成合淳(吉川晃司)よ、あなたは本当にテロリストなの...?

ついに最終章へ突入した日曜劇場『DCU』。しかし、誰が信じるべき人なのかはいよいよわからなくなってきた――。

成合はテロリストなのか?それとも...?

前回、疑惑の視線が向けられた根岸那由(明日海りお)。個人的には、彼女も成合も実はシロではないかと予想してみたけど、少なくとも那由に関しては大外れ。那由はダイヤの密輸を手引きし、さらに国際テロ組織・ブラックバタフライともつながっていた。

だが、根っからの悪人というわけではなく、病気の娘の手術費を稼ぐために闇行為に手を染めたというのが真相。前回はミステリアスな印象だった那由だが、今回は母親の顔が前面に打ち出され、娘を守るために奔走し狼狽する人間らしい姿がより強く描かれていた。

一方、ますます正体がわからなくなったのが、成合だ。彼が暗殺をも厭わぬ闇組織に身を置いていることは間違いなさそう。ただ、それが敵を欺くためのスパイ行為なのか、本当にテロ組織に魂を売ってしまったのかは謎のまま。むしろ、今回、八景島シーパラダイスをターゲットとし、罪なき一般人を巻き込もうとした時点で、純粋な正義とはもう呼べなくなってしまった。やっぱり成合はテロリストなのだろうか。

仮に成合がブタックバタフライ側の人間だったとして、いつから新名正義(阿部寛)たちを欺いていたのかも気になる。今回の回想で、黒江真子(市川実日子)をめぐって新名と成合が素潜り対決をするという80年代ノリなシーンが描かれていたけれど、そのちょっとしたこっ恥ずかしさも含めて、2人の様子はなつかしい青春時代の思い出そのもの。新名と成合なら殴り合いの喧嘩をして、最後に土手をゴロゴロ転げ落ちたあと、大の字になって「お前、つええな」「お前もな」とか言ってそう。当時から成合が新名たちを裏切っていたとしたら、だいぶ人間不信になりそうです。

那由のようにブラックバタフライ側に加担せざるを得ない理由が、成合にもあったのか。そういえば、すっかり成合隆子(中村アン)の存在が忘れ去られているけど、成合は死んだ妹についてどう思っていたのか。生い立ちや家庭環境含め、謎なところが多いので、成合の行動動機についてはまったく読めない。

ネズミの絵が暗示する、成合の行動の真意とは

また、今回、瀬能の父・陽一(西尾浩行)が何を開発していたのかも明らかになった。陽一が研究していたのは、遠隔操作システム。その技術を、ブラックバタフライに売り渡していたというのが陽一にかけられた疑いだった。

成合が那由に言った「お前は我々の計画にとって重要な情報源なんだ」という台詞も、この遠隔操作システムに関することだろう。那由は陽一の設計図を見たことがあり、そこにブラックバタフライが求めている情報があった。それゆえにブラックバタフライに狙われた。

新名は成合の尻尾を掴むべく那由に司法取引を持ちかけたが、木見一郎(加藤雅也)が獄中死を遂げたことから考えて、那由の身も安全とは言いがたい。新名が次に接触する前に那由もまた口封じで殺される可能性は十分あるだろう。

ただ、ここで疑問なのが、もし木見が自殺ではなく誰かに殺されたとして手にかけたのは誰かということだ。留置所にいる木見に手を下せる人間は限られている。やはり警察組織内にブラックバタフライの一員がいると考えるのが自然だ。

となると、浮上するのは3人。部長の佐久間雄二(佃典彦)、次長の早川守(春風亭昇太)、そして公安一課の清水健治(山崎育三郎)だ。育三郎がネームバリューに反して出番が少なすぎるのが気になるんだけど何してるの?おしゃれクリップ?

育三郎が実は裏切り者で・・・という展開だったら最終回に向けて一気に盛り上がるのだけど、はたして『下町ロケット』に続く裏切り役となるのか、期待したいところ。

ただ、成合の口ぶりから見るに、木見殺害に成合は関わっていないようにも思える。そもそも前回陽生の自宅に残した切り抜き記事に描かれていたのはネズミの絵。今回、那由に送ったメッセージに添付されていた絵もネズミだった。なぜバタフライ=蝶ではなく、ネズミなのか。もしかしたら成合はブラックバタフライではなく、ネズミを冠する別の組織の一員なのかもしれない。だとしたら、物語の構図も一気に変わってくるのだけど、あのネズミの絵が示す意味が何なのか。成合の行動を読み解くヒントは、きっとあのネズミの絵にある。

いくつになってもちゃん付けで呼びたくなる男性は阿部ちゃんとトシちゃんです

正直、3・4話の隆子の死に関するエピソードはちょっと疑問符が尽きなかったのだけど、以降の5・6・7話に関してはストーリーも引き締まっていて、かなり面白くなってきた。今回で言えば、DCUメンバーが八景島シーバラダイスに乗り込んでからの捜索シーンは緊迫感があったし、残り20秒あまりというタイムリミットの中、爆弾の起動を止めようと新名が走るシーンは臨場感も抜群だった。

瀬能陽生を演じる横浜流星の走りのフォームの美しさは、それだけで画面に迫力が出る。回し蹴り、パルクールの次はハードル走と、身体能力を示すシーンもばっちり盛り込まれ、ファンの期待を裏切らない。

また、若い横浜流星の奮闘もさることながら、57歳の阿部寛が体を張った演技を見せているのも、日曜劇場のメインターゲットであろうM2層(35歳から49歳までの男性)には胸滾るところ。再来年には還暦を迎える(!)とは思えない肉体美に、精力的なアクション。モデル時代から知る人はもちろん、低迷期を乗り越え、この20年、主演俳優として第一線を走り続ける阿部ちゃんの背中に親しみを感じていた人たちにとっては、変わらぬ阿部ちゃんの魅力に勇気づけられるものがある。こんなにいくつになってもちゃん付けで呼びたくなる男性は阿部ちゃんとトシちゃんくらいです。

とりあえずラストでものすごい真面目な顔をして「温泉施設? 成合が...?」と言う阿部ちゃんに思わず笑ってしまいました。八景島シーパラダイスの次はナガシマスパーランドか。もはや日本の観光施設をめぐるドラマみたいになってきた。ぜひ阿部ちゃんたちには温泉で日頃の疲れを癒すとともに、ハイブリッドコースター「白鯨」に乗って、55mの高さからドロップする恐怖を満喫していただきたいです!

(文:横川良明/イラスト:たけだあや)

【第8話(3月13日[日]放送)あらすじ】

自分の父・陽一(西尾浩行)がテロリストの一味かもしれないと知り動揺する瀬能(横浜流星)の傍ら、新名(阿部寛)たちは成合(吉川晃司)がある総合レジャー施設に潜伏していることを突き止めた。

新名は真子(市川実日子)との新婚旅行を装い、捜査のために先に現地入りしていた西野(高橋光臣)と合流。そしてホテルを営んでいる支配人の戸塚明男(田辺誠一)が、かつて東都重工で陽一の助手をしていたことを知る。新名が戸塚に研究データの横流しについて尋ねると、戸塚は明らかに動揺した様子を見せる。その直後、西野が何者かに襲われる事件が発生し・・・。

同じ頃、瀬能は新名が持っていた陽一の鍵が何かを調べるため実家に帰省していた。そして一枚の写真からある店に目星をつける。そして調べていくうちに、瀬能は徐々に過去の記憶を思い出していく。

◆番組情報
日曜劇場『DCU』 毎週日曜日21:00からTBS系で放送中。 地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。