阿部寛の座長力を改めて実感させてくれた『DCU』。真ん中に太い柱として阿部寛が立ってくれるだけで作品のグレードそのものが上がる、余人をもって代えがたい貫禄がありました。いろいろツッコミつつも、なんだかんだ最後まで楽しめたのは、やっぱり阿部寛が主演だからというのが大きかった気がします。

またいつか日曜劇場で阿部ちゃんが見たい。60歳になっても70歳になっても、阿部ちゃんには日本のドラマを盛り上げていただきたいです。

(文:横川良明/イラスト:たけだあや)

◆番組情報
日曜劇場『DCU』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。