村田椰融による同名コミックを原作に据え、堤真一が主演を務めるホームドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)の第8話が3月11日に放送された。10年前に事故死した妻・新島貴恵(石田ゆり子)の生まれ変わりと名乗る小学4年生・万理華(毎田暖乃)が、主人公・圭介(堤)とその娘・麻衣(蒔田彩珠)のもとに現れる物語が展開される本作。新島家と万理華の母・千嘉(吉田羊)の4人が共に新年を迎えた瞬間、万理華が突然倒れ、目を覚ましたときには貴恵の記憶が消えていた前回。再び目を覚ますと、貴恵に戻っていたが、不安は拭えない。

そうした異変を聞いた貴恵の弟・友利(神木隆之介)は、生まれ変わり小説『君と再び』を書いた中学生・出雲(當真あみ)なら何かわかるかもしれないと言い、守屋(森田望智)から最終巻の発売記念イベントが週末に行われると聞いた圭介は、貴恵、麻衣、友利と共にサイン会に行く。

しかし、サイン会後に出雲が語ったのは、衝撃の事実だった、出雲の中には、吉原康司(水川かたまり)という男がいた。高校の教師で、昔から小説家になるのが夢だったが、5年前に事故死したと言う。さらに自分が「生まれ変わりではない」と言う吉原は、万理華に問いかける。

「思い出せませんか? その体に入った日のことを」

この世に未練を残して彷徨っていた吉原は、バスケの選手で、ケガで続けられなくなったために人生に絶望した出雲に声を掛けた瞬間、出雲に憑依してしまったと話す。出雲の「消えたい」と、吉原の「生きたい」がおそらくリンクし、体を借りることができたのだと推測し、自身に言い聞かせるように、こんな残酷な現実を伝えるのだ。

「借りたものはいつか返さなきゃいけない。本当の持ち主に」

生まれ変わりではなく、体に一時的に憑依していただけとは。貴恵が罪の意識を持ち始めるのは当然だろう。そんな中、圭介は僧侶でもある寺カフェのマスター(柳家喬太郎)から、貴恵が万理華の体を「間借り」しているだけで、このままでは帰ってこられないと言われる。

「あなたと奥さんとはとっくに今世の縁を終えてるのよ」「なんでもかんでもこの世でどうにかしようっていうのは欲張りすぎじゃないかしら」という言葉は厳しく聞こえるが、もっともなことだ。そしてマスターは、なぜ貴恵が帰ってきたのか、その意味を考えろと言う。

一方、貴恵は、偶然会った守屋から、圭介に今も亡くなった妻を愛していて、生涯愛し続けたいという理由でフラれたことを聞き出す。気持ちは変わらないかもしれないが、待っていたいという気持ちを聞いた万理華の「それって・・・すごく好きってことだよね」の表情には決心めいたものが見えた。守屋よりもお姉さんに見えるのだから、改めてすごい。

そんな矢先、出雲の中の吉原は、友利に「この子をよろしく」と言って消えてしまう。小説家になりたいと願い、苦しんでいた吉原は、その夢を叶えて改めて自分が書くことそのものが好きなのだと気づき、生きていた日々を肯定できたのだった。

つまり、未練の消滅と生前の肯定が、「間借り」を終えるキーワードなのだろうか。全てを思い出した貴恵は新島家と友利、千嘉に集まってもらい、自分が万理華の中に入ったいきさつを話す。

貴恵は亡くなった後もずっと新島家にいて、死んだような状態の圭介と麻衣を見守っていた。そんな二人にもう一度会って、しっかりしなさいよ、元気出しなさいよと伝えたいと思っているとき、夜中にパジャマ姿で公園に来て、泣きながら消えたいと願う万理華の気持とリンクし、万理華に入ってしまったというのだ。

貴恵の「返さなきゃいけない」という言葉を受け入れられない圭介、麻衣、友利。本来、他者の体を、人生をのっとってしまっているわけだから、このままで良いはずはない。しかも、3人は利己的でなく、優しい人間だ。にもかかわらず、他者を犠牲にしていることを知った上でなお、失いたくないと考えるのが、割り切れない愛情、人間の業なのだろう。

貴恵はわざと突き放すように「ガッカリだわ」「こんなことになるなら、帰って来るんじゃなかった」と言い、悲しげに語りかける。

「私がいなくても自分の力でしっかり生きるのよ。信じてるから」

そう言い残し、意識を失った後に目を覚ました万理華には、もう貴恵の記憶はなかった。本来あるべき形に戻っただけのはずなのに、失う悲しみをすでに知っている圭介たちの悲しみはさらに深い。そんな思いが救われる方法は、はたしてあるのだろうか・・・。

(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)

【第9話(3月18日[金]放送)あらすじ】

貴恵(石田ゆり子)が消えた。
体に憑依していた貴恵が消えたことで、万理華(毎田暖乃)は自分の人格を取り戻し、母・千嘉(吉田羊)との新たな生活が始まる。

一方、出社した圭介(堤真一)は心ここにあらずの状態で、そんな圭介を守屋(森田望智)が心配する。麻衣(蒔田彩珠)は自分の殻にこもる中で、蓮司(杉野遥亮)も心配して訪ねて来る。
友利(神木隆之介)もまた、春から高校生になるという出雲(當真あみ)を応援しながら、自分は心にぽっかりと穴があいたようだった。

新島家の時間は再び止まってしまった・・・。

◆番組情報
『妻、小学生になる。』
毎週金曜日22:00からTBS系で放送中。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。
また、Paraviオリジナルストーリー「ヤコ、ショウがクセになる。」も独占配信中。