成合淳(吉川晃司)、普通に悪い人だったっぽい・・・!
あの財前部長 in 『下町ロケット』のせいでしょうか。吉川晃司は・・・吉川晃司は絶対にただの悪い人じゃない!と第1話から信じて見守り続けて3ヶ月。どうやら完全にクロのようです。はい、僕の見る目は節穴。
怒濤のセミファイナルを迎えた『DCU』。第8話は、ついに閉ざされていた扉が開いた回でした。
吉川晃司がシンバルキックで黒幕を蹴散らすところが見たいです
選ばれたのは、新名正義(阿部寛)でした(※綾鷹っぽく)。
第1話から、嘘と裏切りが交差する中、"信じるべき人"は誰かを問い続けてきた『DCU』。このシビアな命題に、最も正面から向き合ってきたのが瀬能陽生(横浜流星)でした。
敬愛する父は、テロリストなのか。 信頼する新名は、自分を騙していたのか。 突如目の前に現れた成合は、敵か味方か。
よくよく考えれば、このお話、やたらと瀬能にはハードモードなのよ。お父さんは早くに亡くしてるし、姉のように慕っていた成合隆子(中村アン)の死体の第一発見者になるし、ひょこっと出てきた学生時代の先輩はゴリゴリの犯罪者だし。これがリアルなら、メンブレが激しすぎて「1回仕事休みな?」と声をかけるレベル。フィンランドあたりに行ってオーロラでも見てきな?って勧めたい。
しかし、休むことなくパルクールしたりハードル走したり、もはや『DCU』をやってるのか『最強スポーツ男子頂上決戦』をやってるのかわからないレベルで身体能力を披露しまくってきた瀬能。新名から父親の鍵を返され、ついにその秘密に辿り着きました。
この鍵によって隠されていたのは、父・陽一(西尾浩行)が開発した遠隔操作システムの設計図。そして、それは瀬能の実家――まだ子どもだった瀬能の宝物をつめた缶ケースの中に眠っていたのでした。灯台下暗し。幸せの青い鳥は結局自分の家にいたっていうやつです。てか、そんなに狙ってるデータなら、自宅とか真っ先に調べられそうなものだけど、ブラックバタフライ仕事してんの?
設計図のデータが入ったフロッピーを瀬能は誰に渡すのか。一度は成合の手に渡ったかと思いきや、それはフェイク。瀬能が最後に信じたのは、新名の方だった・・・!長らく決裂していた師弟バディもこれで完全復活。最終回は、新名と瀬能の2人で成合を追う展開となりそうです。
耳たぶの裏に例の模様が入っていることから考えて、成合がブラックバタフライの一員であることは確定。スパイとして潜入捜査している期待をしていたのですが、ここまで来るとその望みもどうやら薄そう。むしろこうなったら吉川晃司には壮烈な悪の華として散っていただきたいのですが、さて最終回はどうなることやら。
気になることと言えば、戸塚明男(田辺誠一)を使って新名の命を狙っていたのが、成合ではなく、前回登場した笠原英伍(岡田浩暉)だったということ。そもそも遠隔開発システムのデータを狙っていたのも東都重工の社長だというのだから、ブラックバタフライと東都重工の間に黒い関係があったというわけか。
ただ、ラストで笠原が成合とコンタクトをとっていたが、その様子を見ると2人は初対面の模様。もし成合が完全にブラックバタフライ側の人間だとしたら、この時点で笠原と何の面識もないのも不自然な気がするのだけど、ギリギリ潜入捜査の可能性ある?吉川晃司がシンバルキックで黒幕を蹴散らすところが見たいんですが、どうにかなりませんでしょうか・・・?
簡単に割り切れない複雑な機微こそが、横浜流星の真骨頂
そんな成合の正体に関心を寄せつつ、今回最大の見せ場となったのは、新名と瀬能が沿岸で対峙する場面。新名によって記憶を上書きされたのではないかと成合にささやかれた瀬能は、陽一の死後、本当の息子のように自分を育ててくれた理由を新名に問いただす。
「いい機会だ。鍵も返したことだし、もうこれ以上お互い干渉するのはやめよう」
それは、育ての親だと思っていた新名からの決別宣言。瀬能もせせら笑うようにして「そうっすね」と答えたけれど、そうやって冷めたように新名を見る目から、瀬能が傷ついていることが伝わってくる。たとえどんなに反発していても、新名への感謝と憧れが捨てきれなかった瀬能だから、本心では新名を信じたかった。いや、俺を信じろと言ってほしかった。
そんな男の意地と「息子」としての寂しさが入り混じった心情を、横浜流星がここでしっかり見せてくれた。だからこそ、クライマックスの「海上保安官になるという夢を与えてくれたのは隊長です」という台詞が、「今まで疑って、さんざんなこと言って、本当すみませんでした」という苦しげな目が突き刺さる。あの最後の笑顔が胸に沁みる。
横浜流星は、簡単に割り切れない、小数点以下の細やかな機微を表すのが得意な俳優です。ただ、このエンタメ色の強い『DCU』では「4÷2=2」というストレートな感情の発露を求められることが多かった。それに馴染むのにやや苦戦したところもあったのではと思いながら見てきましたが、このシーンは持ち前の繊細さが活きた横浜流星の真骨頂。口に出していることが心のすべてではない。行間をしっかりと拾った演技で、瀬能の葛藤を見事に表現していたと思います。
最終回では、瀬能に最大のピンチが訪れるようで、瀬能ったらどこまでもハードモード。だけどきっと最後には新名と瀬能が笑って新しい事件に挑む姿が見られると信じています!
一方、新名は新名で今回も阿部ちゃんのくすっと笑える演技が楽しめました。佐久間雄二(佃典彦)に提案されて「新婚旅行・・・?」と切り返すあの抜け感は「阿部ちゃん節」とも言うべき独特の味わい。一方、戸塚に襲われた時の「水中顔面演技」は目の死に方がリアルすぎてもはやホラー。戸塚を出し抜くダークな表情含めて、相変わらず「食えない男」を演じさせると抜群に光るところを見せつけました。
ちなみに、戸塚役の田辺誠一はご存じ元メンズノンノモデル。阿部ちゃんといい、6話に登場した加藤雅也といい、メンズノンノからお金でももらってるのかというこのキャスティング。いつ谷原章介かマーク・パンサーあたりが顔を出してくるかとニヤニヤしてしまいました。
こうなったら、最終回、ナラハラとかいう東都重工の社長役は大沢たかおでいかがでしょうか?科捜研とタッグを組んだら風間トオルが出てくるという展開もアリよ!
(文:横川良明/イラスト:たけだあや)
【最終回スペシャル(3月20日[日]放送)あらすじ】
来たるG20東京サミットを前に、横浜海上保安部に警備準備本部が設置されることとなった。新名(阿部寛)は人の出入りが多くなるこの機に乗じて瀬能(横浜流星)にニセモノのフロッピーディスクをつかまされた成合(吉川晃司)が本物を奪い返しに来ると直感。そこで新名は佐久間(佃典彦)と相談の上で内部の者でも簡単に出入りできない場所にそれらを保管する。
その一方で、新名は公安の清水(山崎育三郎)から海保内部に内通者がいることを告げられる。その矢先、佐久間から笠原(岡田浩暉)と密に連絡を取り合っている者がいると聞かされた新名は、その名前に驚きを隠せない。
そんな中、海保内に緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響いた。基地内で爆発物が発見されたというのだ。瀬能の父が残した設計図を巡る攻防戦が始まる。成合はどのような手段で新名に挑んでくるのか。そして裏切り者は誰なのか。
◆番組情報
日曜劇場『DCU』 毎週日曜日21:00からTBS系で放送中。 地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
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